第三章 翼を持つ者 パート4エドナサイド
ユミル様を追って、森の中に入っていくけど……なかなか、見つからない。
あたしたちは辺りを見渡しても、ユミル様らしき姿が見つからない。
「どこにいったんだろう」
「今は何も聞こえないから……どこかに隠れているかもしれない~。……【魔物】に食べられていなければいいけど……」
「怖いこと、言わないでください」
ルナちゃんが大きく息を吐く。
『てか、【魔物】がいるなら、あんたが気づきそうだけど』
「……そっか~」
しばらく歩いていると、ふっと、顔をあげてみたら……。
「あれ、じゃないかな?」
指をさした方向には、一本の木があった。茂みから翼らしきものが見えた。
『翼が丸見えだね』
「ユミル様ーーー。隠れてないで、出てくださいーーー」
あたしはユミル様を呼びかけると。
「はわわわわ!!! 何で見つかったんですか!?」
呼び声にビックリしたのか、ユミル様がかなり慌てている。そして、足場になっていた枝から滑ってします。
「わわわわわわわわ!!!」
そのまま
木の上から落ちてします。
「ドーーーーン」と音がした。
「痛たた……」
「だいじょぶ?」
「あっ、はい」
カチュアさんがユミル様を受け止めてくれた。
あれって、お姫様だっこって、いうんだっけ?
「あの……、綺麗な蒼い髪ですね」
ユミル様は顔を赤くなっていた。
「ふふふ、ありがと」
「あ、わたし、カチュア、こっちがエドナちゃんで、こっちがルナちゃん」
「よろしくね」「よろしくお願いします」
ルナちゃんとほぼ同時に挨拶をした。
「立てる?」
「あっ、はい」
カチュアさんの腕に抱えられたユミル様はそこから降りた。
「姫様、皆様、心配しています。戻りましょう」
「あ! え~と、おおおおお」
ユミル様はカチュアさんの後ろに隠れてしまった。そして、顔を少し出した。
「あ、はい」
避難を行っている部隊に戻っている間でも、ユミル様はずっと、カチュアさんの背中を付きながら歩いて行った。
「皆様、ご迷惑かけました」
カチュアさんの後ろに隠れていたユミル様が部隊の前に走っていき、向かってお辞儀をする。
「ユミル様、心配しましたよ」
「ひいいいい!!! 怖い顔ーーー!!!」
『なんか、騒がしい子ね』
ユミル様は叫びながら、カチュアさんに向かって走っていった。
「ユミルちゃん?」
ユミル様はカチュアさんの胸元に飛び込み、顔を胸の谷間に入るように抱き着いてきた。
セシル兵の何人から「なんてことだ」、「姫様とはいえずるい」、「あの胸に抱かれたい」などの声が聞こえてくる。
そんな中、カチュアさんは抱き着いているユミル様を抱いたままにし、急に剣を投げつけた。
「カチュアさん? どうしたんですか?」
剣を投げた先を見ると見たこともない大きな狼が……。その大きな狼の額にはカチュアさんが投げた剣が刺さっていった。大きな狼は横に倒れてた。
「何これ?」
「これって、【ガルム】!? 【魔物】よ!!」
「五匹と一匹……」
カチュアさんがぼそっとそう言ったのが聞き取れた。
すると、あたしたちの目の前には【ガルム】と呼ばれていた、狼とよく似た大きな【魔物】、それも五匹の姿が……いいえ。
「ぐうううううううううううう」と大きな唸り声が。【ガルム】の後ろから、【ガルム】よりか数倍大きい狼の姿が現れた。
「うそ!? 【フェンリム】!?」
ルナちゃんがそう言った。【フェンリム】は……あの大きな狼のことね。
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