第2話 脳なしと空っぽ


 さて、こんな感じで始まりましたドロシーとトトの冒険ですが、ドロシーはとってもスキップが好きなので、歩くよりもスキップをした方がいいと思いまして、スキップをしながら道を進みます。と言いますと、ドロシーは歩いて楽しいことを考えるよりも、スキップをして楽しいことを考える方がずっと楽しくなると思う少女だったからです。


 ドロシーとトトがスキップをして畑の間を進んでいきます。


「そうだ。トト。歌を歌おう。歌を歌ってスキップした方が、楽しいかもしれない!」

「にゃー!」

「それに、見てごらん。トト。殺風景な畑だ。おじさんの畑の方がよっぽどマシだ。こんなんじゃ冬は越せないよ。これはね、多分楽しさが足りないんだ。だからトト、歌を歌って畑を楽しくしてしまおう」

「にゃあ!」


 ドロシーの提案に、トトも賛成です。そんなわけで、畑を楽しくさせるためにドロシーとトトが歌います。


「ちね、バレンタインデー」

「にゃー」

「そんなに嬉しいか? そんなに嬉しいのか? そんなに欲しかったのか。チョコレートなんかが」

「にゃーにゃー」

「綺麗な箱だよな。リボンが可愛いよな。そんなに自慢したいのか。チョコレートなんかを」

「にゃーにゃー」

「ちね」

「にゃー」

「ちね」

「にゃー」

「鼻血を出してちね」

「にゃーにゃー」


 ドロシーとトトがスキップをしながらとっても楽しい歌を歌って、畑もとっても楽しそうです。そんなドロシーとトトの前に分かれ道が現れました。ですので、ドロシーとトトが足を止めて、道を眺めることにしました。


「トト、どっちに行ったらいいんだろう? 分かれ道だ」

「にゃー!」

「あっちに行ってもいいし、こっちに行ってもいいかもしれない。行くのは簡単だけど戻るのはてんで時間がかかってしまうから、ここは慎重に考えよう」

「にゃあ」

「あっちがいい?」

「にゃー」

「それともこっち?」

「にゃー」

「それともそっち?」

「どちらでも構わないさ」

「にゃー」

「どちらでも構わない? トト、迷子になったら大変だよ。オズは迎えには来てくれないんだから!」


 そこでドロシーがはっとして、口を押さえました。聞いたことのない声が聞こえたような気がしたのです。丸い目をきょろきょろと動かしてみました。


「トト、誰かの声が聞こえたよ?」

「にゃー」

「君が喋ったの?」

「にゃにゃ」


 トトは大きく首を振りました。トトは猫なので、人間と舌の形が違います。だから、人間の言葉は話せないのです。そんなわけで、声を出したのはトトではありません。


「じゃあ一体誰が?」

「道の次は話した人を探すのかい。こりゃまた忙しのないお嬢ちゃんだぜ」

「まただよ。トト。どこかで声が聞こえたよ」


 ドロシーは振り向きます。誰が喋っているのか分かりません。予想がつきません。


「どなた?」

「俺かい? それとも行くべき道かい?」

「あっ、声の主がわかったよ! トト!」


 ドロシーが木の棒に引っかかったカカシに指を差しました。


「さっきからお喋りしていたのは君だね! カカシさん!」

「ああ、そうさ。俺は脳なしのお喋りなんでね、喋るのが好きなのさ」

「うふふ! 僕もお喋りが大好き!」


 ドロシーはおばさんから教わっていたお辞儀をしました。


「初めまして! カカシさん。僕はドロシー。この子はトト!」

「にゃー」

「初めまして。ドロシーにトト。俺は木のぼっこに引っ掛けられたナイスなガイのナイスミスター。略してナイミスだ」

「ナイミス。どうも。ご機嫌いかが?」

「俺は憂鬱さ。君はどう?」

「とっても楽しいよ」

「そいつは良かった」

「ねえ、ナイミス。君はどうして憂鬱なの?」

「上をごらん」


 アテンションプリーズ。上をご覧ください。上には烏がカーカー鳴いて飛んでおります。


「烏がいるね!」

「その通り。烏は俺の友達さ」


 烏がナイミスの肩に乗りました。


「カカシは本来烏を怖がらせる役目を待ってるのさ。でも烏は俺を怖がらない。だから俺は友達になってしまった。憂鬱さ。俺はカカシになりきることが出来ないのだから。だったらどうする? 喋るんだ。脳なしでも喋ることは出来るからね」

