第ニ章 英雄の力 パート6ナギサイド
ようやく目的地に着いたようだ。
目の前には、ニ本の剣を両手に構えた男とカチュアが持っている剣ほどではないが大きめの剣を持った男がいた。
「あの人がルナの兄です!」
ニ本の剣の方ね。確かにアヴァルの街で見かけたはね。
となると、もう一人の方が・・・・・・。
「あの男の人がガイザック?」
「ルナも手配書の似顔絵しか見たことないですが、特徴が一致しています」
ガイザックの方は火の玉・・・・・・恐らく【魔術】ね。それを何発か打ちまくっている。確かにエドナの風の矢を作る時はややだが時間は掛かるがあれは次打つのに時間は掛かっていない。これが【無詠唱】。
ルナの兄はそれを避けられているが・・・・・・かなりギリギリね。
「あっははは!!! さすがは【悪帝】を倒した英雄の一人シグマの右腕だな。【勇能力】を持つ俺様にここまで手こずらさせるなんて」
「くそー、それは英雄の力と呼ばれているものだ。帝国兵に所属も出来たんじゃないの?」
「それは俺よりも先に生まれてきた奴がそう呼んでいたんだことだ。こんな力があるのに俺の好きなことをするのに使いてぇのさ。そう女遊びにな。それを邪魔する奴は殺すまでだ」
「くっ、まぁ、『先に生まれてきた奴が呼んでた』っていうのは否定しないが、悪用するなら放置するわけにはいかない」
「よくしゃべるな、だが」
ガイザックの左手から火の玉が、それもかなり大きいのが。
「これで終りにしよう-」
しかし、大きくなった火の玉が急に消えてしまった。
「何?」
ガイザックはその場から離れた。
ガイザックにいた場所には大剣が地面に突き刺さっていた。
「危ねえ、大剣!?」
「あら、あら、避けちゃうなんて〜」
地面の突き刺さった剣の横にカチュアが立っていた。
「だいじょぶですか?」
「蒼い髪と瞳・・・・・・女将軍シェリア? いや、君は?」
「お兄様! ご無事ですか?」
ルナは兄の元に駆け付け。
「ルナ!? どうしてここに!?」
「説明は後です!」
「そうだな・・・・・・彼女は味方でいいなのか?」
「はい! 頼もしい方です!」
「今度はねぇちゃんが相手か? まるで女将軍のような容姿だな。女を相手にするなら殺し合いではなく、遊んでほしいよな! 特にそのデカい胸で」
こんな時でも胸ね。たく、男ときたら。
「わたしは、殺し合いなんて好きじゃないわ〜、でもあなたは人々を苦しめている。ほって置けないわ〜」
『御もっともだけど・・・・・・カチュアが言うと説得力ないけど』
「えー? なんでー?」
「あーそうかい、それなら、勿体ないが、俺に従わねえ女は少し痛い目に合わせないとな・・・・・・覚悟しな」
ガイザックはカチュアに剣で斬り裂きに行くが。
「危ねえー」
カチュアはまだ地面に刺してある剣を蹴りと、剣が抜けて回転しながらガイザックの方に飛んで行ったが、ガイザックは剣で弾きカチュアの剣を弾いた。しかし、カチュアはその隙に素早く懐に入りガイザックの腹に蹴りを入れる。
ガイザックは「ぐおおお」と叫びながら勢いよく飛ばされていく。
飛ばされたカチュアの剣はカチュアの隣に落ち地面に突き刺さった。カチュアは剣を抜いた。
『めちゃくちゃだよー!!! カチュア!!!』
「そっお?」
ガイザックは地面に転がっていくが、体制を整えていた。
「くそがー」
しかし、奴の目には炎の大玉が襲い掛かる。
それはルナの放った炎系の【魔術】だ。
「ぐう、なぜだー!?」
ガイザックは体に燃え上がったはずの炎を祓い去る。
「どうゆうことだ!?」
あれ? ルナのお兄さんは何かに驚いていた。
「なんで奴は【障壁】が貼られていない!? まさか! 発動できないのか!?」
どうやら、【障壁】を発動していないみたい。でも、何で? こういう時に使わないと命取りなのに?
「もしかして、今の奴は【障壁】を貼るための【障壁力】がなくなっている! だが、俺はそこまで奴にダメージを与えていないはず。いや、傷一つも与えてすらない!」
「まさか! さっきのカチュアさんの蹴りでガイザックの【障壁】を破壊したの!? 一撃でそんな!? こんなことあるの!?」
まあ、あり得るかもしれない。カチュア馬鹿力だから。
「くそがーふざけやがってー」
今度は【無詠唱】の【魔術】での火の玉を何発も放つが、カチュアは火の玉を華麗に交わしたり、剣で火の玉を受け止めたりした。もう何三十発以上も放つがカチュアには当たりすらしない。
しばらくすると攻撃が止まり、ガイザックは「ハアー、ハアー」と息を切らす。【無詠唱】でも何回も使えば体力は消耗するのね。一方でカチュアは息を切らすどころか、のほほーんとした表情も崩れることはなかった。まあ、いつも非常時でも、のほほーんとしているけど……。
「くそー、くそ、くそー」
再び、剣でカチュアに攻撃を仕掛けるが。
「馬鹿な! 俺の攻撃を受け止めた?!」
カチュアの剣がガイザックの剣を受け止め、カチュアはそのままガイザックの剣を真上に飛ばした。
カチュアは攻撃の手を止めず、ガイザックの顔面を殴りつける。ガイザックは後ろの方に吹き飛ばされていく。
「おい! 顔面潰れているぞ!」
「殺さないよう、力をできるだけ弱めたつもりよ〜」
「『殺さないように』って・・・・・・これ、完全に両方失目しているぞ。さらに鼻の骨が砕けているし、首の骨も折れているぞ。いや、それどころか、全身の骨が砕けている。生きているのが不思議なくらいだ・・・・・・」
「しかし、君は何者だ? 奴は力が弱い方ではあるが【勇能力】の持ち主。それなのに【障壁】は一撃で壊すし、【身体強化】で高めていたのに遅れを取らない・・・・・・君は見た感じ【勇能力】を持っていないのに」
「カチュアよ〜」
『カチュア、名前を聞いてるわけでは・・・・・・』
「まあ、いいか」
いいのかよ!?
「今は置いておく、それよりもありがとう、助かった」
「しかし・・・・・・改めて見ると伝説の女将軍の血縁かと思うほどだ」
「よく言われます」
そろそろ、聞き飽きたというセリフが出てきたもいいと思うが。
「さあ、戻りましよ、皆さん心配しています」
「そうだな」
それにしても・・・・・・ヴァルダンとかいう国だっけ? その将といい。ガイザックといい。自分の力を否定されるとあんなに怒り狂うものかしら?
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