◇真朱色のドレス

 結婚したのは25歳の時だった。


 今はジミ婚などもあり、籍だけ入れる形もあるし、多分、今のわたしが過去に戻るなら、そちらを選ぶと思う。


 ただ、その頃のわたしは、それなりに結婚式に夢もあって、特に花嫁衣裳には憧れていたし、一世一代だと気合いも入っていた。


 勿論、予算は限られている。だから貸衣装。

 それでもその中で精一杯、装いたかった。


 その頃のお色直しのパターンは

(挙式)白無垢→(披露宴入場)色打掛→(お色直し)ウェディングドレス

 が多くて


 わたしもこの流れだった。

 実は試着して、すごく好きだったけど、結局着なかったドレスがあった。

 それが真朱色しんしゅいろのドレス。


 全体的にシンプルでAライン。無地の真朱色でポイントは両袖の薔薇ばらの花。

 他にレースや飾りは無い。

 まるで薔薇の精のドレスみたい、と思ったのを覚えている。


 それでも花嫁らしい純白のドレスが、やっぱり着たくて、真朱色しんしゅいろのドレスと迷った挙句、純白を選んだのだけど。


 最後まで迷いに迷っていたからだろう、貸衣装屋さんがポラロイドカメラで写真を撮ってくれた。


 このポラロイド写真、ずっと大切にしていたのだけど、いつの間にか何処かに紛れ込んでしまった。


 探せばあるかもしれないけれど、多分、もう探さない。

 想い出の中にあった方が美しく、いつまでも鮮やかなものもあるから。


 あの薔薇バラの精のようなドレス。

 着ることはなかったのに今も鮮明に心に残る真朱色しんしゅいろのドレスは、あの日に残してきた二度とは戻らない、わたしの愛のようにも感じられて……。


 ◇


【真朱】

朱色とは元来は天然赤色顔料辰砂の色であり、色名としての朱色は本来この色をさす。しかし、後に硫黄と水銀から人工顔料の銀朱(バーミリオン)が作られたため、天然顔料としての朱の色であることを強調する場合には真朱(しんしゅ)・本朱(ほんしゅ)という。朱肉にも古くは真朱が用いられていた。


銀朱よりも赤みの強い深い色合いである。

 *****『Wikipedia』より引用

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る