第24話 吸血鬼の嫉妬
泣き声が聞こえる。
誰かが、古城の前で泣いている。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
茨が囲み、中には入れない。
「どうしよう……。どうしよう……」
あたしの足が動いた。彼女に近づく。
「助けて、誰か助けて……」
あたしの手が伸びる。彼女の肩に触れる。
「誰か」
彼女が振り返った。
「 助 け て ! ! 」
骸骨の顔を向け、あたしに叫んだ。
「っ」
ベッドから落ちた。メニーがぱっと目を覚まし、あたしを覗き込んだ。
「テリー、大丈夫?」
「……」
「可哀想に」
あたしの手を掴み、ベッドまで引っ張り上げる。
「まだ眠れるよ。起きる?」
「……寝る」
「うん。まだちょっと早いもんね」
「最悪」
手の甲を額につける。
「夢見が悪いわ」
「先に寝ちゃってごめんね?」
「全くよ。お姉様を待たない妹がいるとは思わなかった」
「起きてようと思ってたんだけど、寝ちゃった」
「うるさい。言い訳なんか聞きたくない。……はあ」
「……大丈夫?」
(あの城を歩いてるせいかしらね)
夢にまで、あの古城が出てくるなんて。
(それに、金縛りにあったみたいに体が重くなって……ん?)
ドロシーが間抜け面であたしの上に丸くなって寝ていた。
「……」
寝返ってみる。ドロシーが移動した。寝返ってみる。またドロシーが移動した。こいつ……!
(ベッドから落ちても、落ちなくても、あたしを枕にしてやがる!)
「ふんぬ!」
「あ」
「ふぎゃっ!」
ドロシーを地面に落とし、あたしはシーツに潜った。
「おやすみ」
「お、おやすみ。テリー……」
「あーあー、昨晩ホットミルクを出し、魔法をかけてあげた親切な恩人に……なんて仕打ちだ!」
「来てほしい時に来てくれない役立たずの魔法使いがよく言うわよ」
「結界張られてるって言ってるだろ!」
「朝からわめかないで。うるさい。黙って」
「あんだとこらぁー!」
「やんのかこらぁー!」
「二人とも、穏やかに! ……もう」
隣からメニーがあたしを抱きしめた。
「テリーも、枕にされたくらいで怒っちゃ駄目」
「お前はいいわよね。添い寝だけで済んで。あたしは枕よ。猫の枕よ。何なのよ。あいつ」
「ドロシー、ソファーで寝てくれる? ごめんね」
「いいよ。メニーがそう言うなら。ソファーも寝心地いいからね」
「は? ……メニー、今の聞いた? 差別だわ。あいつ、あたしに対する態度と、メニーに対する態度、全然違うと思わない? 最低だわ。最低な魔法使いだわ」
「差別じゃないよ。区別だよ。大体、差別主義者の君に、何も言われたくないね」
「メニー、どう思う? 死刑にするならあの役立たず魔法使い一択よ!」
「よしよし」
「ああ、もう最悪。寝る!」
メニーの胸に顔を埋めると、メニーが微笑んだ。
「時間になったら起こして」
「うん。わかった……」
「……何?」
「や、だって、なんか……」
メニーの頬が、ぽっと赤らんだ。
「夫婦の……朝みたいだなって……」
「……今日も脳みそお花畑で羨ましいわ。メニーちゃん」
あたしが抱いてるのは布団の中のお前が温かいからよ。それ以外の理由なんてない。
「いいから時間になったら起こして、寝坊が一番良くないんだから」
「はい。テリー……」
「すやぁ」
「……はあ。……今日も愛してる。テリー……」
メニーがあたしの体を抱きしめ返した。
(*'ω'*)
乗馬の服装に着替えたあたし達が馬の前に並ぶ。
「やあ、諸君。今日は乗馬の授業だ。昨晩はよく眠れたかい?」
「アルテ、立ったまま寝ないの!」
「グワー!」
「くう……」
「馬はとても臆病で自由な生き物だ。そして、我々の友達だ。いいかい。怖がってはいけない。仲良くなるつもりで乗馬を楽しむんだ」
「バルザローナ先生、いつもそう言うけど、太ももどうなってるのかしらね」
「乗馬の次の日は筋肉痛が半端ないのよね」
「乗馬だなんて素晴らしいわ!」
ノワールがメニーに指を差した。
「メニー・エスペラント! どちらが華麗に馬を乗りこなせるか勝負よ!」
「ノワールお姉様の乗馬経験を舐めない方がいいわよ!」
「た、楽しく乗ろうよ……」
「そうよ。ノワール。馬に蹴られたら一溜まりもないんだから★」
「おー、よしよし、良い子、良い子」
ラビが撫でると、馬がラビの頬を舐めた。
「うふふ! くすぐったい!」
あたしは目の前の馬を見た。馬があたしを見ずに、眠たそうに欠伸をしている。
(……この馬、やる気なさすぎじゃない? ねえ、あんた、あたしを乗せる気ある?)
