第30話 緊急ニュース
「キツネ君、ダク、お疲れさんやったなぁ」
伏見氏と小町がちゃぶ台でキツネが淹れたコーヒーを飲みながら腰を落ち着ける。
「伏見さん、今回の件はまだ終わってませんよ、正直途中で放り投げてきたし……」
「いや、ここまでやってくれたら上等やわ。あとはあの八街って男を唆した存在を……潰してもろたら」
「つぶっ……」
絶句するキツネ。
「ダク、いけるな? 」
『仰せのままに……』
ちゃぶ台の上で竹の筒から上半身を出し、土下座するダク。
「ほな、ワシはこれで。全部終わったら金を口座に振り込むよう手配する。小町ちゃん、ほなな」
人差し指を口に当て、「内緒やで」と目配せし、玄関から出ていく伏見氏。
ピシャリ、と扉が閉まると、気配が消える。
「キツネ……伏見さんてナニモンなんやろう……? 」
「それはわからへんと言うより、触れたらアカン話らしい」
『夢々、そのことは考えたらアカンえ、小町ちゃん』
「う、うん」
「とりあえず、バタバタしてるけど、家帰って休み」
「そうさしてもらうわ、ほな、ダクちゃん、またね」
帰宅する小町。
「で、ダク、その唆したとか、潰すとかって」
『潰すっちゅうよりは、今回窓口になった奴を見せしめにして、この国での活動を鈍化させるのがせいぜいやな。一応本拠地は叩き潰す方向で段取りしてる』
ダクが言い終わると同時に、スマホが緊急ニュースのメッセージを受信する。
”某国がミサイルを発射
海上保安庁によると、本日15時ごろ、某国からミサイルが発射されたとみられるという。
これまでの発射コースと正反対のコースで、落下した某国と某国の国境地帯では、爆発音などの情報が寄せられており……”
『うわ、怖いなぁ。ミサイルやて』
「……」
唖然とするキツネ。
『核ではないにしろ、爆薬積んでたんやろ、怖いなぁ』
「……唆したやつの本拠地?」
『何のことやわかれへんけど、どっかの国が絡んでたり、犯罪組織とつながってたり……? まあ某国も某国も、あんまり声高には某国を非難でけへんやろうなぁ』
「けが人とか、その……」
『何のことやわかれへんけど、厳重に警戒してたみたいでシェルターに避難して無事みたいやわ。何のことやわかれへんけど』
「それだけの規模の組織やったら、それくらいの用意はしてるか、何のことやわかれんけど」
『何のことやわかれへんけど、研究機関的なところはグッチャグッチャになってるんと、最大級の脅しになっとるからしばらくおとなしゅうなるやろ、うん、何のことかわかれへんけど』
「……で、あとは」
『自分に指示出してた本拠地をグッチャグチャにされてどう行動していいんかわかれへんで困っとる奴を警察に突き出す。まぁ背後関係のことは吐かへんやろうけどな。それこそ、おとなしゅうなるやろ』
竹筒から半身を出し、腕組をして頷くダク。
『何のことや、ようわかれへんけど、うん』
某国はミサイルをいつものように発射しようとしていたが、どこかの誰かさんにコントロールを奪われ、あらぬ方向に発射した、ということらしい。
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