「カカシになりきる? 何言ってるんだい? 君はどう見たってカカシじゃないか」

「ああ、憂鬱だ。お喋りは好きだが、この話は実に憂鬱になる。実は俺はカカシじゃない。なんてことのない人間だ。じゃあどうして俺はカカシなんてやってると思う? オズだ。この世界の支配者であるオズが、トゥエリー(魔力)で俺をカカシにしたのさ。まあ、理由は、なんてことはない。作物を譲らなかったのさ。誰が呪いを振りまく王に作物なんかやるものか。でもさ、それがオズの怒りに触れたんだ。俺は怒られて、カカシにされちまって、このぼっこに引っ掛けられてしまった。どうだい。お嬢さん。聞いてるだけで憂鬱になっちまうだろ?」

「つまり、君はオズに呪われた人間ってわけだね。道に落っこちてるトゥエリーだ」

「話のわかるお嬢さんで助かるぜ。へへっ。俺は何度大切な話をされても理解するのに時間がかかるんだ。なんせ、脳なしなもんでね。おっと、勘違いしないでおくれ。中身がわらで出来てるもんでね。へへっ。脳だけじゃないさ。全部わらなのさ。だから俺は中身なし。でも人間の頃のことは忘れちゃいないから、口はぺらぺら動かすことが出来る。つまり、俺は阿呆なのさ。脳がありゃ、こんな憂鬱にもならずに済むのに。ああ、脳が懐かしい。脳があったらお嬢さん、なんて素晴らしいだろうね。俺は知恵を使ってわらの分だけ、君を笑わすことだろうね」

「だったら、ナイミス、いい考えがあるんだ!」


 ドロシーは何かひらめいたようです。


「オズに会いに行って、呪いを解いてもらおう!」

「おいおい、やめてくれよ。オズだって? まぁ、おそろしい名前。よしてくれよ。俺は二度とあの王の顔なんか見たくないんだ」

「僕はね、綺麗な白いお姉さんに、怒ったオズを笑顔にするように言われてるんだ。だから、僕はオズに会いに行こうとしたところなのさ」

「オズに会いに行くだなんて、なんて命知らずなお嬢さんなんだ。いいね。気に入ったよ。俺もそろそろカカシをするのに飽きてきたところだ、オズも生き物だ。もしかしたら謝ったら許してくれるかもしれない」

