第28話 テキーラ

 結局、明日朝早いのに飲みに来てしまった。気づくと毎週1回は飲みに来ていて、もうバーの店員に名前まで覚えられてる。


「あのー。自分が悪かったので許してください。」


 そう言う前にはテキーラのショットが10杯並べられていた。


「上司がご馳走してるのに飲めないの?」


「いえ。。。 頂きます。。。」


 端から1杯ずつ一気に流し込む。これは間を空けちゃうと辛くなるのを今までの経験で知っている。


(おっまた弥生がやってるぞー)

(弥生!、弥生!、弥生!)

(ホントに鬼だね~ 美穂ちゃん)


 もう名物に成りつつあるのだ。毎回俺が行きたくないと駄々こねているのが悪いのだが。


「はい~。良くできました。」


 そういってもう出来上がってる美穂さんが俺に抱きついてくる。


 俺も酒には強い方だが、流石にこれはきつい。酔いが回って、美穂さんの胸に顔を埋める。


「美穂しゃ~ん。。。」


「あー!もうこれがホントにたまらず可愛いのよ~~」


 1時間くらいたって正常運転に戻ってくる。


「あの~。美穂さんいつまで自分に抱きつているんすか?」


「えっ? あんたが自分から来たのよ?」


「それはすみません。 離れるので離してください。」


「ダメ。もう少しだけこのまま。」


「そんなに寂しいなら彼氏作ってください。」


 そういうと、美穂はため息をつきながら悲しそうな顔をする。


「それは無理、あんたにそっくりな元彼忘れられないから。」


「だからといって、自分をその代役に使うのはやめてくださーい」


 顔に冷たい感覚があった。上を見ると美穂さんが泣いていた。


「は~~。マスター。テキーラ5杯。」


 そういって、テーブルに並べて貰ったテキーラを手に取る。


「ちょっ! あんたまたそれやったらふにゃふにゃになっちゃうじゃない!」


「そうですねー。そしたらまた少しだけ美穂さんの所に倒れちゃいますね~。」


 そう言って、俺は端からテキーラを流し込む。


「あー。キツいっす~」


 当然、5杯くらいじゃ倒れたりしない。

 少し酔ったふりして、美穂さんの肩に頭を預ける。


「素直じゃないなー。気を使ってくれてありがとう。本当に優しいねあんたわ。カッコ良くもないのに彼女出来る理由わかるわ。」


 聞こえていたが寝たふりをして、美穂さんが、気がすむまでくっついていた。



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