馬がその場で横になった。
(ああ、これは駄目な馬だわ……)
「バルザローナ先生! わたしの可憐な乗馬、いかがですか!?」
「おお、とても良い感じじゃないか。ノワール・カラー」
「ノワールお姉様、とても素敵ですわ!」
「……ごめんね。大切な人の為なの」
メニーが馬を撫でた。
「乗せてくれる?」
馬が大人しくその場で待つ。メニーが乗ると、ゆっくりと進みだした。
「ありがとう」
「ノワールお姉様、見て! メニーさんと馬、まるで絵のよう!」
「ぐっ! なんてこと! こうなったら、競争で勝負よ!」
メニーとノワールの馬が並んだ。
「ブランが立ってるところまで馬を走らせ、先にゴールした方が勝ちよ!」
「競争はあまり良くないと思うよ。ノワール」
「負けるのが怖いのね! いいわ! スレッド、お願い!」
「ごめんね。メニー。多分これ一回でノワールも満足すると思うから」
スレッドが腕を下ろした。
「よーい……」
腕を上げた。
「スタート!」
「行けー!」
ノワールが蹴ると馬が走り出した。
「おーっほっほっほっ! メニー・エスペラント、わたしの乗馬はいかがかしら!」
ノワールが横を見ると、メニーを乗せた馬が華麗に走り、ノワールの馬と並んだ。
「こ、この勝負だけは……負けるものですか!」
ノワールが更に馬を蹴った。
「早く! さあ、早く走るのよ!」
「ああ、いけない、そんなに馬を興奮させたら!」
バルザローナ先生が止めに入ろうとした瞬間、ノワールの馬がのけぞった。
「あっ」
ノワールが手綱を離し、馬から落ちた。
「きゃっ」
「あっ」
「ノワール!」
クラスメイトが悲鳴を上げ、ノワールが地面に落ちる――寸前で、用務員の男が地面を滑り、ノワールを抱き留めた。
「っ」
「ふう。危ないところだった」
「ちょっと、貴方! どこ触って……」
ノワールが顔を上げ――男の顔を見た。
「大丈夫ですか?」
「え……」
リオンの笑みに、ノワールの心臓が射抜かれた。
「手綱は離してはいけない。こんな風に落ちてしまうからね」
「あ……あ……」
「ノワールお姉様!」
「ノワール・カラー、大丈夫か!?」
バルザローナ先生とクラスメイトがノワールと用務員の男に駆け寄った。
「わ、わたしは……大丈夫……。でも、この方が……」
「ああ、自分も大丈夫です。仕事がてら、お嬢様をお守りしただけですから」
「レオ!」
用務員の男がレオを呼んだ。
「何をしてる。早く来い!」
「それでは、さようなら。お嬢様。お気をつけて」
「あ……」
レオが用務員の男の元へ走った。
「我々はお嬢様に近づいてはいけない。初日に話しただろう」
「すみません。馬から落ちそうになっていたので」
(あら、お兄ちゃんが叱られてる。妹がちょっと助けてあげようかしら)
用務員の男の前に立つと、男が足を止めた。
「あら、こんにちは。レックスさん」
「……」
「その方、馬の扱いが得意なの? あたしの馬、全然言うこと聞いてくれないの。なんとか出来ない?」
馬はその場で寝そべっている。レオが腕を組んだ。
「ああ、これは駄目だな。きっとこの馬にとって、今この時間が自由時間なのさ。好きにさせてあげてください」
「ああ、そう。わかりました」
あたしはレックスに目を向けた。
「ハンカチは使ってくださってる?」
「……行くぞ。レオ」
「それでは、お嬢様。失礼いたします」
レオがあたしにウインクし、レックスと共に去っていく。振り返ると、目をハートにさせたノワールが腰を抜かせていた。
