第一章 蒼髪の少女 パート1エドナサイド

 ここはコルネリア帝国内にあるライム村。

 あたしは一度もこの村から出たことはないの。この村に一番近い村でさえ。あるとするなら近隣の森で狩りをするぐらいねぇ。

 街には行きたしこの世界を周る旅がしたい。それがあたしエドナの今の夢。

 ただ、旅は常に危険と隣り合わせ、軽い気持ちですることではない。心配症の村長さんはいつも外の危険性を1日で長くても3時間くらい話てくれた。奥さんのドアさんにはいつも過保護すぎで叱られていた。

 だから、村の皆さん特に村長さんに心配かけないよう旅に必要な知識や技術を身に付けている。その一つが狩り。まずは食料調達や魔物の対処を身に着けないと。勿論それ以外のこともちゃんとしている。つもり。

 今日も狩りにしにいくところに。

 弓よし、矢よし、解体用のナイフよし、腕輪型の【魔道具】の装着よし、スカーフを頭に巻いて……長い緑色の髪を後ろに三つ編みにしてまとめ、服装は……胸元のボタンは取れてるけど……うん、仕方がない。


「じゃあ、出発―!」

 

 家から勢いよく出てしばらく歩くと。


「おお。エドナか、今から狩りか?」


 聞き慣れた声が、振り向くと、村長さんだ。


「あっ! 村長さんだー。こんにちは。今日も大物捕らえますよ!」

「ほ、ほ、ほ、期待しておるぞ、と言いたいところじゃが、此間みたいに矢を忘れずにな」

「もう、村長さん!」


 確かに射るのに弓があって矢がないと。その矢を忘れてしまう。いや、たまたまだよ、その前は弦を直していない弓を持ってきたこともあるけど、ホント、たまにしかない。と願いたいの。


「それとエドナ、こんなことを言うとセクハラと言われるかもしれないが、服のボタンはちゃんと閉めんかい!そなたの豊満なボディが丸見えじゃよ」

「これは今日着ようとしたらボタンが飛んじゃったの・・・」

「一週間前にばーさんがあげたばかりじゃろ? もう入らないのか?」

「はい……」

「凄まじいの。そうか、今朝の盗賊騒ぎはそれか?!」

「そうなんです……飛んだボタンの先の窓ガラスが割れちゃたんです」


 そうあたしの家の窓ガラスの割れた音でたまたま通り掛かったお隣さんがあたしの家に来てくれた。なんでも盗賊が窓ガラスを割って入ってきたと思ったらしい。


「またく、これじゃ旅にでたら、魔物や盗賊ではだけでなく下心丸出しの男共がよってきてしまう」


 始まってしまった……村長さんの過保護過ぎるための説教が……。


「その辺にしときなよ、じーさんや。心配するのはわかるが、余り過保護だとエドナが独り立ちだきなくなってしまう。わしらが一緒エドナの面倒を見ることなんてできんからの」


 そこには村長さんと奥さんであるドアさんがいた。


「おっと! すまんな」


 話に割り込んでくれたことで村長さんに長い説教を聞かないで済んだ。


「あっ! ドアさんだー」

「これを持って」


 それはドアさんがいつも焼いてくれるコッペパンを使ったサンドイッチ。


「ありがとうございます!」

「そうじゃ、エドナ今夜はわしの家で夕食を食べんか?今夜は・・・シチューじゃよ」

「いいのですか? ありがとうございます。これは大物を取らないと!」

「あ!そろそろいかないと、では行ってきます!」

「気を付けるんじゃよ。ボタンは飛ばしても、スカーフは外すんじゃないよ」

「わかりました!」


 村入り口まで走って向かったところ。


「おっ! ちっこい嬢ちゃん相変わらず、元気そうだな!」

「ハルトさんだー」


 ハルトさんは元々ラム村に住んでいたけどどこの街だったかは知らないけど武器屋をやっていて時々村に来て武器を支給してくれるんです。

 ハルトさんはあたしが小さな時から村に一緒にいたけど。


「ところでなんで、まだちっこい嬢ちゃんなんですか!? エドナですよ!」


 一度も名前で呼ばれたことがない。昔からちっこい嬢ちゃんって呼ばれている。でも、十五歳になったばかりだけどあたしの背は低い。村にいる女性のかたよりも。


「昔から名前を覚えるのは苦手で……それ以外は覚えられるんだが」

「もうー。きっとハルトさんがずっとちっこい嬢ちゃんと呼んでいたから背が伸びなくなっちゃったんだよ。もしかしでハルトさんは呪い術者だったと考えていますよ!」

「そんな、力ねぇよ。……悪かった。今度、村に戻った時に美味しいて評判の店のお菓子あげるから」

「ホント? やったー!」


 お菓子が貰えることが嬉しい。……でも何でお菓子貰えることになったのか?……忘れちゃった。


「ハルトさんはもう帰るんですか?」

「街に帰るところだ」

「街がいいな~」

「嬢ちゃんが旅に出た時には寄っていてくれ」

「うん。必ず寄るよ」

「そうだ、いい弓を手に入れたからいつものところにあるよ、嬢ちゃんが来たら渡すよう言ったから」

「本当ですか? ありがとうございます!後で取りに行きます」

「じゃあな、俺はこれで狩りを頑張りな」

「ハルトさんもお元気で!」


 村から出るとあたしは森の方へ走って向かった。




 この時のあたしは思いもしなかった。

 向かう先で彼女との出会い。

 そして、これが村長含めライム村の人々とは会うことができなくなるということをまだ……。

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