第三章 翼を持つ者 パート2ナギサイド

 なんか……すごい展開になったような……。

 今までの悩みが嘘のように、なくなったよ……。


「今までのルナたちの会話などは聞いていましたが?」


 ルナがそう問いだすと。


『ある程度は』

「あなたの名前は?」

『ナギで名乗っている。記憶がなくなっているんだ』


 まさか、私の声がカチュア以外に聞こえる日が来るなんて。

 これでやっと、カチュアを通して、この二人に聞き出す必要がなくなった。カチュアはしゃべるのが遅すぎるから……物凄くじれったいのよ。

 それにしても……。普通が築かないものでしょ? なんで気づいたんだろう?


『いつから気づいていたんだ?』

「カチュアさんと出会った時から、始めに出会った時は、ライム村から避難してきた人だと思っていました。やけに、ボロボロだったので」


 やっぱり、あの時に、カチュアとエドナがライム村から来たことは気づいていたんだ。


「でも、近づいた時にはカチュアさんから、妙な【魔力】の流れを感じていたのです」

『【魔力】?』

「【魔術】のエネルギー源です」

『なるほど、【魔術】のことは、大体は把握している。【魔力】って、感じ取れるものなの?』

「そうなの?」


 あれ? 【魔術】を使う、エドナがわからないのか?


「これは特殊で【魔術研究員】でも、ルナと兄様ぐらいでしか、感じ取れないのよ。もちもん探せばいるかもしないけど」

『なるほどね』


 【魔術】を使える人が、必ずしも、できることではないってことね。


「ねえ、ルナちゃん、さっきから誰と話しているの?」


 カチュアが問いをだす。


『おーい、カチュアさん、まさか気づいていないのか?』

「え?」

「ナギさんとです」

「……えー、ルナちゃん、ナギちゃんの声が聞こえるの?」

「あたしもです」

「エドナちゃんも?」


 鈍感すぎでしょ。てか、今までの会話で築かないのは、無理があるのでは? 


『ところで、なんで、私の声が聞こえることができたの?』

「これは【魔導具】の一種で、【通信機】というのです。まだ、開発中で、普及はされていませんが」

「つうしんき?」

『遠くから連絡手段だね』

「記憶喪失の割には、色々知っているのね、まあ、記憶がなくなっていても身に付いた知識が忘れるわけではないから」


 そう言えばそうよね……。でも、いくら、知識は覚えていても、通信機のことを知っているなんて……。【魔導具】のことは知らなかったのに。


「話を戻すけど、この【通信機】は我が頭脳を持ってつくりだした傑作だ」


 口調がおかしくなったよ。この子。


「まあ、実際は【通信機】ではないがな。これは【通信機】の原理を応用して改良してみたんだけど、どうやら成功したみたい」

『まだ、開発中なのにそれを応用できるなんて、天才では』

「ルナは天才なのです」

『あなた……キャラ変わっていない?』


 ルナって、幼いわりに真面目な子だと思ったが結構、研究バカなのね。


『ところであなたは、何で私がカチュアの中にいるのかは、何か知っている?私を記憶失っているから、どうしてカチュアに入っているかわからないのよ』

「確証はないけど、これは失われた技術である【封印術】じゃないでしょうか?」

『【封印術】? それも失われた技術って』

「そう、メリオダスが考案されたと言われているの」

「メリオダスって、女将軍シェリアのお兄さんの?」


 カチュアと同じ、蒼い髪と瞳を持った、女将軍シェリアに兄なんていたんだ。しかも、【魔術研究員】なんて。


「はい、正確には義兄妹です。メリオダスは優秀な【魔術研究員】で様々な【魔術】に関する研究成果を出しているのです。【封印術】もその一つです。ただ……何でカチュアさんの中にいたのか。心当たりあります」

「わたしもわからないわ~、最近になって、ナギちゃんが出てきたの~」


 しばらく沈黙が続くが、ルナは何かひらめいたようで。


「恐らくは、封印前は眠っていて、封印が何か所か解けて、目を覚ましたのね。でも、それだと、封印されているのは精神だけで、それとは別に体があるのね」

『体があれば、私は元に戻れるの?』

「わからない、何しろ、失われた技術だから」


 失われて技術って……記憶を失う前の私はそんなものに関わっていたのか……。

 そんな、失われた技術と聞いて、ふっと、思い出したことがある。


『そういえば、ライム村を襲ったヴァルダンの連中は【禁書】がどこかって、探していたみたい』

「それって、【メリオダスの禁書】のこと?」

「そんなこと言っていたんだ」

「言っていだっけ?」


 覚えていないのか!! それか人の話を聞かないのか、すぐに聞いたことを忘れるのか、この子らは!!


「メリオダスは【ネクロマンサー】と異名を持った、その時代の【厄災】と呼ばれていました」

「確か、最後の戦争で、シェリア将軍に打ち取られたんですね」


 実の兄妹じゃないにしても、兄を殺してしまうなんて……悲しい話だ。


「【禁書】はメリオダスの研究成果が書き記した書物です。あの時代は【魔術革命】と呼ばれるほど、様々な【魔術】に関する技術が発展した時代。その革命に関わったのはメリオダスです。そのメリオダスの研究成果などが、記されているのが【禁書】です。あれには、とても恐ろしい実験成果も記されているって話で、それを悪用されると、世界が滅びるとも、言われています」


 穏やかな話じゃないはね。


「破棄はされなかったの~? 危ないでしょ、それ~」

「当時のことはわかりません。だけど、【メリオダスの禁書】は喉から出るほど欲しい方は、いっぱいいます。なんせ、メリオダスは数十世紀先の技術が記されています」


 世界が滅びるっていうのに何考えているんだか、その人たち。

 それにしてもメリオダスはかなり優秀な人だったんだ。


「あのー、そろそろ、行きましょ~」


 もう、話が飽きたのか、カチュアが話に割ってきた。まあ、それは飽きるよね、カチュアはあまり話に入っていないから。

 エドナも大きなあくびをしているし。

 まるで、講義を受けているみたいな会話だからね。


「そうですね、では、行きましょうか」

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