第2話 春対美月

翌日

春は昨日の相撲観戦の興奮が冷めないのか、朝早く目が覚めてしまった。

春は机の上に置いてあるデジタル時計を見た。

「早い!まだ6時半か。」

春は二度寝するか支度をして学校に行くかで迷っていた。

「う〜んどおしようか?」

二度寝したら絶対に学校を遅刻する未来が見えた春は支度して学校に行く事にした。

「少し早めに行って道場の清掃などをして待ってるか」

春と美月が在籍している、桜花高校女子相撲部には朝稽古がある。

春は学校に行く準備を終え階段降りていると

1階の廊下を歩く人影が見えたので春は声をかけた。

「あ、お母さんおはよう!」その言葉聞いて廊下を歩いてた人影は歩みを止め春の方に体を振り向いた。

そこには、まわしを持った、春の母

三神 凛子の姿が有った。

春の家は女子大相撲の相撲部屋だ、建物は2階建で1階には、部屋に所属する弟子達が住んでいる。2階には、春の部屋と凛子の部屋それと空き部屋が数個有った。

まだ、関取はいない。唯一部屋の関取は凛子だったが祖母の他界により親方になった。

春の家は玄関が2つある表口と裏口だ。表口は弟子達が出入りする玄関となっていて玄関の表には【三神部屋】と書いてある大きいな看板が飾られていた。裏口は家族出入りする玄関となっている。


母:「おはよう、春」


母:「今日は早いじゃない」


春:「うん、昨日の相撲観戦で興奮しちゃって早く目が覚めちゃたんだぁ」


母:「へぇ、そうなんだ」


春:「うん、お母さんはこれから稽古?」


母:「そお、これから朝稽古よ。そうだ、あんたちゃんとうちの子達にも挨拶してから学校に行きなさいよ」

それを聞いた春は「はーい」と返事をし1階に降り、1階の奥にある稽古場に向かった。

春が稽古場を覗くとそこには、黒いまわしを締め稽古用の羽織を着た数人の女子力士が箒やジョウロを持ち土俵や土俵の周りを清掃し

朝稽古の準備をしていた。

春は稽古場に入り元気良く「おはようございます」と挨拶すると女子力士達は手を止め「おはようございます、春お嬢ちゃん」と気持ち良く返してくれた。

春は少し照れながら「お嬢ちゃんはやめて」と言た。

すると、稽古場に凛子が入って来て

「よおーし朝稽古を始めるわよ」と一括すると場の雰囲気が一気に引き締まった。

それを聞いた春は凛子と女子力士達に向かって「行ってきまーす」と挨拶をし裏口の玄関から元気良く飛び出して行った。


春が学校に着くと一目散に道場に向かっていた。すると、道場の近く来るとバチン・バチンと音がしていた。


「え、何?」少し首を傾げながら道場の中に入り土俵がある稽古場を見てみるとそこには、稽古場の隅で四股を踏んでいる美月の姿が有った。

春は少し驚いた顔をし「美月!」と呼んだ。

美月は四股を止め「あ、春ちゃんおはよう」と挨拶すると春は戸惑って「あぁ、おはよう」と返した。


春:「てか何でいるの?」


美:「春ちゃんこそ今日は早いねいつもは遅刻するのに」


春:「え、美月はいつもこんなに早く来てるの?」


美:「ううん、今日はいつもより早めに来たよ」


春:「やっぱ、昨日の相撲観戦で」


美:「うん刺激を受けて早く来たんだ」


春:「じゃあ、まだ時間有るし一番か二番ぐらい取ろうよ美月」


美:「うん、でも行司が居ないよ」


春:「あ、どうしよう」

春と美月が困っている所に稽古場の出入り口の引き戸が、ガラガラと引く音がした。

「あら、2人共早いのね」と言って稽古場の中に入って来た。

春がその姿を見て「真帆先輩」と叫んだ。

稽古場に入って来たのは春達の先輩で2年生の倉地 真帆で桜花高校女子相撲部の副部長である。

2人は真帆に挨拶を済ませ、春がすかさず「真帆先輩行司をやってもらえますか?」と聞くと真帆は土俵や土俵の周りを見て「綺麗ね、これは2人が清掃してくれたの?」と聞くと春が「いいえ、ほぼ天ノ宮さんが私は土俵の周りを少し履いただけです」と言うと真帆は「そお、天ノ宮さんが土俵の清掃を?」と

美月に聞くと「はい」と答える。

真帆は、一呼吸置き答えた「いいわよ行司やってあげるわ、清掃してくれたご褒美よ」それを聞いた2人が「ありがとうございます真帆先輩」とお礼言うと真帆は少し照れながら「早く支度をしなさい、皆んな来ちゃうわよ」2人は元気良く「はい」と返事をし笑みを溢しながら道場の更衣室に向かった。


美月はもうすでに体操着を着ていたので春は素早く体操着に着替えた。

そして2人は下のズボンを脱ぎ白いまわしを締め合って更衣室を出る。

稽古場の隅で準備運動し、ジンワリ額に汗をかいたところで、春が「じゃあ取ろうか」

それを聞いて美月が首を縦に振り「うん」と返事すると2人は土俵の中に入る。

東に春、西に美月が入っていた。

真帆が「構えて」2人は蹲踞の状態から立ち上がり春は土俵の砂を足で慣らし、美月はパンパンと手を叩きまた、蹲踞の状態に戻った。真帆が「手をついて、まったなし」2人が仕切り線に手を付くと真帆が「はっけよい!」と叫ぶ、その瞬間2人が立ち上がり2人の肩がぶつかり合う美月は少しよろけて土俵の中央から後退してしまう。春は美月のまわしを取ろうと腕を伸ばし、美月の右上手のまわしを取りそのまま投げに転じようとしていた。

美月はまわしを裁こうとするが裁けずその瞬間に春は上手投げが炸裂し美月は土俵上に転がされた。

真帆が「勝負あり」春が美月に手を差し伸べると美月はその手を取り立ち上がった。

2人は土俵の端に立ち一礼し春は勝ち名乗りを受け、美月は土俵の外に出た。

美月は息を整えながら「何も出来なかった」と呟くと春に対し「春ちゃんもう一番」と申し立てるが、春は「私はいいけどもう時間だよ」と返事をし美月が稽古場の壁掛け時計を見ると7時45分を指していた。

真帆が美月の近くに行き言った。

「天ノ宮さん熱くなるのはいい事ですが、ルールは守らないとね」美月がそれを聞いて、しょんぼりしながら「はい」と返事をした。そして他の部員達も支度を終え部員達が土俵上に並んでいた。

真帆が「皆んな揃ったわね」と言うと春が「いいえ、部長が来てないです」と返事をすると真帆は「やよいちゃん(部長)はいいの日直の仕事が有るから朝稽古には来れないと連絡があったわ」と返した。

真帆は一つ咳払いし注目集めた。そして真帆は切り出す「新体制になってから1ヶ月ちょと経ちましたそこで、1年生だけの部内戦をしたいと思います。この部内戦はレギュラー争いとかでは無いので、緊張なさらず取り組んで下さいね」と締めた。

真:何か質問は?

春が手を挙げ「真帆先輩その部内戦いつやるんですか?」

真帆は少しにやけて「今日の放課後よ」と返事をした。

それを聞いた1年生5人は驚きを隠せなかった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る