第14話 飛びくらべ大会


 ピーターに頼まれたため花を求めて広場に行く。あたしはぼうっと広場にあった噴水を眺めていると、メニーがあたしに言った。


「お姉ちゃん、買ってくるからここで待ってて」

「うん。わかった」


(おつかいはメニーのほうが慣れてるだろうし、任せたほうが良いか)


 あたしは噴水をしげしげとながめた。


(なにを意味してるのかしら)


 ネコを抱えたみつあみの女の子の像が建てられ、周りから水が出ている。


(もしかして、若い頃の女神アメリアヌさま?)


 噴水に文字が刻まれている。「ずっとぼくの大事な友達」。

 眺めていると、またアトリの鐘が鳴った。


(あ)


 あたしはふり返る。メニーは花屋の店員と会話している。


(……ちょっとだけなら離れても大丈夫よね)


 あたしはアトリの鐘の方へ歩いてった。鐘が鳴ってるということは、なにかに困った人が鐘を鳴らしたのだ。


(どんなことで鐘を鳴らしたのかしら?)


「神父さま!」

「どう思う!?」

「この戦い!」


 ピーターが苦笑いを浮かべている。目の前には、三人の少年と一人の少女。


「だれが高く飛べると思う!?」

「おれのノミと!」

「おれのバッタと!」

「おれの飛びガチョウ!」

「ぜったいおれのノミだね!」

「いいや! おれのバッタに決まってる!」

「おれの飛びガチョウだよ!」

「昨日からずっとこんな調子なの」


 ませた口調の少女が、呆れたように言った。


「神父さま、わたし、競争はもうこりごり。平和に解決したいの。ひとつ、彼らに言ってあげて。無駄な争いなんてするものじゃないって」

「無駄な争いじゃないよ!」

「これだから女の子はだめなんだ!」

「まったくだ! 男の熱い戦いをわかってない!」

「わたし、熱い戦いなんてわからなくていいわ。のんびりリアルおままごとがしたいだけなの!」

「王子さまになってくすぐったくなることを言ったり、泥団子を食べるフリなんて、もうこりごりだよ!」

「するにしたって、おれたちの戦いが終わってからさ!」

「飛びガチョウってすげえんだぜ。神父さまも見たらすごいって思うはずだよ! 本当さ!」

「神父さま、なんとかして。わたし、もういや! 早くリアルおままごとをして遊びたい!」

「みんなストップ。お口をチャックして」


 四人がお口をチャックした。


「それだけ言うなら、今ここで飛びくらべ大会を開催しようじゃないか。星祭も目前の、良い余興だろ?」

「えー!」

「「さすが神父さま! よくわかってるぅ!」」


 不満げな少女をよそに、少年たちはそれはそれは喜び、ピーターが大会を開催した。通りすがりの粋な村人がラッパを鳴らしたのを合図に、少年たちがそれぞれの選手を出した。


 ノミは丁寧に人々におじぎをする。なぜならノミは人間によって生きながらえているからだ。ノミは普段みんなから血をもらっていることに感謝して、これからもよろしくねという意味で、ぺこぺこおじぎをしまくった。

 バッタは重そうな体つきと、身につけている緑のスーツをみんなに見せつけた。だけど油断しちゃいけない。彼は体の動かし方をマスターしている。意外と高く飛ぶかもしれない。そしてなにより、彼は歌が上手だった。その実力は、コオロギと歌合戦したほどだ。

 飛びガチョウは二匹と比べて、とても静かだった。それだけ考え深いのだと人々は言い合った。ふと、犬が近づいてきて、飛びガチョウの匂いをかいだ。そして仲間にこう言った。この飛びガチョウ、生まれがいいぞと。


