第31話 犯人確保
「南雲さんは、いわゆるお金持ちなんやな……今更やけど」
キツネとダクは天橋立近くにある、南雲家の別荘を訪れていた。
「キツネさん、ダクさん、父がご挨拶に来れなくて申し訳ないと」
慶子が申し訳無さそうに頭を下げる。
「あ、いや、突然やったのに
『ごめんな、慶子ちゃん、キツネがどうしても寒ブリのしゃぶしゃぶ食べたい言うてきかへんのよ』
「ブリしゃぶ……美味しいですよね……」
ニヤニヤが止まらない慶子。
『キツネ、ちょっと散歩に行こか。慶子ちゃん、ブリしゃぶの手配だけお願いできる? 』
ダクがキツネの懐から顔を出し、手を合わせる。
「お任せください! 」
別荘を飛び出す慶子。
「ダク、別荘借りてまで何するつもりや? 」
懐のダクに尋ねるキツネ。
『やっこさんが動くのにどれくらいかかるか分からへんかったから、何日か張り込むつもりやったんよ。ただ』
「ただ? 」
『優秀なやっこさんみたいやな。もうこっちまで来とるわ』
「え」
『やっぱり日本海側から国外逃亡するつもりや、行くで。
筒術・変化、転移』
シュレンの姿となり、別荘から姿を消す二人。
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天橋立から徒歩で北を目指す、一人の女性。
海岸に降り、物思いにふけっているように見える。
だが。
『寒いなぁ、お姉さん。こんな寒いのにこんな寂しいとこで何してはるん?
身投げでもせえへんか、心配やわぁ』
突如現れたシュレンから間合いを取り、身構える女性。
「何者……? 」
『ウチは……シュレン』
「私に何のようかしら……? 」
『(中国語で)パスポートの手続きをしないで国外に渡ることは、禁止されてますよ』
「(中国語で)え、なぜ」
『(英語で)あなたが日本国内で行ってきたことについて、調べはついています』
「(英語で)な、なんのこと」
『(ロシア語で)本拠地、大変なことでしたね、心中お察しします』
「(ロシア語で)どこの組織の……!? 」
『(ドイツ語で)それは内緒です』
「(ドイツ語で)私と同じ……」
『(フランス語で)あなたのような複数国にまたがる犯罪スパイ、ではないですよ』
「(フランス語で)私は捕まるわけには行かない、外交官特権を使っても」
『もうええやろ、日本語でしゃべらせてもらうえ』
「くっ」
『アンタを迎えに来る予定やった潜水艦モドキは帰ってもろた。追手が来てるから言うて』
「なっ」
『アンタが八街教授を脅してけったいなクスリを研究させてたん、もうわかってんのやわ』
「……」
『脅すのに
女は懐から拳銃を取り出し、シュレンを狙う。
だが、引き金を引けない。
『知っとった?鉄砲って、引き金引かへんかったら撃てへんのよ』
「くっ」
拳銃をシュレンに投げつけ、ぐっと歯を噛みしめる女。
拳銃をキャッチするシュレン。
『奥歯に忍ばせた毒物で死ぬ、とかもう使い古された手ぇやな』
懐からチャック付きポリ袋を取り出すシュレン。
『マイクロカプセル、いうん?もう奥歯の詰め物に入ってないから。
ほら、ここに。筒術・
手際よく女を確保するシュレン。
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