第3話 東京テレビ局

「おい、目野下熊子。」

 私はフルネームでテレビ局の局長に呼び止められた。

「局長!? いい加減フルネームで名前を呼ぶのやめて下さい!?」

「俺に歯向かうとクビにするぞ? いいのか。」

「申し訳ございません。」

 局長はパワハラ最低野郎であった。

「おまえ企画書を出せ。」

「え!? いいんですか。」

「当たり前だ。おまえも局の人間なんだから。」

「あの局長。」

「なんだ?」

「いい加減、局の名前を決めませんか?」

「そうだな。日本テレビ局にしよう。」

「南極とか、北極もありますよ?」

「やめろ。それを言い出すと、郵便局、交響曲とか何でもいえてしまう。」

「それならヴァーチャル局とか、2、5次元局とかどうですか? 流行ってますよ。」

「やめろ。ここは異世界ファンタジーでもなければ、ライト文芸部でもない。働く人間のテレビ局だ。」

「でも、日本テレビだと4ちゃんと被りますよ?」

「それなら東京都局だ。これなら問題ない。そんな名前のテレビ局を知らないからな。」

 局の名前は、東京都テレビ局に決まった。

「あれ? なんかあったような。」

 7ちゃんだ。テレビ東京を逆にしただけだと気づく。もちろん愛称は東テレ。

「目野下熊子。」

「だからフルネームで呼ばないでください!?」

「局長の俺に歯向かうな!」

「申し訳ございません。」

 これはお約束。

「おまえに部下を2名つけよう。」

「おお! 私も部下ができる!」

「来年の新入社員の佐藤結月と鈴木蓮だ。」

「うわあー!? どちらもキラキラネーム世代!?」

 もうキラキラネーム世代が社会人になっているので、30才以下なんかはヤバイのがゴロゴロいる。

「後は任せた。」

 局長は去って行った。

「あ、局長の名前を決めるのを忘れた。まあ、いいっか。」

 私はどうでもいい人のことは考えない。

「宜しくお願いします。熊子さん。」

「熊子先輩、企画は何にします?」

「二人ともよろしくね。」

 佐藤と鈴木が仲間になった。

「企画は何にしよう? スマホの節約術とか、地球温暖化防止かしら?」

 昔、テレビ局に入社するのは厳しかった。

「私のお父さん、人事部の部長なんです。ちゃんとテレビ局とコネのあるアナウンサースクールに通って、形は整えました。コネ入社です!」

「俺のお父さん会社の大企業の社長で、この局のスポンサーをやっていて、父が息子をよろしくって言ったら、あっさり内定もらえました!」

「はあ・・・・・・。」

 私は言葉を失った。所詮、この世はコネと金である。実は、そういう私もコネ入社。

 つづく。

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