第27話 学食騒乱

「小町、インカレサークルの話で、その怖なって辞めたっちゅう人は今日来てるかな? 」


キツネが具体的な情報を求めて小町に尋ねると、その肩に手がかかる。


「それを知って、あなたはどうしようというのですか?」


振り向くと、見知らぬスーツの女性が。


「ええと、あなたは?」


女性は警察手帳をキツネに提示する。


「京都府警の、やしろです」


「京都府警? 」


「ああ、大学側の許可は得てますよ。不法侵入云々で拘束されるのは御免ですからね」


「今どきの学生がそんなんするとも思えませんけど……」


キツネはため息交じりに言う。社は警察手帳を胸ポケットにしまう。


「それはそれとして、あなたはそのインカレサークルを調べて、どうしようというのですか? 」


「私は、鷹来たかぎ、いいます。ええと、やしろ、刑事? さんでよろしいですかね。お恥ずかしい話なんですけど、私は交友関係が大変狭いんですよ。学内でこんなに噂になってることも、全然ピンとこおへんで……で、この友達の知り合いにそういう人がる、て聞いたら、ちょっと気になりまして。ただただ興味本位なだけなんですが……」


「探偵ごっこ、ですか、あまりいい趣味とは言えませんね」


「そんなふこう考えた話や無いんで、すんません」


「そうだ、鷹来さん。シュレンって名前に、お心当たりはありませんか? 」


「シュレン……? 手練とか……? すんません、名前なんですか? 」


「あ、ご存知なければ結構です。学生は学生らしく、勉学に励んでくださいね、では」


社は他の学生へと向かう。


「うち、刑事さんて多分初めて見るわ…… 」


「生きてるうちにそうそう会う職業の人ではないからなぁ」


警察がうろついていては、また、釘を刺されていては話を聞くこともできない。

キツネと小町は学食をあとにしようと入口へ向かう。


すると、入り口から一人の学生が駆け込んでくる。


「大変や!構内で人が暴れとる!! 」


その声に反応した社刑事が警察手帳を掲げて叫ぶ。


「私は京都府警の刑事です! 皆さん、暴徒を刺激しないよう、避難してください!! 」


学食に飛び込んできた学生を追って影がキツネの視野に入る。


『(この気配…… キツネ、逃げるふりして変化や! )』


ダクの小さい声に反応して逃げ出す学生とともに学食を出るキツネ。


だが、小町も一緒についてくる。


「キツネ、どこ行くん!? 」


出口とは違う学食の調理室に駆け込むキツネ。


「……小町、あの時みたいに、これから起こること黙ってくれ! ダク!! 」


『筒術・変化! 』


シュレンに姿を変えるキツネ。


「キツネ!?」


『小町ちゃん、ここに隠れてて。キツネ、行くで。筒術・転移! 』


学食に転移するシュレン。


「……キツネ…… 」


しゃがみ込む小町。


学食内で4人の学生に襲われる社。


「は、離しなさい! 」


社は学生時代、空手の選手権で上位入賞を繰り返す実力者であり、

学生に囲まれてここまで追い込まれることなど無いはずなのだが

異常な力を振るう学生たちに為す術もない。


もうだめか、と社が思った瞬間。


学生たちに囲まれていた社が消える。


出口近くに現れる2つの影。

体勢を崩しそうになる社を支えるのは、着流しの狐面。


『刑事さん、はよ、に』


社を背に、学生たちに向かう、シュレン。

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