第43話 末裔と新たな嫉妬
翌日も監視室に訪れる監視対象者だ。
「紹介しよう、棘城を作ってくれるバレンティアだ」
カマラダが紹介してくれたのは緑髪緑目の普通体型の男だった。
「初めまして、モンドリアンです。こちらは嫁のパウリナです」
「皆様初めましてパウリナ・モンドラゴンと申します。宜しくお願いします」
「フ~ム。君が噂の黒竜王か! いや、失礼。私は龍人のバレンティアだ。ロサ様を救っていただいて感謝する。新しい棘城は私に任せなさい」
「ありがとうございます」
バレンティアと挨拶してパウリナをカマラダ、ラソン、フィドキアの順に紹介した。
「パウリナ。召喚した黒龍はこのフィドキアの成龍形態なんだ」
「えええっ、本当ですか! 凄ぉぉい!」
監視対象者が褒めるよりも明らかに照れているフィドキアだ。
「ところでパウリナさん。チョット良いですか?」
カマラダが連れて来た嫁に近づき瞳を凝視して手を握った。
監視対象者はチョット嫉妬でイラッとしながら見ていた。
「フ~ム。やはり貴女は私の子孫に間違いないですね」
「ええええっ!」
「やっぱりそうなのか。カマラダ、説明してやって欲しい」
監視対象者からのお願いだった。
「思っていた通り、彼女の瞳と私の瞳は同じ色をしています。そして彼女の魔素は非常に少ないですが、私の系統のモノですね」
「それはどんな系統なのですか?」
「命の水です。この世界で限られた存在以外は全て水分を必要とする生命がほとんどです。それが我らの魔素の根源なのです」
「知らなかった、凄ぉぉい!」
はしゃぐパウリナに更なる物が渡される。
「貴女にコレを授けます」
「これは?」
「龍人の腕輪ですよ」
「ええっ主人とロリ姉様と同じ物ですか?」
「同じだが少し違います。それは私と念話が出来て、貴女を更に進化させる変身を可能にする腕輪です」
「そっ、それはどのような変身ですか?」
「はい、神獣降臨と言って貴女自身が神獣となって戦う事が出来るのです」
ワクワクしていた顔がガッカリした物に替わる。
「龍の召喚だと思いましたか?」
首を横に振るパウリナ。
「もっと魅力的な身体になるのかと思ったの」
自分の胸に手を当ててションボリするパウリナ。
「それは貴女の旦那様が得意よ」
ラソンが告げ口をしたのだ。
「ええっ! どういう事ですか?」
「貴女の胸を大きくしたいなら黒竜王が”簡単”にやってくれるでしょう」
パウリナが監視対象者に近づき
「直ぐにして! 今すぐ!」
「待て、帰ってからな。今は龍人達の話しが大切だ」
機嫌を損ねたパウリナが仕方なくカマラダに聞き直した。
「カマラダさんを召喚出来ないのですか?」
「貴女達獣人族の魔素は少なすぎて、腕輪に魔素を貯めても神獣降臨が精いっぱいなのです。鍛え抜かれた獣人族の必殺技である”獣神変化”の最上級が神獣降臨なのだよ。過去に”それ”を出来た獣人は居ません。神獣降臨をすると様々な身体能力が飛躍的に向上し、大陸で貴女に勝てる者は居なくなるでしょう。必殺技もいくつかありますしね。」
うなずくパウリナ。
カマラダから神獣降臨の説明と、魔素の扱いに様々な魔法の伝授を受けて上機嫌の新妻だった。
「それから今後は、
カマラダから言い渡された肩書きに
「凄いよ、パウリナ! 聖戦士だって!」
「うん!」
パウリナの事だが自分も凄く嬉しかった監視対象者だった。
「モンドリアン、そろそろ行くぞ」
そしてバレンティアと棘城の話をしようとしたら、基地に食べ歩きに行く気満々のフィドキアが催促してきた。
「その件だけど、バレンティアと話したいから明日にしないか?」
「何! 約束が違うぞ!」
「まぁ待てフィドキア、こんな事も有ろうかと用意した物があるからそれを食べてくれ」
むくれたフィドキアだったがラソンに大皿を用意してもらい、そこに出したのは昨日の披露宴に出された獣王国の料理だ。
「沢山持って来たから食べてくれ」
“オヤツ”を食べ終わりラソンが片付けている時カマラダに聞いてみた。
「なぜ今回パウリナに龍人の腕輪を授けたんだ?」
「彼女の意思とは関係無く棘城に10年間も睡眠状態で保管されていたのですが、彼女の10年は我ら龍人の数万年に匹敵するのです。コラソンからのお願いも有りましたから、我が眷族で有れば力を分け与えようと思っていたのです」
「なるほど。パウリナの10年も無駄では無かったか」
「無駄ではありませんよ。今こうして居るのはその10年が有ったからですしね」
ラソンの思いやりだった。
そこは監視対象者とパウリナの婚姻式で、祝福に訪れた来賓を招く謁見会場だった。
「みんな、実はもう1人どうしても合わせたい者がいるので呼ぶけど良いか? この国にとって、俺にとって、パウリナにとって、運命的な出会いを
何も無い場所に忽然と現れた男は微笑んでいた。
(姫様。久しぶりだね)
ハッとしたパウリナはそれが念話だと直ぐに理解した。
(もしかしてコラソンなの?)