「なんてイケメンなの……。まるで突然現れた王子様……」
「どうしたの!? ノワールお姉様! しっかりして! ああ、どうしましょう! 頭を打ったのかもしれない!」
「びっくりしたわね」
「馬を乱暴に扱うからよ」
「ちょっとは反省しなさいよね★」
「ああ、心臓がおかしくなりそう……。いいえ、もうおかしくなってしまってるんだわ。でも……用務員の男性だなんて……いけないわ。ノワール。こんな想い、いけないのよ。ああ!」
「ああああああああ! ノワールお姉様が、馬から落ちたショックで、気絶を! ノワールお姉様ぁああああ!!」
「少し休ませたら? ね、アンセル」
「グワグワッ」
「昼寝してるアルテの隣で寝かせておけばいいよ」
昼寝する生徒がまた一人増えてしまった。
上手に馬に乗れたクラスメイトは、楽しそうに馬に走ってもらう。
「楽しいー!」
「きゃはは!」
「乗馬に慣れてきたら、柵跳びに挑戦してごらん」
バルザローナ先生が柵を設置している方を手で差した。
「挑戦したい人はいるかい? 上手く飛べたら点数を与えよう」
「柵跳びは流石にね……」
「乗馬しながらチーズを食べてる方が良いわ」
「トゥーも自信ない……」
「……お前」
リトルルビィが馬に問いかける。
「いける?」
馬が緩やかに歩き出した。
「上等。いいね。その姿勢、嫌いじゃないよ」
学園の生徒が窓を眺めた。グラウンドで乗馬をしているあたし達を眺める。
「先生、こいつがやりたいってさ」
「おや、ルビィ・ピープル。その勇敢さを評価しよう」
「いつ行っていい?」
「好きなタイミングで」
「わかりました。じゃ、行きます」
ルビィが馬を蹴った。馬がのけぞり、勢いをつけて走っていく。クラスメイトが息を呑んだ。リトルルビィが手綱で馬を叩いた。馬が柵を飛んだ。クラスメイトが声を上げた。窓から見ていた生徒が目をハートにさせた。また柵を飛んだ。また走り、助走を付け、高く飛ぶ。クラスメイトが拍手をした。バルザローナ先生が頷いた。
「素晴らしい。ルビィ・ピープル。加点を与えよう」
「流石ルビィ!」
「お見事★!」
「ノワールお姉様がいたらいい勝負になっていたのに、非常に残念だわ。でも確かに素晴らしかった! 最高でしたわ!」
「すごいね。リトルルビィ」
乗馬したままリトルルビィとメニーが近づいた。
「どうやったの?」
「別に。こいつに聞いたらやれそうだったから」
「馬とも相性良いんだね」
「何年城の馬見てきたと思ってんの」
「うふふ! 確かに!」
「少しはかっこいいところ見せれたかな」
ルビィが周囲を見回し、眉をひそませた。
「……あれ、テリーは?」
(はああ……何よ。こいつ、まじで言うこと聞かないじゃない)
馬が寝たまま屁をした。
「うわ、くっさ。お前、最低。あたし、これでもお嬢様なのよ?」
馬がくしゃみした。
「エメラルド城の馬の方が躾がなってるわ。ねえ、乗馬くらいさせてよ」
「ヒヒーン」
「あ、駄目だ。こいつ」
「あれ、ロザリー、何やってるの?」
「ん」
グースとアンセルを乗せた馬が近づいてきた。
「馬が言うこと聞いてくれないのよ」
「すごく寝そべってるね」
「これは乗馬出来ないで終わりそう……」
「さっきの見てた? ルビィのやつ」
「え? 何? なんかしてたの?」
リトルルビィの脳天に雷が落ちた。
「わ、もったいなっ! すごかったのに!」
「何が?」
「そこにある柵、馬で飛び越すのやってたんだよ!」
