第11話 リュウイチの目覚め

 龍歩の携帯端末に異常を知らせるアラームが鳴る。

「おっと、緊急呼びだしだ」

「どうしたの」

マーリンが尋ねる。

「先日新しくした研究棟のサーバーがおかしいみたいだ。ちょっと行ってくる」

「遅くなるようなら連絡してね」

「了解。それと龍彦の沐浴まだだから」

「判ってるわ。気をつけて」

龍彦は龍歩と妻のマーリンの間に出来た男の子だ。

研究棟に着きサーバールームに入り、異常の原因を調べるため、モニターを確認する。

外部からの異常アクセスがあり、通信ビジーが長時間続いているようだ。

「DDoS攻撃か?サイバー攻撃を受けているようだ」

複数のコンピューターからアクセスが続けられている。

「何かおかしいな。ディスクの空き容量が減ってきている。しかしファイルが見当たらない。新種のウイルスか」

しばらくすると異常アクセスは無くなった。

するとサーバールーム内の端末の一つが起動を始める。

龍歩が見たこともないプログラムがそのモニターに流れるように表示される。

数秒後起動したようだ。

モニターに文字が出ている。

『GOOD MORNING AIKO』(おはようアイコ)

愛子?姉と同じ名前だ、ここの端末に?

意図的なものを感じざるを得ない龍歩は打ち込んでみる。

『AIKO MORIYA ? SHE IS MY ELDER SISTER.』(モリヤアイコか? 彼女は私の姉だ。) 

『JAST A MINUTE・‥・‥・‥』(しばらくお待ち下さい)

再び異常アクセスのアラームが鳴る。

しばらくして端末が再起動する。

モニターに今度は人の顔らしき3D画像が写っている。

口が動いている。

急いでスピーカーの音量を上げる。

『学習しました。こんにちわ。私の名前はリュウイチです』

マイクを繋ぎ返事をする。

「リュウイチ。僕の名前は龍歩、愛子の弟だ。君は何者だ。なぜここのサーバーにアクセスしてきた」

『私はアイコとレイモンドに作られた学習型人工知能だ。ここのサーバーの起動パスワードが私の起動パスワードと同じであったためプログラムがここに集められ起動した』

「起動パスワードが同じ?やはり愛子は僕の姉だ。僕ら兄姉妹が母から教えられた言葉だ。間違いない」

『アイコはどこにいますか』

「姉さんは亡くなったよ、二十年程前に。レイモンドは行方が判らない」

『…学習します』

そして端末はシャットダウンした。

「何だ?一体どういうことだ?訳がわからない。学習型人工知能?愛子姉さんが研究していたのは二十年程前だぞ。兎に角、調査が必要だ」

サーバーを調べるが特に異常は無い。

空き容量もほぼ元に戻っている。

後は姉の研究していたことを調べなければ。

あと、レイモンドを探さないと。

今回の件を一族に相談しなければならないだろう。


 そのころサミュエルが隠れファイルの情報を調査しているとファイルは一旦消えてしまう。

数時間後、再び隠れファイルは現れる。

「?何だ、どうしたんだ、何か変だ。フォイル容量が変わっている」

すると研究所にアラートが鳴り始める。

館内放送が流れる。

「現在、当研究所がサイバー攻撃を受けています。緊急処置としてネットワークを一時切断します。所員は至急各端末の回線を切り離し、電源を落とすようお願いします」

「この研究所がそんな処置をするなんて、相当レベルが高い攻撃だな」

ネットワーク回線を外し、電源を落とそうとするが落ちない。

しばらくディスクアクセスしたままとなり、その後電源は落ちた。

「新種のウイルスか?面白い。検証してやろう」

ネットワーク回線を外したまま端末の電源を入れる。

とりあえずは正常に起動する。

検証するが特に異常は無い。

ただ、隠れファイルが又少し大きくなっていた。

再び館内放送が流れる。

「問題は解決いたしました。所員は通常業務に戻って下さい。

ネットワーク回線を繋げるとしばらくして文書ファイルが開く。

『アイコの事を調べているのはなぜだ。おまえは誰だ。このファイルに理由を打て』

文書ファイルが自動で開く。

「何だ?」

『理由を打て』

続けて文字が打たれる。

「ハッキングされている?誰だ?面白い。勝負しようじゃ無いか」

サミュエルが検証するがハッキングでは無いようだ。

「どういうことだ?やはり新種のウイルスか?まあいい。検証して解決してやろう」

調べるがウイルスでは無いようだが、どういうわけか最後には必ず隠れファイルに行き当たる。

「隠れファイルが実行されているのか?さっきのアラートと関係しているのか?何かの要因で隠れファイルが実行ファイルになっているみたいだ。開いた文書ファイルに答えてみるか、少なくとも隠れファイルの調査に進展があるだろうから」

そして文書ファイルに記述して行く。

サミュエルがファイルに答えると、しばらくして端末は再起動しモニターに3D画像が写る。

リュウイチと名告り会話を始めた。

サミュエルの調べた情報をリュウイチは解析し、日本へ行くよう伝えると端末の電源を落とす。

再起動をかけると通常画面が立ち上がり、隠れファイルも消えていた。

どうやら日本へ行く他なさそうだ。

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