(ああ、そうだよ。ぼくも成長したんだよ)
駆け寄るパウリナ。
(立派になったわ。素敵よコラソン)
(ハハハッありがとう。ところで念話だと君のご両親が不思議がって見ているけど良いの?)
「コラソン! 無事で良かったわ」
手を取りあって話す2人。
「龍人の腕輪は気に入って貰えたかい?」
「ええっ本当にありがとうコラソン」
しばしパウリナとコラソンが想い出話しに花を咲かせていたが、続きは監視室でしようと提案を受けて納得した。
そしてコラソンから2人に提案を告げた。
「2人に紹介したい者がいます。その者は新たに作る棘城にとても役に立つと思う者ですが、良いですか?」
一同はうなづいた。
「では、この地域の妖精王を紹介しましょう」
「何ぃぃ! 妖精王だとおぉぉ!」
先代獣王が突っ込んできた。
「そっ、それはあの幻の島に居ると言うアレか!」
「ええ、そうです。では来てください」
再度、空間が歪み中からコラソンと同等の背丈の美しい女性が現れた。
妖精王の周りには羽の生えた小さな妖精が飛び回っており纏わりついているようにしか見えないが、警護しているのだと後から聞いた。
監視対象者の前に近づいて膝まづく。
「初めまして黒竜王様。私は聖妖輪廻華王のヴィオレタ・ルルディと申します。代々転生を繰り返し、棘王を見守ってきた妖精の主でございます。この度は棘王を滅ぼしていただいて誠に感謝しております。つきましてはお礼をしたいのですが何なりとお申し付けください」
紫色の巻き毛が胸部を隠すほど長く、薄紫の瞳が妖艶な面持ちで監視対象者達と同じ背丈になった背中には羽が無い。
「参ったなぁ」
いきなりそんな事を言われても新妻と相談するが特に欲しいモノは無く、ふと思った事を振り向きながら言ってしまった。
「妖精の”カラダ”って結構大きいんだね」
パウリナに言ったつもりが、驚いたルルディは思った。
(からだ! 私の身体を差し出せと言うのか!)
その場と”物がモノだけに”コラソンと念話していたルルディ。
(仕方ないですね。モンドリアンさんがそんな趣味だとは知りませんでしたよ。しかしながら良いでしょう。ルルディを好きにしてください貴男の
ニヤニヤと笑うコラソンが念話で監視対象者とパウリナに話していた。
「ちょっと待て、一体何の話しだ」
(モンドリアンさんの言霊はコラソンの名に置いて契約されました。今後聖妖輪廻華王ヴィオレタ・ルルディは貴男の性奴隷として従うでしょう)
「はぁぁ?!」
睨むパウリナ。
「ちっ、違う、俺は無実だ」
ヴィオレタ・ルルディは頬を染めて上目使いで監視対象者を見ていた。
そこからドタバタの騒ぎになるが、念話で聞かれたのがパウリナだけだから良かった。
周りには何を騒いでいるのか解らなかったらしい。
翌日にはアルセ・ティロと対面し、全員で聖魔法王国に見学しに行った。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
「ルルディ。お前の
「本当ですか? コラソン様」
「この塔は下界での職場としようかな。替わりの住家だが、モンドリアンさんが”お前の為に”わざわざ用意してくれた物だ」
「そっそんなぁ」
真っ赤になった妖精王を見て楽しんでいるコラソン。
「そこは、ここと同じく転移でしか行けない場所だけど、私とモンドリアンさんとルルディだけの秘密になったから」
そう言うと嬉しそうに微笑んでみせた。
「では早速だが行こう。おっと、言い忘れる所だ。その場所は三人で生活する場所になるので、寝室は私の場所と”2人の場所”は離れて配置するように」
見る見る内に真っ赤になるルルディを気にも留めず転移しようとするコラソン。
「では行くぞ」
2人でエスパシオ・ギガンテスコの別空間に漂う石作りの4階建ての建物の中に転移したのだった。
「ここは四階分有るし広いからいいな。しかし、無重力はイカン」
コラソンは建物の外に出て大地に面していた所に立ち、重力制御の魔法陣を使った。
すると中から「キャァ」と妖精の声がしたが気にせずに歩いて行く。
「これで暮らしやすくなるだろう」
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
僅かな時間差で龍国のテネブリスとアルブマに報告が入った。
「ロサァァァッ!! 何て事をしてくれたのぉぉぉ!!」
「でもお姉様、ロサのする事は”何でも”許してあげるのでしょう?」
「それとこれとは話しが別よっ!!」
「でもお姉様がそんな事を言うとロサが悲しむと思うわ」
「!!・・・ぬぐぐぐぐぅぅぅっ」
苦悶の表情でアルブマを睨むテネブリス。
「とにかく、あの2人を至急呼び寄せて!! 私は外郭に行ってくるからっ」
そう言い残して消えたテネブリス。
「ふぅ。お姉様も、ロサも、困ったものねぇ・・・」
Epílogo
10年分の秘宝と調整役のアルブマ。
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