第ニ章 英雄の力 パート7ナギサイド

 ロプ村に戻ってきた。


「カチュアさん!無事だったんですね!」

「何とかなったわ〜」


「あ! 怪我していますね。治します」

「いや、こいつはガイザックだ」

「そうなんですか? ・・・・・・でも・・・・・・」

「確かにこんな顔にされて可哀想だな。これから囚人になるけど」


 よく「可哀想だな」って言えるわ。この人、顔面潰れた人を仰向けにして、足にロープを巻いて、それをここまで地面に引きずって来たから、もう酷いものよ、この人。こういう時に使うのがサドかな?・・・・・・意味は分からないけど。

 エドナは【治癒術】を使うとガイザックの顔が戻っていく。気絶したままだけど。


「いやー嬢ちゃんのおかげで助かったわ」

「ところで君は?」

「エドナです。あなたがルナちゃんのお兄さんね。始めまして」

「元気のいい子だな。ルナよりかは年下か?」

「あたしは十五歳です」

「ルナよりも年上か、よかったな、背は勝って。胸は完全惨敗だが」

「兄様ー!!!」


 ルナの兄に何度か殴るがあまり痛いという声も出さなければ表情も変わらない。腹筋があるのか、ルナのパンチが弱すぎるのか。


「まあ、とにかく、一度、アヴァルの街に戻ったら、本当はタウロの街に行きたいがここからじゃ遠すぎる」


 なんで平然で話を進められるよね、この人?


「仲良しですね」

「そうね〜」


 この二人も、この光景を見てどこからそんな発言が出てくるのよ。




 何だかんやアヴァルの街に戻り、カチュアとエドナはルナとその兄を待つべく、宿の部屋で待っていた。


「お待たせしました」

「まだ名乗っていなかったな、俺はルナの兄アルヴス。【魔術研究員】で帝国【八騎将】のシグマ様に支えるものだ」


 あっ、お兄さんも【魔術研究員】なんだ。


「シグマ様って【空の勇者】と呼ばれる方ですよね。二十年前の戦いで【悪帝】を倒した八人の英雄の一人ですよね」

『カチュア・・・・・・【空の勇者】ってなに?』

「エドナちゃん、【空の勇者】ってなに?」


 もう伝言ゲームみたい。てか、カチュアも知らないのかな。


「カチュア殿はあまり本とか読まないみたいだな」

 

 物凄く呆れられているよ。カチュア。


「【空の勇者】は空にある国からきたと言われている。歴史上に現れた人々の恐怖である【厄災】が現れるたびに現れると言われている。【悪帝】も【厄災】とも呼ばれるぐらいの存在だったんだ」

「空に国なんてあるんですか〜?」

「実際は違うよ、昔から彼らのことを【空の勇者】って呼んでいたんだ」

『じゃあ、何で空にある国からきたってことになるのかな?』


「そろそろ本題に入ろう。ルナから色々と聞かせてもらった。確認に聞きますがエドナ殿がライム村の住人ですか?」

「え? はい!」

「わたしたちが村から出る時に来たのがあなたたち?」

「正確には私の部下です、私は別件でしたので」

「村を襲ったのはヴァルダンの蛮族です」

「なんでヴァルダン」

「今はヴァルダンとの戦争中なのです」

「戦争が起きていたの?」

「ほんの1週間前です、いきなりの侵入で、村のいくつかは壊滅しました。今のところヴァルダンは一時撤退されています。近々、我が帝国はヴァルダンの討伐に向かわれます」

「あなた方はヴァルダン兵を退いたのでは」

「はい・・・」

「いや、あなたの戦っている姿を見ていると納得します」

「カチュアさんの戦闘力は高い方です。多分、【八将軍】に匹敵するほどです。ヴァルダンには遅れは取れないはず、しかし今のヴァルダンはかなり手強いです、謎の武器を所有している話です」

「実はその一人が化け物になって」

「化け物・・・・・・【魔物化】か?」

「人がその・・・・・・【魔物】になることがあるんですか?」

「【魔石】を摂取するとなるとは聞きますけど」


【魔石】って、あの、【魔術】を使うための? あれ、そんなに危険なものなの?


「エドナさんは【魔石】は直接体内に触れると毒って知っていますよね?」

「うん、【魔導鉱石】で作られた【魔導具】を使わないといけないことは村長さんから何万回も話しを聞いたことがあるの」


 いや、多すぎだろ!! どんだけ心配症なのよその村長は。


「恐らく、その武器は試作品で【魔石】が埋め込まれているかもしれない。まあ、試作品なために何か誤作動を起こして【魔物】になっただろう。今はそれしかわからない」


 アルヴスは頭をかきながらため息をつく。

 それにしても、【魔物化】ねぇ・・・・・・実際、人が化け物いや【魔物】になるのはこの目で見ているが、やっぱ、人があの【魔物】になるのはぞっとするな。


「話が長くなってしまった。取り敢えず、ここまでにしよう。辛い話をさせてしまいもうしわけない」

「あたしは大丈夫です」

「君たちは旅をしているんだな? 残念だけど今はやめといた方がいい」

「う〜ん、そんなものなのかな〜」


 確かに国境を越えようとすると敵と認識されてしまうかもしれない。お互いに。


「そこでだ。一時的でいいから俺に雇われてくれないかな? それとルナの研究の手伝いをも。もちろん、報酬は弾むよ」

「どーする? エドナちゃん?」

「え? どうしよう? あたしは・・・・・・カチュアさんに着いていきますよ」

『あんたたちら危なかっしいから、しばらく落ち着いてからでいいじゃないかな?』

「ん〜わかった! 引き受けるよ〜、エドナちゃんもいい?」

「うん」

「あっさりだな」

「よし、しばらくは、この街にゆっくりしな! 俺はこれで」


 アルヴスは部屋から出ていった。


「いいのですか?」

「せっかく、お友達?妹?見たいな子と仲良くなったもの〜しばらくは一緒にいていいかな〜って」

「それは・・・・・・よかったですね」


『先が思いやられるな・・・・・・』


 でも、まあ、いいかな? 仲がいいことは良いことだし・・・・・・。なんか寂しくなってきた・・・・・・。


「あっ! 用事を思い出しました! それでは」


 ルナは部屋から出ようとすると。


「それとカチュアさん。あなたの中に入る存在のこと教えてください!!」


 え?




第ニ章  英雄の力 完


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