 さて、こうして三匹の選手が揃った。勝負のルールは簡単だ。だれが、高く、飛べるか、だ。


 ピーターの合図とともに、ノミが自分を信じて高く飛んだ。ノミは、それはそれは高く飛んだ。だけど、そんなに高く飛んだら、一体ノミがどこまで行ったのか、人間の目には追えない。だからノミは場外となってしまった。ノミは高く飛んだけど、それを認める人間はいない。だって、目で追うことができないのだから! ノミはこう思った。認めてもらうためには体が人の目に見える必要がある。そうしてノミは外国の軍隊に入るため、アトリの村から出ていった。長い旅になりそうだ。

 バッタはノミの半分くらいしか飛ばなかった。調子が悪かったのか、ピーターの頭に着地した。ピーターが悲鳴を上げた。


「ひえっ!」


 飛びガチョウはなかなか飛ばなかった。飛ぶ気配すらなくじっとしていた。アトリの村人はこう思った。きっとあいつは飛べないんだ。犬は心配になった。体調を崩しているのかもしれない。気分が悪くなければ良いのだが。そう言って、犬がふたたび飛びガチョウに近づいて、匂いをかいだ。すると、途端に飛びガチョウは斜め上をめがけて大きくとんで、飛びくらべを不満そうに見ていた鐘を鳴らした少女の膝の上に着地した。少女は今日のリアルおままごとのシナリオを作っていて、ちょうどお姫さま役の準備をしていた最中だったので、とてもおどろいた。

 それを見て、ピーターが言った。


「一番高く飛ぶということは、つまり、お姫さまくらい地位の高い人まで飛びあがるということです。そこが、なかなか大事なところなのです。しかし、それを思いつくのには頭がいる。ところが、いま見ていると、この飛びガチョウは、頭のあることを見せてくれた。頭に骨があるというわけですね。よって、勝負は飛びガチョウの勝利!」


 人々が拍手をし、少年たちも拍手をした。とてもいい戦いだった。バッタは足をすくませて、いつものとおり歌うことにした。体がいる。体がいる。少女は飛びガチョウを持ち上げて、不満そうに言った。


「飛びガチョウは飛び跳ねるただの人形よ。飛ぶに決まってるじゃない」

「おれのノミ、どこ行った!?」

「おれのバッタ、逃げちゃった!」

「えい!」

「おい! おれの飛びガチョウ捨てるなよ!」


 少年たちがあわあわと手を泳がし、それぞれの選手をさがしはじめた。少女はまたませた口調でピーターに言った。


「ありがとう。神父さま。これでリアルおままごとができるわ!」

「お役に立てたかな?」

「もうばっちり! さあ、行くわよ! 三人とも!」

「王子さまはいやだ!」

「泥団子はいやだ!」

「相棒の飛びガチョウ、今日もいっしょに地獄のおままごとを堪能しようぜ……」

「行くわよ! 三人とも!」

「「はあ……」」


 一件落着し、ふたたびアトリの村に平和がおとずれた。ピーターがはあ、と息を吐き、ハンカチで顔をぬぐった。


「ああ。女神アメリアヌさま、お力を貸してくださり感謝いたします。はあ。……虫苦手なのに……」

「ピーター」

「おや、これはこれは」


 ピーターがあたしに振り返った。


「テリーお嬢さま、見ていたのですか?」

「あなたの仕事って大変ね」

「アトリに平和が訪れるなら、誇り高い役目です」


 ピーターの目がきょろりとあたしの周りを見回した。


「メニーお嬢さまは?」

「花を買ってるわ。待ってるときに鐘が鳴ったから、ちょっと見に来たの」

「そうでしたか」

「お姉ちゃん!」


 メニーが息を切らして走ってきた。花を持っている。無事に買えたのね。よかったわ。


「もう、どこに行ったかと思えば!」

「ん? なんで怒ってるのよ」

「怒ってないよ。心配したの! 待っててって言ったのに!」

「だって、鐘が鳴ったから」

「テリーお嬢さま、それはよくありませんね」

「え?」

「待つよう言われたのであれば、その場を離れる前に、一言メニーお嬢さまに言うべきです」

「ちょっと離れただけよ」

「テリーお嬢さま、なにもあなたを責めてるわけではありません。ただ、その行動が正しいとは言えないだけです。考えてみてください。あなたがメニーお嬢さまにここで待つよう言って、彼女の代わりに花を買ってました。ふり返ると、メニーお嬢さまがいません。どう思いますか?」

