土俵の華

葉月空

第1話 女子大相撲観戦

「ハッケヨイ!ノコッタ!ノコッタ!」


その言葉が館内中に響き渡っていた。


ここは、新都にあるクラマエ国技館だ。


新都は相撲が盛んで、学校の体育の授業は相撲が必須科目になってるところだってあるそうだ。

その中でも女性が相撲を取る、「女子相撲」が人気を博している。


年に6回開かれる女子大相撲や小中高の各大会などが開催されており、テレビ中継やテレビ番組での特集を組まれるのはもちろん。国技館は全日程で満員御礼の垂れ幕が下げられ大会の方は、会場の観客席は全て埋まってしまうほどの人気ぷりだ。


女子力士の格好は髪型はショート人はそのまま、長い人はポニーテールにするのが決まりだ。上は通気性のいい着物に似た薄い羽織を着て、下はまわしのみを締めて大会や大相撲に出場することになっている。




「すごい迫力だね!間近で見る相撲って」

少し興奮気味に喋っているのは、新都立桜花高校に通う三神 春だ。


「うん、そうだね」と返事をするのは、春と同じ学校に通う天ノ宮 美月だった。


2人は女子相撲部に所属している。


今日は部活は休みで、春の提案で女子大相撲の観戦に来ていた。


「ねぇねぇ、美月もうすぐだよ」


「うん、そうだね春ちゃん」


2人が楽しみしている結びの一番が始まろうとしていた。


土俵上には呼び出しがいて、今から相撲を取る力士の名前を呼んでいた。

「ひーがーぁーしーらんーぎくー」

「にぃーしーぃーももーかー」

呼び出しが土俵から降りると、呼び出された2人の女性力士が土俵に上がってきた。

そして2人は取り組み前の仕切りを行っていた。

館内では2人の出身部屋や番付の地位などの場内アナウンスが流れていた。


「美月はどっちが勝つと思う?」

美月は春の質問に少し考えて、答えた。

「私は、乱菊関かなぁ、春ちゃんは?」

春は興奮を抑えながら答えた。

「私も美月と一緒で乱菊関かなぁ」

春は興奮しながら理由も述べる

「桃華関は、先々場所と先場所は乱菊関に勝ってるんだけど」

美月がそれを聞いて返す。

「じゃあ、桃華関じゃあないの?」

春は少し声を荒らげながら答える。

「違うの美月、だって乱菊関は横綱なんだもん。それに今場所はやってやるぞと言う意気込みで頑張ってほしいし」

美月は少しキョトンとした顔で返す。

「春ちゃん落ち着いて。うん、そうだね私も横綱だから乱菊関にしたんだし」

美月は心の中で思う最後は理由じゃなくて願いだねと。


そうこうしてる内に土俵上では淡々と仕切りを行っており、2人は最後の塩を撒くため土俵の外に散らばっていた。

2人は塩を撒き終えると手に付いた塩を取ると、気合いを入れるためまわしを1・2回「パン、パン」と叩いた。

春と美月は土俵上に釘付けで固唾を飲んで見ていた。

行司が「手を付いて、まったなし」と言い

2人は仕切り線に手を付き行司が「はっけよい!」と叫ぶと、すると次の瞬間2人は同時に立ち合った館内には「ゴツ」と言う鈍い音が響き渡る。桃華が少しよろける形になり乱菊が立ち合いを制した形になった。乱菊はそのまま押し桃華は何も出来ず土俵を割った。


その取り組みを見ていた美月が少し笑みを漏らしながら呟いた。


「すごい電車道だ」


行司が「勝負あった」と叫ぶと、2人は指定の位置に戻り、一礼して乱菊は勝ち名乗りを受け桃華は悔しそうな顔浮かべながら土俵を降りって行った。

こうして、女子大相撲の五月場所初日の全日程を終えた。


帰り道春は興奮が冷められ無いまま、美月に言った。

「美月、相撲しよう」

美月はまたキョトンとした顔で返す。

「え、今から?」

「うん」と口を滑らせそうになったが、少し冷静になって「ううん今日は遅いから帰る」と。

「美月、明日からまたキツイ稽古が始まるけど頑張ろう」

「うん、ありがとう春ちゃん頑張ろうね」

それぞれ今日の事を思いを馳せて帰路についた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る