第40話 年越しの雰囲気
買ってきたパンをキツネ亭で食す一行。
食後の散歩、と言わんばかりに空のフードコンテナを持ってぞろぞろと山上豆腐店へと向かう。
「山上豆腐へようこそ~」
駆け出し、一向に振り返り笑顔で迎える小町。
「おかえり、小町」
笑顔で迎える小町の母。
「おばさん、おはようさんです」
「お早う、恒彦くん」
「はじめまして、伏見様への納入を担当してます、ウママチキツネコーポレーションの南雲と申します、いつも上質のお揚げをありがとうございます」
「ああ、伏見さんの、いつもお世話様です、伏見さんにも宜しくお伝え下さいね」
「かしこまりました!で、恐縮なのですが! 」
「おばさん、豆乳と、お揚げさん、納入分とは別にちょっとつまみたいんやけど……」
「今揚がったんがあるさかい、用意するわ」
笑顔で慶子の希望に応える。
「お母さん、あとウチやるわ、そのままお店入るし」
「ええのん? 」
「夕べから十分みんなで遊べたさかい、仕事せんとな」
「じゃあ、たのむわな、ほな恒彦くん、南雲さん、またね」
「おおきにおばさん」
「ごちそうさまです! 」
『(いつもホンマにありがとうございます)』
小声で感謝の気持を伝えるダク。
「はい、豆乳と、お揚げさん、醤油差しと、これおろし生姜つこて」
豆乳の入ったコップと、皿に盛り付けたお揚げをお盆にのせて差し出す小町。
「(ダク、豆乳飲み)」
『(おおきに……ああ……美味しい……)』
こっそりダクにも豆乳を飲ませるキツネ。ダクも満足げである。
「ああああああ」
慶子は相変わらずである。
「揚げたてのお揚げさんも呼ばれ、慶子さん」
「ああああああ」
この人のキャラ立ては間違ってるのではないか。
「もうなんか、至福のひとときって感じやな」
ダクも慶子もだらしない顔になっている。
「はぁ……ごちそうさんでした」
キツネが手を合わせる。
「ごちそうさまでした! 」
『(ごちそうさんです、またこのあといただきます)』
「お粗末さんです~」
ならう慶子とダク、応える小町。
「じゃあ小町、フードコンテナ、交換していくわ」
「はーい、よろしゅうね」
「では小町さん、また大晦日に! 」
『(ほな、小町ちゃん、またね)』
「おおきに~」
小町と別れ、キツネ亭に戻る一行。
大皿に25枚のお揚げを並べ、御札の下の机に備えるキツネ。
その横で慶子とダクも手を合わせ、日頃の感謝を伝える。
ダクがキツネの懐から飛び出し、フードコンテナと対峙。
ダクの宴が始まる。
慶子は一旦別荘に戻る、といってキツネ亭をあとにする。
「南禅寺方面だと、馬町からおすすめのコースってあります? 」
「そうやなぁ、観光客気分を味わいたかったら清水坂上がって七味家さん曲がって、
八坂の塔眺めて、八坂さん通って知恩院の前を抜けて真っすぐ行ったら平安神宮の大鳥居が見えるから、二条通を山の方、東向かって行ったら、そんなにかからへんよ」
「歩いていけるんですね!わかりました、ありがとうございます! 」
キツネには悪意はない。だから余計にたちが悪い、らしい。
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