「……どこ行ったのかしらって思うわね」

「それで、あなたはどうしますか?」

「さがすわ」

「一言メニーお嬢さまがアトリの鐘に向かうと言ってれば、さがす必要はありませんよね? アトリの鐘に向かえば良いんですから」

「……」

「さあ、テリーお嬢さま」


 ピーターがきいた。


「正しくないのはだれですか?」

「……あたし?」

「正しくないことを認めたのであれば、メニーお嬢さまに言わなければいけないことがありますね」

「……なにを言うの?」

「ごめんなさい」


 ピーターが優しく言った。


「悪いことをしたら謝るのがマナーです」


(……でも、ママは謝る必要がないって言ったわ)


 あたしは貴族だから、目下の人間にごめんなさいを使うなって。


(……でも、あたし、昨日の夜は自然と口からごめんなさいが出た)


 メニーに許してほしかった。

 そんなときに、ごめんなさいという言葉しか出なかった。


(ごめんなさいは悪いことをしたら使う言葉なのよ)


 テリー、これはきっと、今のままではだめなことなのよ。だってメニーの立場があたしだったらって想像したら、不快な気分になったでしょう? 貴族のママじゃなくて、神さまに仕えてるピーターの言うとおりにしてみましょう。


 悪いことをしたら謝るの。


「……ごめんなさい。メニー」

「……うん」


 メニーがうなずいた。


「次から、気をつけようね」

「……わかった」

「さあ、一件落着です」


 ピーターが手を叩いた。


「デヴィッドに会いに行きましょう」

「花、これで大丈夫ですか?」

「ええ。素敵な花束です。ありがとうございます」


(……あたし、ごめんなさいって言葉、ママ以外にどのくらい使ってたかしら)


 ――悪いことをしたら謝るのがマナーです。


(……クロシェ先生が……アメリに言ってたかもしれない……。……あまり覚えてないけど……)


「テリーお嬢さま、行きましょう。そう遠くはありませんから」

「……はい」


 あたしは歩きながらしばらく考えた。ママはだれにも謝ってなかった。自分たちは身分が高いから、謝る必要はないって。そして、身分の低い人とは、必要以上のことで口を利くべきではないって。

 それが貴族のルール。そう教えられた。


(悪役令嬢の本のヒロインは、みんな貴族のルールを無視してた。それは前世の魂がもともと庶民だったからだって思ってた)


 でも、今考えたら……、


(やっぱり……ママが間違ってたのかも……)


 あたしは考えながら、ピーターとメニーの後ろをついて歩いた。そして……目的地にたどり着けば、おどろいて、あたしが考えてた頭のなかはなにもなくなって、真っ白になって、足が自然と止まったのだった。



(*'ω'*)



 デヴィッド・マルカーン。ここにねむる。


 あたしは墓の字を見て、あぜんとした。ピーターが花を添え、両手をにぎりしめる。


「兄さん、お二人が会いに来てくださった。……アーメンガードさまとアメリアヌさまも、時期にあいさつにくる」


 ピーターが立ち上がり、あたしとメニーにデヴィッドの墓を見せた。


「どうか、兄にごあいさつを」

「……お姉ちゃん」


 メニーに背中をおされながら、いっしょに墓の前に立つ。


(……うそ……)


 あたしがいた世界では、たしかにデヴィッドは母親の体調が悪いからという理由で屋敷から出ていったのよ。笑顔で手を振りながら、テリーお嬢ちゃま、お元気でって言って。


 いいや、ちがうのよ。テリー。この世界は、前の世界じゃない。

 この世界のデヴィッドは亡くなってるのよ。だからここに彼のお墓が立っている。


 秋の風がそよぎ、雑草がゆれる音がきこえると、なんだか胸が切なくなってきて、気分がだんだんおちこんできて、悲しくなってきて、あたしの目になみだがこみあげてきた。両手をにぎりしめながら、あたしは体をふるわせてデヴィッドの冥福を祈る。メニーがあたしの背中をなでた。


