第5話 冒険者は土の下

 購入した防具を装備して、剣を腰に下げる。


「今からレクイエムに向かうわ」

「了解」


 アリスさんは村を出て、草原に向かう。


「手を握って」


 俺はそっと彼女の手を握り、前を向いた。


「転移、レクイエム」


 渦巻いた雲が俺等を取り囲む。砂のように飛んで行く自分の体を俺はしっかりと見た。

 草が俺の頬を撫でる感覚で俺は目覚めた。


「起きたのね」

「はい。でも、ここは?」

「初めてだったわね。ようこそ、レクイエム天深界0層『目覚めの草原』へ」


 レクイエムとはいってもただの草原だ。実感は余りわかなかった。


「本当にここが?」

「ええ。さ、行くわよ。今から深界1層『誘いの谷』へ」


 下から風が強く吹き、ここが浮いていることに気が付く。アリスさんは草原の浮島の端に来て、俺に布を渡した。


「それ使って」


 そういって、彼女は布を広げて飛び降りる。俺も続いて同様にして降りる。風が仰ぎ、バランス感覚を失わせる。


「こっちよ」


 彼女は布をうまく使って真っ暗な世界へと降りていく。


「魔力を感じて。魔力の流れを心で見なさい」


 俺は目を瞑り、静かに風を感じる。急激に冷え込むような寒さが背筋を走る。はっと目を開けると、世界が明るく見えた。黄色い光が漂い、風の方向へと向かっていく。


「おーい!」


 真下には浮島があり、丘になっていた。そこには手を振っているアリスさんが居た。着陸したようだ。彼女の体にも明るい光が流れている。きっとあれが魔力何だろう。

 俺は無事に着地する。

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