第三章 翼を持つ者 パート5ナギサイド

 【フェンリム】と呼ばれている【魔物】は普通の狼よりも十倍以上の大きさだ。

 そんで、【フェンリム】よりも小さい【魔物】、まあ、狼よりかはデカいけど……それが【ガルム】か。

 合わせて六匹も……。あ! 正確には七匹か。その一匹はカチュアが倒したけど……。


「くるよ~! よけって~!」


 カチュアはのんびりしているけど大声で叫ぶ。

 その【フェンリム】の口からなんか……光線みたいのが出てきた。

 なんとか、交わしたが、光線は地面に当たり、大きな穴が開いていた。


『あれって、ビーム!? なんでビームが出せるの?』

「それはそうですよ、【魔物】ですから、体内に【魔石】があります。【魔術】が使えるもは当然です」


 なんか……常識的なことみたいね。ルナが平常に答える。

 てか、あれ、【魔術】なの?


「ちなみに【ガルム】の方はさっきの光線は出しませんよ。動きは【フェンリム】よりも早いですけど。まあ、【フェンリム】は体が頑丈で普通の剣技では刃が通らないわ」

『あまり、うれしくない、情報ね』


 ふと、【フェンリム】の方をみると、また口が光り出した。


『また! ビームが』

「ちょっと、カチュアさん?」

 

 いつの間にか、カチュアはビームを放とうとしている【フェンリム】の真上にいた。

 カチュアは【フェンリム】の開いた口の上にかかとを落とす。その衝撃で【フェンリム】のビームを出そうとする口が塞がってしまう。

 すると、【フェンリム】の口が爆発した。

 【フェンリム】はそのまま倒れた。


「カチュアさん、後ろ」


 カチュアの後ろに【ガルム】がいた。カチュアはまだ、自分が投げつけた大剣を回収していない。

 【ガルム】はカチュアに襲い掛かるが……。

 【ガルム】の首が切断されている。カチュアの手元には、刃物らしきものはなかった。ただ、カチュアがしたことは【ガルム】に向かって、蹴りをいれただけだった。


「いややややややややややや!!!」


 なんか、すごい叫び声が聞こえる。この声って、確か……ユミルの声よね。

 声を方には……やっぱり、あの叫び声の主はユミルだった。

 ユミルは叫びながら、刀っぽい物で、【ガルム】に斬りつけていた。

 てか、武器持っていたの? そういえば、この子の腰には鞘らしきものが、あったような……。

 なんか、適当に、斬っているみたいに見えるけど、目にも見えないほどの速さで、刀を振っている。そして、【ガルム】の原型がなくなっていき、魚の切り身のように、肉がバラバラになっている。


「もう、こないでーーーーー!!!」


 いや、もう死んでいる、レベルじゃ、ないでしょ。切り身でも売るつもり? おいしくなさそうだけど……。


 「ぐうううう」と獣の唸り声が。爆発した【フェンリム】が立ち上がっていた。

 あの爆発で生きているなんて……。

 その間にカチュアは自分の剣を回収していた。


 【フェンリム】はカチュアに襲い掛かる。

 やはり、こんなデカい狼だけど、カチュアは大きな剣で、【フェンリム】の腕を受け止めた。そのまま、剣に力一杯、振り上げると、【フェンリム】は後ろに押し出しされた。攻撃の手を緩めることはなく、カチュアは【フェンリム】の正面に向かったが。


『カチュア、後ろ』


 カチュアの後ろには【ガルム】が二匹いて、カチュアに襲い掛かる。

 しかし、カチュアは横回転しながら、【ガルム】を二匹同時に斬りつけた。

 そこまではよかったんだけど……。

 カチュアの後ろには【フェンリム】の口が。かなりのピンチでは?

 だけど、カチュアは【フェンリム】の口に目掛けて、剣を投げつけた。

 てか、この子、剣をよく投げるよね。

 投げつけた剣は【フェンリム】の尾から出てきた。投げつけた剣が体を貫通したのね。【フェンリム】はようやく倒れた。


「凄いです、カチュアさん」


 エドナとルナがカチュアの方に走って向かってきた。


『そういえば、他の【ガルム】は?』


 カチュアが黙々とどっかに指をさしていた。

 指した方向を見ると。額に穴が開いた【ガルム】が倒れていた。

 あれは……エドナの風の矢だね。


「今回……ルナは何もしてない……はあ~」


 ルナはため息をついた。


「それにしても」

「どーしたの?」

「【フェンリム】と【ガルム】が同時に現れるなんて」

『どういうこと?』

「【フェンリム】と【ガルム】は狼型の【魔物】だけどこの二体が群れることはないのよ」

「……そういえば……おかしなことがあったは~」

「カチュアさん、どうしたんですか?」

「あの狼さん」

「【フェンリム】と【ガルム】ね」

「その【フェンリム】と【ガルム】ね、何か急に現れたようなの」

「どういうこと?」

「うまくいえないけど……突然なにもないところから現れたような感じがするの?」

「もしかして、【転移術】?」

『知っているの?』

「だけど、あれは失われた技術のはず」

『もしかして、それもメリオダスが考案した……』

「そういうものがあったことは残されているんですけど、肝心な理論までは……」

「【転移術】って?」

『転移って、ことは、例えるなら、光の速さで者や人を移動させるってことでいいのかな?』

「まあ、そうですね」

「よくわからないわ」

 

 うん、どういうのか知っていても、説明するのはむずかしいよね。

 ……ところで。


「いやややっやややややややや!!! こないでーーーーー!!!」


 まだ、叫んでいるよ、あの子。もう、目の前に、【ガルム】がいないのに。哀れな【ガルム】。

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