第三章 翼を持つ者 パート6エドナサイド

「さってと・・・・・・」


 カチュアさんはいきなり、【フェンリム】の死骸を片手で持ち上げる。


「せえーの~」


 【フェンリム】の死骸を、森の奥の方へ、投げ飛ばした。


 森の方から、二人組もフードを被った人が出てきた。出てきたというよりかは、吹き飛ばされてきたといっていいかな?


「え? ヴァルダン兵?」

「なぜ? ここにセシル兵が?」

「どうやら我々はここまで飛ばされたようだ」

「てことは、貴様らの仕業か!!!」

「あなたたちが【フェンリル】を使って、セシル王国を襲わせたのか」

「まあ良い、これでもくらえ」


 フードの人の持っている、杖から黒い球を放った。

 カチュアは華麗に交わした。


『【無詠唱魔術】? 奴らは【勇能力】とかの持ち主なの?』


 あの杖をよく見ると似ている……。まるで動物の骨みたいなあの武器と。


「あの杖は……村を襲った奴が持っていた武器と似ている」

「え?」

「確か、あれを持っていた人が【魔物】になっちゃたんだよ」

「時間を稼いでくれ」

「わかった」


 一人のフードの人が後ろに下がり、杖を構えた。何か、【魔術】でも発動するのかな。


「嫌な予感がする」


 カチュアさんはフードの人に向かって走ったが。


「くらえ」


 黒い球はさっきから、叫びながら、剣を振り回している、ユミル様に向かっていった。


「ユミルさん!!! 危なーい!!!」


 ユミル様は剣で黒い球を受け止めた。


「はああああああああ」


 黒い球を弾き飛ばした。


「すごい、弾いた」


 黒い球はフードの人の方に向かっていった。そして、そのフードの人の真下に黒い球が落ち、爆発した。


「それ」


 ユミルさんは剣を斬り下ろすと、剣の刃から水のようなものが二つも飛ばした。


「水の刃?」


 ルナちゃんが言っていた水の刃? がフードの人たちが持っていた杖に当たり、刃物で切り裂いたような切り口が付いた。


「くそがー」

「いやーーーーー!!!、顔なしーーーー!!!」


 ユミル様が騒ぎ出しちゃった。でも、顔なしって、何のことかな?


『いや! あれ、フード被っているだけだから』


 そっか、フードを被っていて、顔が見えないから、顔なしか。納得。


「準備ができた」

「そっか、これで奴らも終わりだ」


 フードの人たちの後ろに【フェンリム】が現れた。


「【フェンリム】?」

『もしかして、あれが【転移術】とかいうやつ』

「見る限り、【転移術】は【無詠唱】では無理みたいですね」


 【フェンリム】を呼び出した方の、フードの人が杖をあたしたちの方へ指すと。


「さあ、【フェンリム】行くがいい」


 フードの人が【フェンリム】に指示を出だすにも、関わらずカチュアさんは。


「あなたたちは見ない方がいいわ〜」


 あたしたちに見せないよう、左腕を上げた。


「カチュアさん、こんな時に」


 こんな状況なのに、見ないでと言われても・・・・・・。

 普通だったら、逃げないとだけど、カチュアさんのこのセリフ・・・・・・まさか。


「ぎゃああああああ」


 【フェンリム】の方を見ると、【フェンリム】はフードの人たちを食べてしまった。


「いやーーーーー!!!」

『調教されて、いないじゃない』

「【魔物】の調教なんて普通はできません。まさか、呼び出した、【魔物】に食べられるなんて・・・・・・飼い犬に噛まれるってこのことですね」


 え? あれはどうみても・・・・・・。


「あれは狼だよ」


【魔物】だけど、どうみても、犬というよりかは狼だよね。


「いや、そういうことじゃ、なくって」


 あれ! 違うの!


「違うよ〜、エドナちゃん、あの人たちは食べられたんだよ〜」

「そっか!」

「違うますって!」

『呑気にコントしている場合じゃないよ。【フェンリム】がまた、ビーム放つよ』


 【フェンリム】方を向くと、【フェンリム】の口が光り出し。

 さっきも、見た光景のような・・・・・・。


「また、ビームが!」


 あっ、そうそう、そのビームって、いうのが【フェンリム】の口から・・・・・・あれ? もしかして、危険な状態?

 放たれたビームが、あたしたち目掛けてきた。


「カチュアさーん!」

 

 カチュアさんは逃げようとせず、あたしたちの前に立った。

 光はカチュアさんに当たろうとした。しかし、カチュアさんが縦に回転をしながら蹴りをして光にあたると、光は【フェンリム】の方に向かっていった。さっきのユミル様がフードの人の【魔術】を跳ね返したことと同じことが起きていた。

 あれ? カチュアさんの、靴の底をよく見ると刃物のような物が付いていた。さっきまで付いていなかったのに。


「跳ね返しちゃった」


 光は【フェンリム】に命中した。

 倒せたのかな・・・・・・。


「まだよ」


 カチュアがぼそっ言ったのが、聞こえた。

 あの凄い攻撃を受けたにも、関わらず、【フェンリム】がまだ、立っていた。全体を見渡すと焦げた部分が見える。


 水みたいなものが【フェンリム】に向ってきた。さっき、ユミル様の使っていたのと同じ、水の刃かな? さっきよりも、大きいけど。

 その水の刃は【フェンリム】の額に当たる。

 けど、その攻撃でも額に縦の切り傷をつけられていただけだった。


「あれ!? カチュアさんは?」


 カチュアさんは【フェンリム】に向かっていた。

 カチュアさんの剣は額の切り傷の付いた額に向けた。

 その攻撃で【フェンリム】の体は真二つに斬れた。


「終わったのかな?」


 カチュアさんがあたしたちの所にくると。

 ユミル様はカチュアさんの胸元に倒れしまった。


「あらあら~、怖くって疲れたのね~」


 そのまま、ユミル様が寝ちゃった。


『いや、叫びすぎて疲れたのでは?』



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