第三章 翼を持つ者 パート3ナギサイド

 カチュアたちは、アルヴスって人が手配してくれた馬車での移動で、出発してから三日がたって、ようやくセシル王国、国境に到着した。


「何者だー?」


 恐らく……国境を守っている防衛兵が馬車の目の前に立って、馬車が停止した。


「シグマ様からの支援員として派遣された、ルナです」


 ルナは小窓から紙切れをセシル兵に見せた。「書状」かな?


「ルナ殿というとアルヴス殿の妹ですか、申し訳ありませんでした」

「こちらのお嬢さん方は?」

「怪我人の治癒するために連れてきたのと、その護衛です」

「カチュアです」

「エドナです」

「そうですか、では早速、案内します」


 この後は、しばらく、セシル兵の一人に案内をしてもらうことになる。


『あ! ルナに聞きたいことがあるって』

「なんですか?」


 国境付近でセシル兵を見てから、気になっていた。


『あの人たちなんか翼ついていなかった』


 そう、セシル兵には背中に翼が付いていた。今、案内しているセシル兵も飛びながら移動していた。


「そう言えば……あったような……」


 結構、目立つと思うんだが、カチュアって鋭いにか鈍感なのか……。


「あの人たちは【鳥人族】です。セシル王国は【鳥人族】の国ですから」

『【鳥人族】?』

「翼の付いた人ぐらいしか知らないです。あっ、空も飛べますよ」

「そうです。ただ、翼がついているだけの【種族】ではないんだけど」

『他にもいるのか?』

「え~と、ルナたちは【人間】で言われていて、後は……【獣人族】、【竜人族】、【小人族】、【巨人族】、【妖精族】、【魔人族】、【人魚族】、色々います」


 しばらく、話していると。


「すいません、少々お止まりください」

「どーしたの?」


 案内してくれたセシル兵が停止をお願いすると馬車が停止した。


「避難所です」


 目の前にはセシル兵と怪我をしている人たちが見えた


「何があった?」

「近くの村が【フェンリム】に襲われました。防衛兵です。何とか撃退しましたが」


 エドナは馬車から降りて、怪我人のところまで駆け寄った。


「皆さん、手当はされていますね」

「応急処置ですが済まされています。後は安全な都まで誘導を行っています」


 カチュアとルナも馬車から降りてきた。


「翼はあるけど、移動する時は飛んでいるの~?」

「翼に怪我した者が多くいて、長距離も飛べるものは、ほとんどいないのです。だから、飛べない者を担いだりして、休みながら誘導しているのです」


 カチュアたちを誘導してくれている、セシル兵が、首を横に振っている。探し物でも探しているのか?


「ところで、ユミル様はどちらに? その部隊だとユミル様が来ているのでは?」

「ユミル様?」

「確か、セシル王国のお姫様ですね。でもなんでここに?」

「姫様は【治癒術】が使えますので」


 【治癒術】って、エドナが使っているやつか。お姫様がわざわざ、ここまで来てくれるなんて。


「その姫様は皆様が来た辺りから、姿が見えなくなりました」

「そうですか、またですか」

「何か問題ですか?」

「ユミル様は人見知りなお方で、知らない方を見ると、どっかに隠れてしまうんです」

「あっ、そうなの」


 セシル兵がその……ユミルがいなくなったことでざわついている中、カチュアがぼっーとしながら、森の方を眺めていた。


「あの~、さっきから気になっているんだけど、あれは何~?」


 カチュアの指先の方にある草むらに翼らしきものが見えた。

 いや、なにあれ?


「翼だね」

「あのー、そこに隠れている人……」


 カチュアたちが声を掛けると。


「はわわわわ!!! 」


  草むらから女が騒ぎながら出てきた。

 よく見たら、金髪ロングの美少女だ。


「な! なんでわかったんですか!? 隠れていたのに」


 いや、いや、いや、翼が丸見えでしょ。てか、隠れているつもりだったんだ。


「ユミル様!! そちらにいらっしゃたんですね」


 この子がユミルなんだ。

 

「さあ、こちらに……」


 セシル兵が近づくと。


「いや!!! 知らない人!!! 助けて!!!」


 凄い叫び声が……。


「あのー、私たちは……この国の防衛兵でして」

「いやーーー!!! 部隊兵に似せた知らない人!!! 助けて!!!」


 自国の兵でも怖がっているじゃない。人見知りというか臆病じゃない。

 ユミルは森の中に入っていった。


「姫様! 危険です!」

「まずい、まだ、【魔物】がいない保証はない」

「それなら、大きな足跡は聞こえないは~」

「しかし……」


 まあ、心配なのはわかる。今は【魔物】はいないとはいえ、危険なのは変わりない。カチュアはのんびりしすぎだけど。


「私たちが探しに行きましょ」

「それなら我々はが……【魔物】が現れるかもしれない」

「だからこそ、カチュアさんといった方がいいのよ」


 カチュアは野生の感が鋭いからその辺の兵よりも生存率は高いだろう。

 カチュアさんはユミルを追って、森に入っていった。

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