「お姉ちゃん、言わなくてごめんね」

「……いつから……?」

「お姉ちゃんが11歳で、わたしが9歳になる年に、……殺人事件に巻き込まれたの」

「……犯人は?」

「……うん。ちゃんと、……更生してる」

「人を殺すなんて最低だわ」


 あたしはデヴィッドの墓をなでた。


「あなたに会えると思ってたのに」


 あたしは鼻水をすすり、ピーターに振り返った。


「ピーター、……あたし、無神経だったわ。でも、わざとじゃないの。あたしほんとうに、知らなくて……」

「わかってますよ。テリーお嬢さま」


 ピーターがまゆをへこませて、ほほえんだ。


「わたしこそ、申し上げずにすみません。でも、こうなると思ったのです。デヴィッドは、ベックス家のお嬢さまがたをとてもかわいがっていたときいておりましたから」


 ピーターが胸に手を当てた。


「兄のために泣いてくださり、感謝いたします」

「デヴィッドは、ほんとうにいい人だったわ。よく、お馬さんごっこをしてくれたの」


 あたしはぐすんと鼻水をすすった。


「とてもざんねんだわ」


 あたしはもう一度墓を見て、声をかけた。


「デヴィッド、会いたかったわ」


 メニーも両手を握りしめて、あたしといっしょに祈る。

 あたしの世界にいたデヴィッドはどうなったのかしら。そういえば、最近は彼の存在すらわすれていた。馬の世話はメニーがやっていたし、御者がいなくても、必要なときに雇っていたから。


(デヴィッドでこんなに悲しい思いをするとは思わなかった)


 あたしのなみだが地面へと落ちて、雑草たちの栄養となっていく。


(ああ、なみだが止まらない。悲しくて悲しくて仕方ない。どうしよう。知ってる人が死んだら、すごくさびしくなって、悲しくなって、胸のなかがとても冷たくなる)


 この感覚きらいなのよ。なみだが止まらなくなるから。


「お姉ちゃん……」


 メニーがそっとあたしの背中をなで、あたしが鼻をすすり、ピーターが息を吐いた――次の瞬間、アトリの鐘が大きく鳴りひびいた。ピーターがはっとして振り返った。


「オオカミだーーー!」


 あたしとメニーがはっとした。


「オオカミが出たぞーーーーー!!」


 悲鳴のような叫び声に、ピーターが一目散に反応した。あたしとメニーの腕を引っ張り、草むらに飛び込んだ。あたしとメニーがおどろいて、悲鳴を上げる。


「きゃっ!」

「ひゃっ!」

「静かに!」


 風が吹いた。草と花が揺れる。ピーターがあたしたちに覆いかぶさり、辺りを見回した。そして、静かに深呼吸をして、耳を済ませる。あたしもなんだかこわくなってきて、なみだよりも緊張が勝ち、あたしはだまった。メニーもじっとして動かない。オオカミだ、の一言に、村全体に緊張が走るのが伝わった。いつまでこうしてるのかしら。どうしよう。ここまでオオカミが来たら。あたしたち食べられちゃうのかしら。あたしの体が恐怖から震えてきた。メニーがあたしの手をにぎりしめた。ピーターがゆっくりと上体を起こした。


