第一章 蒼髪の少女 パート7ナギサイド

 準備は整え、村出入口近くの瓦礫に隠れ、様子を窺う。

 そして……。


「見えます! 十何人はいます!」

「うん、わたしも見えるわ~」


 私には見えないが……。エドナの視力は高い方であるが……カチュアも目はいいんだね。

 森からでて村まで着いた距離は約五百メートル位だったのような……その間は平地。ということは村を襲ったであろう連中は約五百メートル内にはいるはず。


「わたしが前に出るね、エドナちゃんはここから弓で援護をお願いね~」

「大丈夫なんですか? お一人で?」

「こういうのは慣れているの~」

「あたしは・・・・・・」


 エドナの足が震えている。

 いくら、村の皆を殺した連中でも戦うとなると誰でも怖くなるだろう。平凡に生きてきた女の子には残酷すぎる現実だ。


「怖い?」

「・・・・・・」

「急所を狙わらなくっていいのよ〜」

「え?」

「下手したら殺し合いになるのよ~、わたしたちは戦うつもりはなくっても、相手は戦うつもりよ~。でもあなたはいきなりのことで覚悟もまだできていなよね~」

「う、うん」

「それでも、あなた自身も守らないと~」

「カチュアさん」

「覚悟はなくったとしても自分を守らなくっちゃいけないわ〜。だから、急所を狙わらなくっていいのよ〜。自分の命を大切にして。村を襲った連中のためにエドナちゃんを犠牲になる必要なんてないから~」

「うん」

 

 カチュアは優しく声を掛けるとエドナの震えた足が止まった。笑顔とは言えないがエドナの表情は穏やかになった。


「! エドナちゃん離れて! 来たよ!」

「え!?」


 あれがヴァルダンの国の。見た感じ王国の兵士と言うよりも民族衣装に近い格好。・・・・・・民族衣装って言われても説明できないけど、なんかこう言うとこで使うとしっくりくる。

 民族いや・・・・・・この村を壊滅させたのが奴らなら民族というよりも蛮族と呼ぶべきか。


「村に戻ってくる輩がいると思ったが、娘か」

「おい! 見ろよあれ!」

「おっおっぱいがでかい」

「しかも、すげー美人だ!」

「うひょー! 生きて捕らえましょう!」


 うわー、分かりやすくすごく興奮しているよこの猿たち。

 しかし、やはりこいつらは村を襲った奴らか。


「気持ちはわからなくはないが、我々はコルネリアに勝つために任務があることは忘れるな。将軍殿はもうすぐここに来られる」


 真面目に答えているようでスケベ心丸出しね。息も荒いし。


「あなたたちは、この村を襲ったの~?」

「ああ、そうだ、痛い目に会いたくなければ【禁書】を渡せばいい」


 【禁書】? それが奴らの目的?


「う~ん……、ない」

「嘘をつくな」


 いや、嘘は付いていないよ。そもそもカチュアはこの村の住人じゃないから。エドナなら知っているのかな?

 

「・・・・・・そもそも【きんしょ】ってなに~?」


 あっ、そこからか。私もわからないわ。意味は知ってけど、どんなのかは知らない。


「仕方がない、お主を捕らえるまでだ」

「来るなら、手加減しないよ〜」


 なんか・・・・・・すごーく、シリアスな場面なのにカチュアのデカ過ぎる胸に興奮して、獣の顔になっているよ。こんな奴らに村を壊滅させられるなんて。無の人たちがかわいそう。いや、誰が相手でも人殺しは良くないが。


「よーし、行くよ~」


 剣を抜く。


「仕方がない。なるべく綺麗な肌を傷つけるな」


 ヴァルダン兵は一斉に襲い掛かるが。やはり、獣の顔なのね。

 カチュアは剣を地面に横に斬りつけ衝撃波を起こす。迎え来るヴァルダン兵を吹き飛ばす。


「やっぱり、地面に着けるのはだめか〜」


 カチュアの剣が折れてしまう。カチュアはその剣を捨て鞘に納めている剣を抜き出す。


「なんだ、今のは? 気をつけろ。ただのデカパイ女ではない」


 獣の顔からきっちりとした顔になった。さすがにあれを見せられたら命の方が大事と思うよね。


『次々と来るよ』

「だいじょぶよ~」


 カチュアの周りには10人のも兵が、しかし。

 まるで未来が見えているかのように華麗にかわす。斬りつける。とはいうがカチュアの戦い方は命を奪うためではない。斬りつけたとはいうが急遽は狙わず敵の動きを封じられるぐらいの深手を追う。そういった中でカチュアの剣も六、七本も壊れてしまう。

