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最近出来た人気の寿司バーは昼夜問わずに客足が絶えない。今日のランチも、最後の2人をカウンター席に通して早々にクローズした。


そんな店内の中央に大画面のモニターが設置されていて、夜にもなればスポーツ観戦で湧いているのだが…ただ、今は昼。

スポーツの試合もないこの時間帯には、大画面にしては寂しい表情の乏しいアナウンサーが映し出されていた。


『先程入ったニュースです』


強ばった声のアナウンサーに、静かに食事を楽しんでいた客の視線が向けられる。


『特殊指定薬物"フラウロス"の服用者が逮捕されました。事件現場は小麦通りの住宅で…』


続きは聞こなかった。

代わりに音全てをかき消さんばかりの怒声が店内に響き渡った。


「死にたくなかったら大人しくしてな!!」


覆面の男達が拳銃片手に乗り込んできたのだ。


強盗である。


寿司バーは一瞬にして恐怖に包まれた。






椅子を降りろ、両手を胸の前に組んで1箇所に固まれ、跪け、通報なんてしてみろ、すぐに殺す!


カラフルな覆面で顔を隠した男達は3人。手分けして銃を突きつけ次々に客を脅していく。

わなわなと震えながら、あるいは恐怖で涙を浮かべながら、中には泣き出しそうな子どもを必死で宥める父親までもが、屈強な男達の前に両手を上げ、1箇所に集められていった。中には奥から引きずり出された料理人の姿もある。

店にいる誰もが、恐怖を顔に浮かべながら覆面達の足元に座らされていた。

ただ、最後に通されたスーツ姿の男女を除いては。


カウンター席に座る1人はオリーブ色の目をした20代前半の女。こんな状況の中でもパクっと、寿司を頬張る。ただ舌鼓を打ったのは一瞬で、不服そうに眉を歪めた。


「アレン、見てよ。またインタビューを受けるのはキース、いつだってそうだわ。記者も飽きないのかしらね」


と、大画面に映し出される刑事課長を忌々しげに箸で指す。


『特殊指定薬物の犯罪は人の道を外れています。悪魔だと例える人も居ますが僕にはそうは思えません。こんな事が出来るのは、秩序を知らない獣です』


アレンと呼ばれたのは彼女の隣に座る長身の男。20代半ばの彼はつまらなそうにお茶を流すと、「知らないんですか、ナターシャさん」と彼女に言う。


「刑事課長は人気なんですよ。非公認のファンクラブがあるくらいなんですから」

「ファンクラブだあ?」

「そう。結構な人数が所属しているようで」

「おい!お前ら!!」


異様な空気感を割いた怒声。声の主である筋骨隆々の赤マスクは、足元に居る人質を半ば蹴飛ばしながら彼らのいるカウンターへ躍り出ると、


「集まれって言ってんのが聞こえねぇのか!」


2人が眺めていたモニターを撃った。


バンッ!と

耳が聞こえなくなるほどの音は銃声から始まり、破壊音にそして悲鳴。

鉛玉を打ち込まれた火花を散らせ暗転し床に叩きつけらた。モニターは甲高い音を立てて割れ、ガラス片が舞いう。怯えた人質達の悲鳴がナイフのようにつんざいた。

不協和音の刃物が耳を襲う。だがそれらに入り交じり、ヒュウと、軽い口笛が吹かれたのを赤マスクの男は確かに聞き取った。

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