第4章 日常のあれこれ

第34話 通信販売

某国のミサイルが発射される一週間前。


ウママチキツネコーポレーション御中、という宛名でキツネ亭に次々と荷物が届く。


内容は精密機器、ただしジャンク品。


「ダク、この荷物は……」


キツネが積み上げられたダンボールを見て、ため息をつく。


まるで通信販売で玩具や模型を買う夫を見る奥様の目のように冷ややかである。


「一応、金額を決めてその範囲で購入されてますよ、ダクさんは」


そろばんを弾きながら応える慶子。このご時世になぜ、そろばん。


『ちょっとウチのスマホ、古ぅてなぁ』


「スマンなぁ、それ、俺のお古やさかい」


『で、この筒も古なってるし、ちょっと改造しよう思てな』


「改造? 」


キツネと慶子でダンボールの中身を取り出す。

画面の割れたスマホが数台、壊れた無線LANのルーター、レコーダー、無線充電、スピーカー、とにかく壊れた精密機器のオンパレードである。


「こんな壊れたもん、どうするつもりや? 」


持ち上げて見るが、どう見ても使えそうなものはない。

安物買いの銭失い、という言葉がキツネの頭に浮かぶ。


『例えば……その"画面割れ、水没な踏んだり蹴ったりスマホ"て書いてあるスマホ貸してみ』


「画面割れて、水没て、そら踏んだり蹴ったりやわな」


手に取りながらしげしげとスマホを見る。画面が割れていて危ない。


『筒術・捲土重来』


踏んだり蹴ったりスマホがダクの光の筒に包まれ、高速回転する。

回転が収まると、まるで新品のスマホのようにピカピカの状態になる。


「え、ダク、機械直せんのん? 」


『直すというより、元に戻す……?かなぁ』


「それはそれで怖い話やなぁ……」


「ええと、私は何も見聞きしておりません」


慶子は目と耳を塞ぐ。


「慶子さん、ちょっとしたもんやったら多分お揚げさんで直してくれる思いますよ」


「わ、わかりました!覚えておきます!」


『直すんが目的ではないんよ、キツネ』


二人がかりで取り出したジャンク品の数々。

これをすべて光の筒にしまい込む。


『筒術・孤器創造』


「(筒術の名前は、だいたいなんか適当やな)」


『なんかいうたか』


光の筒に向かってダクが竹筒ごと飛び込む。


「うわっ」


驚くキツネ、慶子。


光が収まると……


『ホイ、完成』


「なにも変わって……ないような……」


ダクをしげしげと見つめる慶子。


「いや……中……」


『良う気づいたな』


キツネの指摘で慶子が筒の中を覗き込むと


「え、内面が液晶になってる……? 」


ドヤ顔のダク。


「でも、これって通信関係の法律とか……技適とか……」


首をかしげるキツネ。慌てること無く、ダクが。


『慶子ちゃん、わるいけど、南雲はんとこの、なんやかんやでええようにしといて』


「ええと、了解です! 」


サムズアップで応える慶子。なにがどう、ええようになるのか。


『空間接続して無線LANを地球上どこにおっても使えるようにしてあるし、

例えばどっかの国のミサイル基地に空間接続して管理コンピュータに有線接続してハッキングしてとか、便利になるで』


何をアホなことを、と呆れるキツネ。


その後本当にとは思わなかった。

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