 遠くから、村人がのんびりと歩いていく。


「おーい、みんなー! 怖がる必要はない! またジャンヌだ!」


 あたしとメニーがきょとんとまばたきした。


「またジャンヌの嘘だぞー!」

「またか!」

「ジャンヌの野郎!」

「またジャンヌかい!」

「まったく! 人をからかって!」


 家から人々が文句を言いながら出てくる。ピーターが重たい息を吐き、がっくりと脱力した。


「はあーーーーー……」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「ジャンヌがなにかしたの?」


 きくと、ピーターがゆっくりと立ち上がった。


「昨日と同じです。オオカミを見たと叫んだようです」

「ジャンヌったら、どうしてそんな嘘を付くの?」

「わかりません。ただ、ある日を堺に、……ジャンヌは虚言を言うようになりました」


 ピーターがあたしたちに手を差し出した。


「すこし、説教に行きましょうか。このままではいけませんから」


 あたしとメニーはピーターの手を取って、ゆっくりと立ち上がった。周りを見ても、どこにもオオカミの気配はなかった。



(*'ω'*)



 アトリの鐘の下にもどると、ジャンヌが縄でしばられて、公の場でヒョヌから公開説教を受けていた。


「またみんなに迷惑をかけて!! 一体お前はなにがしたいんだ! 毎日毎日みんなをおどろかせて怖がらせて! こんなことをくり返していると、お前の声がしたとき、みんなが嘘だと思うぞ。ほんとうにオオカミが現れてもだ!」

「だから、ほんとうにいたんだってば!」


 ジャンヌがかみつくように言った。


「今度はドレスを着てた! まるでどっかの家の奥さんみたいに!」

「もういい。たくさんだ。お前の戯言はもうたくさんだ! 前夜祭の準備もある! ジャンヌ! 踊り子の舞を完璧にするまで、今日は部屋から出さないからな!」

「わたしはみんなを守ろうとしただけよ!」

「連れて行ってくれ!」

「パパ! ……ちょっと放してよ! ねえ! なんでわたしのこと信じてくれないの!? パパのばか!!」

「ジャンヌ! わたしは……バカじゃなーーーーーい!!」


 ジャンヌが村人たちに引きずられながら自分の屋敷へと帰っていく。ヒョヌがハンカチで冷や汗を拭った。


「ああ、もうやだ。一体ジャンヌはどうしちまったんだ」

「ヒョヌさん」

「ああ! もういやだ! マルカーン神父! いや、ピーター! わたしはもう無理だ! とても手におえん! うちの娘は一体どうしちまったんだってんだ! 呪いか!? 悪魔にでも心をやられたか!?」

「おちついてください。話をききましょう。さあ、座って」


 涙目のヒョヌをベンチに座らせ、ピーターがあたしたちに振り向いた。


「仕事が入りました。すみませんが、ランチは……」

「大丈夫です。お気になさらず」


 メニーが言うと、ピーターは申し訳無さそうに言った。


「すみません。暗くなる前にはもどります」


 そしてヒョヌにふり返る。


「ヒョヌさん、気を確かに」

「アメリアヌさま! ジャンヌをどうにかしてください! あの反抗期娘! いつになったら良い子になるんだ! わたしは育て方を間違えた覚えはない! わたしはバカじゃない!!」

「ええ、ええ。わかってますよ。ヒョヌさんはそれはそれは、ほんとうに努力しています。あなたは、ええ、ええ。決してバカではありません! ええ、ええ! そうですとも!」


(……ジャンヌはどうして嘘なんかついたのかしら?)


 たしかに昨日も同じことをして叱られてた。

 あたしが昨日のことを思い出してると、メニーがあたしに声をかけてきた。


「……お姉ちゃん、ジャンヌさんのところに行ってみない?」

「え?」

「ジャンヌさん、嘘を付く人には見えないし、なんか、気になって……」

「……そうね」


(確かに気になる。いつもならまだしも、王族がいるのに怖がらせていいことなんかないのに)


 あたしはうなずいた。


「いいわ。行ってみましょう」

「うん」

「ピーター!! わたしが間違っていたのか!? わたしがぜーーーんぶ悪いのかーーーー!?」

「おちついてください!! 大丈夫! みなさん、わかってますから!!」


 村のみんなが哀れな目でピーターを見た。神父さま、今日も大変そう。さあ、仕事だ。仕事だ。

 ピーターが全力でヒョヌをあやしているところに背中を向け、あたしたちも歩きだした。



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