 でも、あの胸からそんなに身軽に動けるものが?大きな胸はハンデにはならない。


「なんだよ!? あの女は化け物か!?」

「逃げよう! 俺達には敵わない」


 ヴァルダン兵は引いていく。


「あ! こら待ってそんなことしたら!」


 逃げていく兵を止めて声が。


「終わりましたね」


 隠れていたエドナが出てきた。


「まだよ~」

「え?」

「十本ぐらいあった剣が使えなくなっちゃったわ~。あと二本しかなわ~」


 敵が逃げたにもかかわらず、戦いの警戒は解かなかった。

 しかし、カチュアの勘は正しい。まだ戦いは終わらなかった。

 逃げて行く兵の目の前に。


「誰が退けといった?」

「ひいい」

「申し訳ございませんしかし」


 明らかにこの部隊の隊長もしくは将軍のような大男が立っていた。


「この弱者が」

「エドナちゃん見ちゃダメ」


 急にカチュアはエドナの目を隠した。


『いきなりどうした?』 

「あなたも見ない方がいいわ~」

『え?』


 この時のカチュアが何を言っているのかわからない。しかし、カチュアの勘は正しかった。


「ぐわわわわわわわわ!!!」

『なっ!』


 逃げようとしていた部下らしき者の首を斬がなくなっている。そして、大男の武器である大斧には血が。


『あの男、自分の部下を』

 

 大男は武器である大斧で部下らしき者の首を斬りつけたのだ。カチュアは未来予知ができるのか?こうなることがわかっていた。いや、あの男が何をするのかわかっていたのか?

しかし、気になるのは……あの斧。なんなんだ、あの大男が持っている大斧は? 鉄や鋼でできている感じはしない。そう、なんか生き物の骨でできているような斧だ。


「何が起きているんですか?」

「エドナちゃんはこのまま隠れて~」


 カチュアはエドナの目を隠していた手を離す。


「う!」


 見てしまったのね。兵の死体が。すぐに目を背けた。


「エドナちゃん~」

「わたりました」


 エドナはまたどっかに隠れた。


「てめーらも何、情けを懸けられているんだ」

「やめてー」


 カチュアが胸打ちで倒れていた兵にも容赦なく大斧を振り下ろす。


「やめなさい」


 カチュアは地面に落ちてた折れた剣の破片を拾い、敵将と思われる大男に投げつける。

 しかし、当たりはしたが傷が付いていない。


「ふ、そんな攻撃効くわけがない」


 大男は斬りつけようとするもカチュアは攻撃をかわす。かわした攻撃は地面を叩きつけた。そして、地面には大きな穴が空いた。

 いや、どんだけパワーがあるのよ?


「くう、女如きが」

「あなたの部下でしょ?なんで殺すの?」

「逃げる弱い部下などいらんわ」


 男が大斧を振り下ろす。

 カチュアは剣で向かい撃つも。

 カチュアの最後の剣も折れてしまう。


「くたばれ――—!」


 男がカチュア目掛けて大斧を振り下ろす。


「カチュアさん!!!」


 しかし。


「なんだと」


 正直、あの破壊攻撃は男の筋力なのか斧の性能かはわからないけど、地面をえぐるほどの破壊力を持っている。にも関わらず、大男の大斧を持っている手を受け止めた。


「なんだと……」

 

 大男は振り払おうとするがまったく動かない。

 男の腕目掛けて蹴りを入れる。


「ぐおおお」


 カチュアの蹴りで大男は吹き飛ばされる。


「くそが・・・」


大男は起き上がり、カチュア目掛けて大斧を振り下ろすが。


「ぐわわわわ!!!」


 カチュアは足で大男の腕を受け止めて、反対の足で大男の腕を上の方に飛ばして。大男の腹を殴り飛ばす。


「なぜだ・・・・・・?」


 カチュアの手には血が付いている。

  そして、大男の腹部に大きな穴が空いていた。剣の破片を当てても、かすり傷すらつけられなかった大男の体なのに。


「女が・・・・・・」


 男は折れていない方の手に斧を持ち替え、カチュアに向かい斧を振る。

 しかし、カチュアは華麗にかわす。


「この俺様が……村娘なんかに負けるなど、絶対にない……」


さっきから「女」やら「弱者」と言いやがる。腹が立ってくる。


「ふざけるな! 弱者、弱者って、何も抵抗がない人間に手をかけて何が弱者よ! 所詮、そうゆう人間でしか相手にできないでしょ!? 現に見下している女に負けているでしょうがー! いい加減に現実見やがれ―——!」


 今まで見ないカチュアの怒鳴り声が。

 あれ? カチュアが私の思っていることを口にしている?てか、この喋り方、明らかにカチュアじゃない。私だ。どういうこと?


「この女が―————!」


 大男が叫ぶ。

 気のせいだろうか?あの男から黒い靄みたいなのが出始めている。


「将軍殿これ以上は危険です! それはまだ試作品です!」

「だまりいやがれ――—!!!」


 この男様子がおかしい、さっきよりも黒い靄が体全身に包まれている。

 カチュアに大斧を振り下ろそうとすると、大斧が壊れた。

 一瞬見えたのは矢だ。後ろを見ると射る構えをしたエドナの姿だった。狩りの時に使った魔法見たいな矢だ。


「エドナちゃん、ありがと~!」

「うんうん、それよりも」


 大男の様子が。


「この・・・・・・ぐわわわわわわわ!!!」


 大男が苦しみ始めた。

 黒い靄が大男を飲み込んだ。そして、黒い靄が消え恥じた。しかし、そこに出てきたのは人型ではなかった。

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