「……あ、そうなの。すごいわね。……この馬眺めてて、見てなかった」
リトルルビィの頭にショックという名の石が落ちてきた。
セーラを乗せた馬が近づいてきた。
「ちょっと、ロザリー、何やってるの?」
「馬が寝てるの見えない?」
「その馬、ロザリーに懐いてるのかもね。だって、物凄くくつろいでる」
「舐めてるの言い間違いね。こいつ何も可愛くない」
リトルルビィが馬から下りた。馬がリトルルビィに目を向けた。どんまい。
「馬の観察レポートでも出そうかしら。見てる分には結構面白いわ」
「ぐすん!」
「うわ、また鼻鳴らしてきた」
「やっばー。ロザリーが馬に舐められてる! あははは!」
「グース、笑い事じゃないってば!」
「アンセルもおかしいって。ね、アンセル」
「グワグワグワグワッ!」
「鳥にまで笑われるなんて屈辱以外の何者でもないわ……」
「セーラ様もやってきたら? 柵飛び」
「わたしは落ち着いて乗ってる方が好きなの」
――強風が吹いた。セーラが帽子を押さえ、グースはアンセルを抱きしめる。
「きゃっ」
「うわ、アンセル、大丈夫?」
「グワー」
「びっくりした」
「今の風、何?」
「……あれ?」
セーラがきょとんとする。
「ロザリー?」
そこには、寝そべる馬しか居なかった。
(……びっくりした)
リトルルビィがあたしを抱きながら木の上に座っていた。
「あんた、何やってるの?」
「誘拐」
「騎士が貴族のお嬢様を誘拐するんじゃないの」
「じゃあ……拉致」
「同じ意味合いよ」
「わたしさ、すげーかっこいいことしてたんだ。見てなかったの?」
(……吸血鬼の耳で会話聞いてたわね? この子ったら)
あたしはため息を吐いた。
「ごめんね。馬を眺めててそれどころじゃなかった」
「皆は拍手してた。すごかったって」
「ああ、そうなの」
「メニーも、先生も、クラスメイトも、素晴らしい飛びだったって評価してた」
「ああ、そうなの。あんたは動物と仲良くなるの上手だものね。羨ましいわ」
「……」
「……ごめんね。見てなかったの。馬が寝そべりだして……結構面白い動きしてたから……そっちを見ちゃった」
「……」
「良かったじゃない。褒められて。あんた、大人になって褒められること増えたわね。この学園に来てから特にそう。爵位がなくたって、みんながあんたを褒めて、認めてる。良いことじゃない」
「褒めてほしい人に褒めてもらえないけどな」
きょとんと瞬きする。赤い目があたしを睨んでる。頬を膨らませ、しかめっ面。……思わず吹いてしまう。リトルルビィの片目がぴくりと動いた。
「変わらないわね」
「何が?」
「拗ねないの。妖怪ほっぺた風船お化け」
「んだよ。それ」
「あんた拗ねるといっつもそうよ。ぷくーって頬が膨らむの。ネズミみたいにね」
「拗ねてないけど」
「じゃあ、なんであたしをここに連れてきたの?」
「見てなかったから」
「理由になってないけど? 見てなかったからここに連れてくるの? じゃあ、見てない生徒全員木の上に乗せないと」
「……」
「いつぞやのハロウィンを思い出すわ。ソフィアやキッドよりもあんたが好きって言ったらあんたは喜んでた。で、アリスとルビィ、どっちが好きっていう質問に答えられなければ……」
「びゃああああああああああああああ!!」
「好きで争わないの」
「いやああああああああああああああ!!」
「どっちも好き」
「わたしがいいのおおおおおおおおおおお!!」
「はいはい」