「そうさ。謝って作物をたんまりあげて、手料理を作ってあげよう! きっと、オズはお腹が空いて、イライラしてたに違いない!」

「わかった。そういうことなら君についていこう。よかったら俺をこの木のぼっこから離してくれないかい?」

「任せてよ!」


 ドロシーはぺろりと唇を舐め、カカシを結んだ縄を解いてあげました。カカシは地面に尻餅をつきますが、土を払い、笑顔でドロシーに振り向きます。


「行こう! 偉大な魔法使い。オズの元へ!」

「おー!」

「にゃー!」


 ナイミスは歩き出し、ドロシーは再びスキップをして道を進んでいきます。ずっとトトと一人と一匹ぼっちだったので、とっても楽しくなりました。


「ナイミス! 君が来てくれて、僕達とっても嬉しいよ! なんてったって、ずっと一人と一匹ぼっちだったから、少し寂しかったんだ!」

「にゃー!」

「ああ、なんて日だろう。ドロシー。俺もとっても楽しいぜ。君達のような愉快な人達に会えて、憂鬱がなくなってきた。そうだ。ドロシー、トト、歌でも歌わないか?」

「お歌は大好き! 何を歌うの?」

「好きな歌を歌うがいい。俺はさすらいのギタリスト。ドロシーとトトが歌う歌を奏でてあげよう」


 ナイミスがギターをぶら下げて、メロディを弾き始めました。ドロシーとトトのスキップに合わせて、ぽろん、ぽろんと音を奏でます。


 ドロシーとトトはすっかり元気になりましたので、 ナイミスのギターに合わせて、歌い始めました。


 オズの魔法使いに会いに行こう。

 オズは誰だい。魔法使いさ。

 偉大な魔法使いオズ。

 オズは何でも出来るよ。

 呪いをかけることも。

 人を助けることも。

 オズの魔法使いに会いに行こう。

 脳なしを連れて会いに行こう。


 ドロシーとトトとナイミスはすっかり楽しくなってしまいました。二人と一匹が歌いながら道を進んで行きますと、森の道へやってきました。おばけのように高い木がドロシー達を囲んでます。


 ドロシーが白い魔法使いから貰った地図を広げました。


「オズが住んでるエメラルドの都はこの先だ。よし、ひたすら前進だ」


 ドロシーがスキップをして、ナイミスが歩きますと、蝶々が飛んできてトトの頭にキスをしました。


「にゃあ!」

「あっ! トト!」


 トトが蝶々を追いかけ始めましたので、勝手に道から外れてしまいます。ナイミスが頭を掻きました。


「おやおや、こいつはいけねえ!」

「トト! 戻っておいで!」


 ドロシーがスキップをしながら道から外れ、トトを追いかけます。トトは蝶々と戯れ、くすくす笑いながら、冷たくなった何かにぶつかりました。


「にゃっ」


 巨大な何かがきらりと光って、トトは慌ててドロシーの元へ戻ってきました。


「にゃあ!」

「おや、どうしたんだい。トト。顔が真っ青だよ!」

「にゃー!」

「うーーーん?」


 ドロシーが顔を上げると、その先にブリキで作られたきこりが立っていました。ドロシーは一瞬驚いて、ひゃっ! と悲鳴を上げて、二つのおさげを上に上げましたが、まじまじときこりを見つめました。


「これは、ブリキのお人形かな? トト」

「ふしゅー!」

「ふふっ! 怖がらないで。トト。生きてるわけじゃあるまいし」


 その瞬間、どこからか、唸り声が聞こえます。


「はっ!?」

「にゃ!?」


 うーーーー。


「トト! どこからか唸り声が聞こえるよ!」

「にゃー!」

「おいおい、どうしたんだい? ドロシーにトト」

「ナイミス、どこからか声が聞こえないかい?」

「声だって? そいつはいい。俺は脳なしだがね、声を聞くことは出来るんだ。さて、わらの耳を澄ませて聞いてやろうじゃないか。声ね。声。俺、いいか。声だぞ。ナイスなガイのナイスミスターはお喋りだ。声の主とぜひお喋りしたいものだ。さあ、声の主、喋ってみてくれ。俺とわらを割って話そうじゃないか」


 うーーーー。


「これでも喋らないか。やれやれ。素敵なシャイボーイだぜ」

「にゃあ……」

「このうなり声はどこから鳴ってるんだろう?」


 うーーーー。


 ナイミスはうなり声を辿ってみました。すると、ブリキの目と目が合ってしまったのです。ナイミスは驚いて腰を抜かしてしまいました。


「うわあ!」

「ナイミス! どうしたんだい?」

「今、そのお人形と目があったぜ! なんてことだ!」

「そんなまさか!」


 ドロシーとトトがブリキのきこりに振り向きました。すると、微かにブリキの目玉が動き、唇がぶるぶる震えているではありませんか。その時、トトが切り株に置かれた油差しに気がついたので、ドロシーを呼びました。


