第20話 モモちゃんは〇〇
「それで、今日はどうしましょうか。この村や国、魔法については一通り理解して頂けたと思うのですが……」
囲炉裏を挟んだ向こう側で、モモがシチューに浸したパンを口に頬張りながら聞く。
何それ。そういう食べ方は早めに教えといてよね。
「まだ気になることは幾つかあるけど……、今日はちょっと休もうかな。あんまり疲れも抜けてないし。モモは何か予定でもあるの?」
「大した予定ではないですけど、少し
「ケマンヌが言っていた、国衛騎士団と魔法協会のパワーバランスだ。彼によれば、数の暴力ってやつで魔法協会は騎士団に手を出せないんでしょ? 魔法使いである僕が関わると分かっているのに、特捜隊に所属するアリアがこの村を助けるのを手伝ってくれないのも、理由はそこにあると思う」
一足先に朝食を平らげてしまった七海が、トレイを避けたテーブルの上で腕を組む。
「まぁ……、そうですね。国衛騎士団はその名の通り、政府によって作られた、国を衛るための組織です。一方で魔法協会は、元々は魔法使いの有志で構成された団体だったのです。今でこそあのような立派な建物を持ち、国からも税金の一部をつぎ込まれて公に活動していますが、それでも魔法使いの数や取り扱う事象の少なさ、また国民に対する税のリターンを考えると騎士団には引けをとってします。そういった訳で、魔法協会、魔法使いには良いイメージを持たない方もいるのです。ケマンヌさんは少し違うようですが……」
「そうだったのか……。でも何だ、モモがそんなに知ってるなら教えてくれれば良かったのに。わざわざアイゼンに行かなくても済んだじゃないか」
「そ、そんなことないですよ? 私は魔法そのものに関する知識は少ないですから、アリアさんに聞いて正解だったと思います。それと……、二人でお出掛けも出来ましたし」
ようやく食べ終えたモモがナプキンで口元を拭っている。そのせいで後半はもごもごと口ごもり、七海は聞き取れなかった。
「拭きながら喋るなって。何言ってるか分からないだろ」
「別に何言ってるか分からなくてもいいんですっ。何でそんなところ
「
鈍いと怒られるし、敏感でも怒られる。本当に女の子は分からない。
「はいはいすごいすごい。まぁとにかく、この村には魔法を使える方は……多分いませんから、魔法で騎士団に歯向かおうと企てることも、アリアさんに助けを求めようという発想もなかったのです。アイゼンに行った価値はあったと思いますよ」
僕にだけ優しかったヒロインが、チートな早さであしらいスキルを成長させている件について。
タイトル変更する勢いだよ、もう。
食後の一杯に、二人はそれぞれのカップに先程七海が淹れたコーヒーを注ぐ。本当に砂糖を切らしていたらしく、七海は勿論、モモもブラックのままで自分の手元に置く。
互いに揃って一口だけ喉を通すと、改まった様子で七海が口を開いた。
「それで……、もう一つ気になる事が出来たのですが……」
「出来
ごくり、とモモが固唾を呑む。
――そうだ。今さっき出来た気懸かりだ。
気になり過ぎて食欲が収まらない。シチューもうないのかな……。
こればっかりは、聞かないと気がお菓子になっちゃいそうだッ。
「その……えっと……、“
働いているモモを見たことがない割には、こんな一軒家に住んでいたり、昨日の酒場のお代も出してくれたりとか、貧乏なこの村でも意外と余裕のある生活をしているような……。
だとすれば、少ない時間でガッポリ稼いでいるということになる。そうなれば、信じたくはないが、やっぱりパ〇活的なのをやっているとしか考えられない。
まだこんなに若い、ピッチピチピーチのモモちゃんに、僕だけのモモちゃんにそんなふしだらなことはさせられない。ここは一発、ガツンと言ってやらねばならんのダ!
「ああ、そのことですか。んー、カラダでって言えば、まぁそうですかね」
「あああああああああああああああああ!!!」
モモの答えを聞いた七海が、断末魔を上げて椅子からガタンガタンと転げ落ちる。
何も知らない彼女は苦いコーヒーをちびちび飲みながら、呆然とその様を眺めていた。
――終わった。
初々しく見えていた可憐な桃の花も、既に誰かに手を付けられてしまっていたなんて……。
処女厨の皆さんに謝れッ! こんな作品を読んでくださっている数少ない読者様の中でも、更にマニアックな趣味をお持ちの方々を裏切ったことを今すぐ謝れッ!! ついでに何故か涙が止まらない僕にも死ぬ気で謝れッ!!!
モモに背中を向けて涙で床を濡らす七海に、彼女は椅子の上から問いかける。
「無理にとは言いませんが、そんなに気になるのであれば私が働くところに一緒に行きませんか?」
「え……あ……、でもそれって……」
モモが働いてるのを見るって、つまり“行為”を見るってことだろ……? しかも知らない人との。
もしかして痴女なの?
こんなふわっとしたお嬢様風の身なりして、実は他人に見られた方が興奮するタイプの痴女なの?
七海は混乱した。
彼女が見せてきた笑顔も、悲しい顔も、怒った顔も、全てが何かを裏に抱えたものなのではないかと。
そんな彼を気にする素振りも見せず、モモは更に抉る。
「私は構いませんよ。何なら……ハルカさんも、
あーあ、壊れちゃった。
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