「ぴゃああああああああああああああ!!」
「はいはい。好き好き。リトルルビィが好きよ」
「ぐすん! ぐすん! ……だっこして……。ぐすん!!」
「はいはい」
リトルルビィが顔をしかめさせた。
「また抱っこして慰めてあげよっか?」
クスクス笑いながら煽ると――リトルルビィがあたしの肩に顔を埋めた。
(ん)
「抱っこはいい」
リトルルビィの腕に、抱きしめられる。
「代わりに……抱きしめて」
「……ルビィ」
「やだ」
「まだ何も言ってないけど」
「やだ。聞かない。どうせわかりきったこと言うんだから」
「……」
「クレア一筋ね。はいはい。わかってる」
「……あんた、苦労するわよ」
「じゃあ突き放せば?」
「……メニーもあんたも、あたしにばかり酷よ」
「うん。じゃあ諦めて」
リトルルビィがあたしの首筋にキスをした。
「ちょっ」
「そろそろ飲まないと、血の匂いが消える」
リトルルビィがあたしのシャツのボタンを外した。
「ちょっとまっ……」
「テリー」
リトルルビィがあたしを見て、薄い笑みを浮かべる。
「危険な目に遭わないため。……ね?」
「……あんた、キッドに似てきたわね」
「育て親だからな」
(んっ)
リトルルビィに首を噛まれた。
「テリーの血は変わらない。いつまでもずっと甘くて……優しい」
ゆっくり溢れてくる血を舐められる。
「クレアに飽きたら言って。いつでもいいよ」
「……何が良いの?」
「答えようか?」
「いや、いい。野暮だったわ。聞かないでおく」
「そうそう。聞かない方がいいこともある。わたしの気持ちとかね」
(……まじでキッドに似てきたわね)
熱い舌が動く。
「……ん」
「くすぐったい? ごめんね。我慢して」
「……飲む、感じじゃないの?」
「うん。時間かけてゆっくり舐める」
「嫌な趣味を持ったわね。ルビィ」
「先に煽ってきたのどっち?」
「言っておくけど、あたしあんたよりずっと年上よ」
「そりゃそうだよ。出会った頃からテリーは手の届かない人だった」
だからこうやって、抱きかかえて、木の上に上って、誰も見られないこの場所で、独り占めするしかない。
「今だけテリーはわたしのもの。でしょ?」
「……あんた女の子にモテモテじゃない」
「興味ないし、あの子達が勝手にやってるだけ」
「ルビィ」
「テリーしかいらない」
「クレアに報告するわよ」
「テリーは言わない。だって、わたしに甘いもん」
「……」
「利用できるものは利用しろって、わたしを育てた奴が言ってた。だからわたしも利用する」
リトルルビィがあたしの手の甲にキスをした。
「テリーの気持ちを利用して、側にいる」
「……諦めるんでしょ?」
「もう諦めてるよ」
「それなら」
「側を離れるとは言ってない」
「……」
「ね」
「そういうとこ頑固よね……。あんた……。本当に……育て親そっくり……」
「……」
「わかった。わかった。あたしの負けよ。……っ、その舐め方は、ちょっと、……やめてくれると嬉しいんだけど……」
「……」
「こら、ちょっと……っ……もう……」
――メニーが辺りを見回した。
「……フロマージュ。お姉ちゃん見なかった?」
「え? ロザリーならあそこ……あら、どこ行ったのかしら?」
「そういえば、ルビィもいないわね」
「……はあ……」
メニーがここ最近で一番低い音の溜息を出した。
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