「にゃー!」

「あ! あんな所に油差しが!」

「きっと雨に濡れて錆びてしまったんだ! こいつは憂鬱だぜ!」

「可哀想に! 任せて。僕が油をさしてあげる!」


 ドロシーは急いで、かつ丁寧に、きこりに油をさしてやりますと、ようやくきこりの唇が動き始めたのです。


「はあ。やっと話が出来る。素敵な人。一つ頼みだ。僕の手足もやってくれ」

「任せて!」


 ドロシーは続けてきこりに油を差してあげます。きこりが錆びた匂いのする息を吐きました。


「はあ。ようやく安心だ。ここであと何年過ごすものだと思ったよ」

「きこりさん、一体いつからこうなの?」

「おお、聞いてくれるかい? 可憐なお嬢さん。ふっ。その前に、自己紹介だ。知らない人には名前を名乗るんだ。やあ。わらのカカシ。小さなレディ。子猫ちゃん。僕は斧を片手に木を切るブリキのきこり。でも水はてんで苦手な……アクアさ」

「よーし、トト、水の苦手なブリキのきこりのアクアにご挨拶!」


 うーーーん!


「ボンジュール!」

「にゃー!」

「ふっ。素敵なレディ。どうもこんにちは」

「初めまして! アクア。僕はドロシー。この子はトト」

「にゃー」

「俺はナイスなガイのナイスミスター。ナイミスだ」

「やあやあ。どうも、お揃いの皆様。ふっ。一年前、木を切っていたら雨が降ってね、いやいや、腕と足が動かなくなって、体も動かなくなって、顔も動かなくなった。目の前に油差しがあるのに、全く。とんだ悲劇だ」

「大変だったね。油差しは持っておくべきかも」

「ああ。その通りだ。ドロシー。可憐な君の意見に賛成だ。僕は女性にはNOと言わない。女性は大切にしないと。と、言っても、そのおかげでこんな体になったわけなんだが」


 二人と一匹がきょとんとしました。


「アクア、君は元々きこりじゃないの?」

「いんや、僕はきこりさ。ドロシー。だがね、ブリキじゃなかった。僕がブリキになった理由は女が理由なんだ。僕は女が大好きでね、ふふ。一緒にいて楽しくなるんだ。僕は最初に共に生きようと決めた一人目の女のために木を切っていたら、誤って右腕を切ってしまった。だから右腕が欲しいと、この国の王に頼んだのさ。そしたらブリキの義手をくれたから、右腕にすっかりはめこんで、そのまま木を切り続けた。でも女とは上手くいかなかった。右腕がブリキの男なんて嫌だって言われてしまってね。でも落ち込むことはない。二番目の女が目の前に現れた。妖精ちゃんのように可憐なレディさ。僕は二番目の女と共に生きることを決めた。女を養うために木を切っていたら、誤って左足を切ってしまった。だからまた国の王に頼んだのさ。そしたらブリキの義足をくれたから、左足にすっかりはめこんで、そのまま木を切り続けた。でも二番目の女とは上手くいかなかった。右腕と左足がブリキの男なんて嫌だって言われてしまってね。でも落ち込むことはない。三番目の女が目の前に現れた。こいつがとてもセクシーな女でね、ふっ。僕は三番目の女と共に生きることを決めた。女を養うために木を切っていたら、誤って左腕を切ってしまった。だからまたでってことで国の王に頼んだのさ。そしたらブリキの義手をくれたから、左腕にすっかりはめこんで、そのまま木を切り続けた。でも三番目の女とは上手くいかなかった。右腕と左足と左腕がブリキの男なんて嫌だって言われてしまってね。でも落ち込むことはない。四番目の女が目の前に現れた。これがまた素晴らしい女だった。僕は四番目の女と共に生きることを決めた。女を養うために木を切っていたら、誤って右足を切ってしまった。だから飛んでいって国の王に頼んだのさ。そしたらブリキの義足をくれたから、右足にすっかりはめこんで、そのまま木を切り続けた。でも四番目の女とは上手くいかなかった。右腕と左腕と左足と右足がブリキの男なんて嫌だって言われてしまってね。でも落ち込むことはない。五番目の女が目の前に現れた。僕はね、ドロシー、もうこの人しかいないと思ったのさ。でもなんてことだ。悲劇なのさ。僕は心を病気にしてしまったんだ。心配した五番目の女と共に国の王の元へ行き、心を抜いてもらった。治療ってのは、抜くのが一番だから。そしたら、なんてことだろう。心がなくなったもんだから、愛も想いも全てなくなってしまったのさ。そんなものだから、五番目の女を愛することが出来なくなってしまった。もちろん、五番目の女とも上手くいかなかった。心がない男は嫌だって言われてね。さて、お待たせ。そして現在だ」


