第3話 部内戦 前編

お昼休み

春と美月は道場でお昼ご飯を食べていた。

春が「うまい!やっぱお母さんが作る卵焼きは美味しいね」と卵焼きを頬張りながら言うと、美月は笑みを溢し「うふふ、良かったね春ちゃん」と言った。


春:「うん、でもどおしたの美月そんな難しい顔して。なんかあったの?」


美:「え、そんな顔してた?」


春:「うん、何か考えている感じがするけど」


美:「ごめん、今朝の春ちゃんとの一番の事で考えてた」


春:「あぁ、今朝の」と返事をすると美月は少し元気無さそうに、答えた。

美:「うん、今朝の一番私は何も出来なかった」それを聞いた春は美月の手を握り

「もお美月!そんなに考え無くていいよ。だってまだ、私と一番取っただけだよ。それにまだチャンスは有るしね」と励ますと美月は「ありがとう、春ちゃん」と返した。


2人はお弁当を食べ終え少し休憩してから、

上がり座敷から土俵の方に降り四股やすり足などの相撲の基本動作の稽古を始めた。

春と美月は昼休みに道場でご飯を食べ、その後基本動作の稽古をするのが日課だった。

2人はタオルで汗を拭いて更衣室で、制服に着替えてると春が「ねぇ美月、今日の部内戦何勝したい?」と聞くと美月は少し考え「まずは、1勝かな」と返事をした。


美:「春ちゃんは?」


春はその問いに意気揚々いきようようと答えた。

春:「私は全勝かな」


美:「大きく出たね」


春:「いいじゃん、それに目標は大きく無いと」


美:「うん、そうだね」

春が道場の時計を見ると「あヤバイ、そろそろチャイム鳴る時間だ」2人は急いで、制服に着替え道場の鍵を閉め、矢継やつぎばやに道場を後にした。


放課後

道場の稽古場には上がり座敷や土俵の清掃などをしている1年生達の姿が有った。

桜花高校女子相撲部の1年生は5人居る。

      三神 春

     天ノ宮 美月

      水瀬 優香

      空次うつぎ 香織

      雨音あまね 真

の5人だ。


5人は清掃を終えると、各々更衣室に行き体操着の下のズボンとパンツを脱ぎ3人と2人組を作り、白いまわしを締め合った。

5人が更衣室から出て来ると上がり座敷で座っていた真帆が5人の表情を見て「良し、準備はOKね」と言うと5人は力強く「はい」と返事をした。5人は整列し真帆が一呼吸置き言い出す。


真帆:「それでは今日の流れを説明するわ。まず準備運動と基本稽古を30分位行い、少し休憩を取り、そこから部内戦を始めます。

部内戦は総当たりで、取り組み表こちらで作ったので名前を呼ばれた方は土俵に入りなさい。行司は私が勤めます」

「ここまでで、何か質問は?」と聞くと5人は「無いです」と返事をした。

5人は準備運動と基本稽古を始めた。

準備運動と基本稽古を終え、休憩と土俵上の砂を慣らしていると、稽古場の出入り口の引き戸のガラガラっと引く音がした。

「あら、ごめんなさい遅れましたわ」と言って稽古場に入って来たのは久瀬 やよいの姿だった。それを聞いた5人は手を止め、やよいに挨拶するとやよいは「今日は思う存分力を発揮して下さいね」と返した。

そして土俵上の砂を慣らし終え5人は整列した。

その光景を見て真帆が「これより部内戦を始めます」と一括すると5人は土俵の周りに散らばった。真帆が「一回戦、東に空次うつぎ!西に雨音あまね!」と告げると香織と真が土俵に入り取り組みが始まった。

春と美月が取り組み表を見てると優香が喋りかけて来た。「春、美月ちゃん今日はよろしくね」


春:「うん、よろしくね優香」


美:「はい、よろしくお願いします優香ちゃん」


優:「で、私の最初の相手は」と取り組み表を見ると春だった。


優:「マジ!春じゃん。春、今日は負けないからね」と春に言い放つと春も負けじと「私も負けないから」と優香に言い放った。

優香の家も女子大相撲の相撲部屋で小学生頃の大会や中学生頃の大会などでは春と対戦することが多く、力も拮抗していた。

高校に上がる前の中学生最後の大会で優香は春に負けているので今日の春との一番は楽しみにしていた。

そして土俵上の取り組みが終わると真帆が

「次、東に三神!西に水瀬!」と告げると春と優香は「はい」と返事をし土俵に向かっていった。美月は土俵に向かう春に「春ちゃん頑張って」と言うと春は首を縦に振り返した。

2人は土俵に入ると足で土俵上の砂を慣らし

蹲踞そんきょして向かい合った。真帆が「構えて」2人は立ち春は太ももの所をパンパンと叩き、優香は頬をパンと叩き、気合いを入れて戻る。真帆が「手をついて、待ったなし」2人は仕切り線に手を付き、真帆が「はっけよい」と叫ぶと次の瞬間稽古場にはゴツと少し鈍い音が響き渡る。

両者の立ち合いは互角だった。春は優香のまわしを取ろうと腕を伸ばすが、優香は伸ばす腕を取りまわしを取られるのを防いだが優香もまわしを取ろうとするが防がれた。両者まわしの取り合いになっていった。優香がこののままじゃあ埒があかないと思い、優香はまわし捨て押しに転ずる。

春はそれに対応出来ずバランスを崩しかけそうになり立て直そうと思ったが遅かった。

優香はその隙を見逃さず春のまわしを引き体を開き上手出し投げを繰り出した。春は優香の勢いを止められず、そのまま土俵を割った。

真帆が「勝負あり」と叫ぶと2人は土俵の縁に立ち一礼し優香は勝ち名乗り受け、春は土俵の外に出た。

美月は春の近くに行き「お疲れ様」と春に声を掛けた。

春:「負けちゃた」


美:「うん、観てたよ」


春:「あぁ、悔しい!悔しい!」と言ってると優香が春の所に行き、「春、はいこれ」と手に持ってるスポーツドリンクが入ったボトルを春に差し出す、春はそのボトルを手に取り「ありがとう」と返しスポーツドリンクを飲んだ。

春は「次は勝つから」と優香に告げると優香は少し微笑み「うん、でも次も私は負けないから」と返した。

真帆が「次、東に天ノ宮!西に雨音!」と告げると春は美月の顔見て、「次だね、美月」と言うと美月は「うん、頑張って来るね」と返し、土俵に向かった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る