第32話 夜道

 美穂さんが帰ってから30分くらい経っただろうか? 未だにベンチから動けずにいた。


「あー。終電無くなっちゃった。」


 プルルッ


「大和悪い。終電逃しちゃったから車で迎えきてくれね?」


「おう! すぐ行くわ。どうした?元気ないな。」


「まぁ色々と。」


「そっか!ちょっと待ってろよ~」


 大和は詮索してこない。それは長い付き合いだから、大体相手が弱ってるとかは声を聞くとわかるから。


 公園の前に1台の車が止まり、こちらにてを降ってきている。俺は助手席に乗って、ドアを閉めた。


 無言の車内。流れているのは、外の景色とラジオだけ。


「大和、上司にキスされちゃった。俺が元カレに似てるんだと。その人泣いててさ。」


「そっか。それで、奈緒ちゃんにも悪い気持ちもあり、その上司にも可哀想だからって感じ?」


「流石親友わかってるじゃん。」


「お前の優しさはわかるけど、中途半端は辞めろよ。基本モテない男が半端やったら最悪だろ。」


「わかってるけどさ。」


 その話をしながら家に着いた。優しいだけが取り柄だった。だからこそ今その優しさで人を傷つける可能性があることを知ってしまった。

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