第32話 守りたいその笑顔



 メニーは、美しい女である。

 メニーは、この上なく清らかである。

 メニーは、素晴らしい美貌の持ち主である。

 メニーは、だれよりも可憐である。

 メニーは、だれよりも思いやりがある。

 メニーは、とても優しい乙女である。

 メニーは、とても誠実である。

 メニーは、人の笑う顔が好きである。

 メニーは、美しさに嫉妬された。

 メニーは、父親の再婚相手の家族に酷い目にあわされた。

 メニーは、不幸と戦える少女であった。

 メニーは、くじけず頑張った。

 メニーは、努力家であった。

 メニーは、頑張り屋であった。

 メニーは、人がいないところでよく泣いていた。

 メニーは、それでも負けない少女であった。

 メニーは、毎日灰を被った。

 メニーは、救いがなかった。

 メニーは、心が折れそうになった。 


 メニーは、恋をした。


 メニーは、やはりくじけなかった。

 メニーは、笑顔を大事にした。

 メニーは、人々から愛された。

 メニーは、秘密を持ってる。魔力持ちである。

 メニーは、王子さまと契約した。

 

 メニーは、報われない女である。


 メニーは、好きな人から嫌われた。

 メニーは、運が悪い女である。

 メニーは、だけどそれでいいと思った。

 メニーは、恋をしている。

 メニーは、この広い世界の中で、その人に出会えたことが、なによりも嬉しかった。

 メニーは、心のきれいな乙女である。


 メニーは、自分はとんでもない幸せ者だと信じている。


 メニーは、バカである。とんだ阿呆である。

 メニーは、頭がいい。頭脳派でもある。

 メニーは、悪い人間に引っかかる。惹かれてしまった。なぜなら好きになった相手が、とんでもない自己中心的な人物であった。

 メニーは、運がない女である。

 メニーは、その人物を好きになったところで、なにも得などしない。愛されることもない。好かれることもない。最初から利用されていただけ。

 メニーは、それでもいいと思っている。


 なぜなら、メニーの世界はその人物が全てだから。


 メニーは、他の人を好きになったほうが幸せになれる。

 メニーは、だれが見てもそう思うだろう。

 メニーは、それでも自分はとんでもなく幸せであると確信している。


 振り向いてもらえないのに。

 選んでもらえないのに。

 ちょっとだけでも、

 一秒だけでも、

 一秒のほんの隙間の間だけでも、

 その人物が自分を思ってることがあれば、

 それだけで天にのぼってしまうくらい嬉しくなってしまう。


 メニーは、救われないバカである。

 メニーは、もう少し自分に気遣うべきである。

 メニーは、それでもそれら全てを否定する。

 メニーは、きこえている。正しさの鐘の音が。

 メニーは、これが一番正しいことであると確信している。

 メニーは、迷いなく信じている。


 メニーは、その先にある願いを叶えるために動く。


 どんなに辛く険しい道だろうが、

 運命の歯車を狂わせることになるだろうが、

 全ては、

 その全部が、

 彼女の願い。



 テリーに、ずっと笑っていてほしい。




(*´∀`*)




「おかえりぃーー! メニーーー!」


 両手を握りしめられて、ぶんぶん振られる。


「あのね! あたしね! すっごくいいこと思いついたの!」


 手を引っ張られて、部屋に連れて行かれる。


「あたしたち、将来二人で田舎に行くのよ!!」


 この人はなにを言ってるんだろう。


「あたしとメニー! こーーーんくらい、大きなお家と牧場を持つの!」


 でも、なんだか楽しそうだと思った。


「二人でトラブルを解決するのよ! ね! いいでしょう! メニー!」


 子どもだったから、よくもわからず頷いた。

 でもそうしたら、この人が目をきらきら宝石のように輝かせて、すごく……ものすごく……嬉しそうに――笑うから。


「約束ね!」


 指切りげんまん。


「リオンさまが迎えに来るまで、仲良く暮らそうね!」


 お父さんがいなくても平気。

 お母さんがいなくても平気。

 この人となら、いつまでも一緒にいれる気がした。


「メニー!」



 テリーが、笑顔で言ったの。



「だぁーいすき!!」



 花が散って、舞って、空へ空へ飛んでいく。


 わたしの世界が変わった。


 目の前には、テリーの笑顔。


 テリーの花。


 満開のお花みたいな笑顔をもう一度見るためなら、


 テリーが、もう一度笑ってくれるなら、


 わたしは身を滅ぼしたって、


 宇宙だって一巡させてみせる。




 全ては、大好きなテリーのために。


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