 アクアは空っぽの胸をさすりました。


「一年前はね、心はないがね、脳は残ってたんだ。頭があるからね。だから喜怒哀楽の感情が残ってるんだ。僕はね、心底国の王に怒ったのさ。城まで行って、叫んでやった。やい、オズ。お前のせいで大好きな女に振られた。どうしてくれるんだ。心を返せ。そしたら、いやいや、オズの奴め、人の親切心を踏みにじったと逆に怒りやがって、あろうことか、トゥエリー(魔力)で僕の頭までブリキにしてしまった。これで完成さ。僕は人間ではなく、心のないブリキのきこりになったのさ。いやいや、待たせたね。どうも。僕はアクア。水の苦手なアクアさ。オズの怒りを買って、心を奪われたブリキのきこりさ」

「なんだか憂鬱な話だぜ」


 同情したナイミスがドロシーを見ます。ナイミスの眉毛は、八の字になっておりました。


「なあ、ドロシー、良かったらアクアも連れて行かないかい?」

「わお! 素敵な提案だね! ナイミス!」


 ドロシーが手を叩き、またアクアに振り向きました。


「ねえ、アクア。僕達、これからオズに会いにいくんだ」

「オズだって? おお、よしてくれ。心は無くなったが、オズには会いたくないと心臓が言ってるんだ。中身の空洞がきりきりするよ」

「オズはきっと寝不足で、機嫌が悪かったのさ。きちんと誠意を込めて心を返してとお願いしたら、聞いてくれるかもしれないよ」

「なんだって? ああ、そいつはいい。よし、だったら花を持って行こう。花はいいんだ。なんだか空っぽの頭がふんわりするんだ」

「よし、じゃあお花畑で花を摘もう! トトもいいでしょ?」

「にゃー!」

「よーし、盛り上がってきたぜ!」


 ナイミスがギターを構えました。


「俺はさすらいのギタリスト。アクア、歌は好きかい?」

「ああ。僕は歌は大好きさ。弾けるのかい? ふっ。君は素晴らしいね」

「愉快な気持ちで歩けば、きっと素敵な気分でオズと会えるさ。さあ、共に行こう」

「僕は心を返してもらうため」

「俺は脳を返してもらうため」

「僕達はカンザスに帰してもらうため」


 トトがスキップを始めました。


「さあ、怒ったオズに会いに行こう!」


 ドロシーとトトがスキップをし、アクアがブリキの足を動かし、ナイミスはギターを弾きながら道を進んでいきます。

 一本道に、歌声が響き渡ります。


 オズの魔法使いに会いに行こう。

 オズは誰だい。魔法使いさ。

 偉大な魔法使いオズ。

 オズは何でも出来るよ。

 呪いをかけることも。

 人を助けることも。

 オズの魔法使いに会いに行こう。

 ブリキを連れて会いに行こう。


 三人と一匹が愉快に歌って道を進むのを、望遠鏡で眺めるのはオズではありません。緑の肌の、醜い魔法使いです。


「ああ、なんてことだろうね。これはまた、ああ、脳なしと空っぽがついてきやがった。面倒なことになりそうだ。どれ。もう少し観察してみることにするかね。どこかであのドロシーとかいう女の子に隙が出来上がるタイミングがあるかもしれない。そこをつけ狙おう。全く。ああ、面倒だわ。でもね、あたしにはこいつがあるからね、大丈夫さ。まだ様子を見ておこう。何かあったら、こいつでぴゅーとやってやるさ。ぴゅー。ぴゅー」


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