第四章 再会 パート1ロゼッタサイド

 ここはコルネリア帝国中央にある、コルネリア城。


「はぁ~、やっと終わった~」


 大きなため息を付きながら、会議室から出て行った。


「すまない、付き合わせしまって」


 一緒に会議室から出てきたのが、私の主人のシグマ様。

 あ! いけない。シグマ様にみっともないところ見られてしまった。ここはびしっと。


「いいえ! 大丈夫です」


 とはいえ、あの雰囲気は好きではない。もう、くたくただ。


 私はロゼッタ。【八騎将】の一人、シグマ様の左腕。まだ、十八歳だけど、これでも立派な騎士です。

 でも、騎士に、それも【八騎将】の側近になるのは大変なみちのりだった。なんせ、コルネリア帝国は実力主義。というよりも【勇能力】を持っていないと即位は難しいとされている。

 【勇能力】を持たない私を側近として置いてくれたシグマ様には感謝をしきれません。


 さっきまで、【八騎将】の緊急の軍事会議に参加されていた。内容はヴァルダンのことだ。

 現在は防衛戦かつ侵入してきたヴァルダン兵の討伐だが、【八騎将】のガロンが痺れを切らし、揉めに揉めて、さっきの会議にて、ヴァルダンに攻撃を仕掛けることが決定された。


 それ以前に【八騎将】の一部を除いて評判はかなり悪い。

 その一人である、ガロンは力こそ絶対的な持ち主で、力のない者を見下す方向性である脳筋バカ。

 バカと心の中で叫んで? しまった。人前には言わないわね。

 ある意味、民がヴァルダン兵に殺されようが、関係ない、弱い者は殺されて当然と考えだろう。だから、防衛戦など、あの脳筋ヤロウには無意味は行為だろう。

 まったく、あの脳筋ダルマには真の意味で国のことなんて、何もわかっていない。いや、わからないから評判が悪いのか。


 まあ、そんな話は置いといて。これから、本格的に戦争が始まるわけだ。

 私たちは引き続き、防衛と侵入してきた、ヴァルダンの討伐だ。


「それで今回の仕事は……」

「今はヴァルダンとの戦争中だ、アルヴスの報告では二つ、一つ目、ヴァルダンはコルネリア内の村や街を襲っている……そこは私がやる」

「私とアルヴスの仕事はもう一つの報告のことですか?」

「そうだ、お前もしっているゲブンのことだ」

「ゲブンのことは今に始まったばかりではないはず」


 ゲブンは【八騎将】の一人。【八騎将】の中でも一位、二位を争う、評判の悪さを持つ。ガロンとはまた、別の意味で。

 コルネリア帝国ができる前の王国の将をしていた父を持つ。【悪帝】として、大陸全土の支配を企み始めた皇帝を【空の勇者】と共に倒した。その後は【八騎将】の地位を得た。それが五年前に病気で亡くなり、息子であるゲブンが【八騎将】になった。


「確かに、しかし、ゲブンは将としての才はなくとも、悪知恵だけは人一万倍働く、この戦乱でなにを企むか」


 父親は立派の人だったらしいけど、その息子は将としては無能だから。

 本来の【八騎将】の地位はゲブンの弟がなるはずだった。弟の方が優秀とは聞いていたんだけれども、なんかの遠征時の事故で亡くなったらしい。

 噂だが、後継するために、出来のいい、次男を暗殺したなんていう噂もある。

 ゲブンの話をしていると気分が悪くなってきた。話を戻そう。結果はゲブンの話になっちゃうけど。


「仕事の内容は?」

「これに書いてあること読んでおいてくれ」


 一枚の紙を渡された。読んでみると・・・・・・前回とほぼ同じような内容だ。


「ところでそなたも感じたか」

「何がですか?」

「最近の皇帝様の感じ……いや、なんでもない」

「やはり心配なんですか?皇帝様とは戦友だから」

「まあ、そんなところだ」


 現皇帝様は様と【悪帝】を倒した八人の【空の勇者】。で、戦いが始まる前から仲良しだったみたい。いわゆる、幼馴染ね。


「私としてはシグマ様のことも心配です」

「なんのことか?」

「刀を構える時、左手で持たなくなりましたよ」


 そう、それはつい最近、ヴァルダンの討伐時のこと。ヴァルダン兵の攻撃を刀で受け止める際、刀を持つ手を右手だけで持っていたこと。結果的には返り討ちにしちゃったが。命に関わることなのに、両手で持たなかった。いや、左手が使えなかったからだ。


「気づいていたか……怪我の後遺症が最近になって酷くなってきているだけだ」

「大問題ですよ! いつか、死にますよ」


 シグマ様はお強い方だが、結構無茶をする方だ。何度か、死にかけたことがあったぐらいだ。見ている私たちの寿命がなくなりそうだ。

 仕事の話に戻そう。


「……ところでセシル王国の救助要請時、アルヴス自身は参加しなかったけど、今、アルヴスの手元にいる兵で足りていたんですか? 無事に終えたみたいですけど」

「なんでも、兵としてではないが、新しく雇った人材を向かえるらしい。それも二人も」

「あのアルヴスが? どんな人なんですか?」


 アルヴスは悪い人ではない。あまり他人を信用しない人ではある。まあ、性格がいいのかって言われたら悩むけど。

 そんな、アルヴスから雇うなんて、興味深いわ。


「一人は伝説のような人だそう」


 なんだか興味がわいてきたわね。

 そういえば、昔、私もその「伝説みたいな人」と遊んでいだっけ。外形もだけど、あの人のように強い子と。

 今頃、どうしているのかな? あの事件以来、彼女を含めた姉妹たちの姿が消えてしまったから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る