第26話 大学構内
みやこ新聞の記事を見て、愕然とするキツネ。
京都・学生薬物
被疑者 意識不明の重体
狐面の不審者? 目撃される
…… 府警によると、通報を受け、駆けつけたところ
薬物摂取をした学生が暴れており、取り押さえ
ようとしたが手を付けられず、気がついたとき
には手錠で拘束された被疑者が横たわっており、
救急手配をかけたが意識不明の重体。
現場では、狐面の不審者が手にかけた、という目
撃証言があり、慎重に捜査を進める方針。
「キツネさん、これ、シュレンではないですよね……? 」
不安げな慶子。
昨晩の様子を順序立てて説明するキツネ。
『……鉄砲の弾で撃たれてはいたけど急所は外してあったし、重体いうような傷やなかったで……!? 』
ダクは困惑気味である。
コーヒーを淹れ、こたつに並べるキツネ。
「あの駐車場におった警官以外の学生、5人おって、そのうちの暴れてた一人を拘束した。で、この重体の子がその子か。橘くん、とか言われてたな。あの話しかけてきた子は、一連のことを知ってる、というか、シュレンを犯人にした張本人やろうなぁ」
コーヒーを飲みながら、自分の考えを示すキツネ。
「でも、シュレンを出してきたところで、どうにかなるわけでも」
「目的は捜査の撹乱やろうなぁ……ちょっと前に祇園界隈で出没した狐面の怪人、
ダクが調べてたネットの掲示板見たら、シュレンって名前まで出てたらしい」
「え、じゃあそのことを知っていて、今回遭遇して、利用してやれ、って思ったということですか? 」
『キツネ!うちは許さへんで!! 』
「わかってる、ちょっと今回のは穏やかやない。でも、あいつの居場所を突き止めるだけではあかんやろ」
「この嘘の証言をしたと思われる、その学生の通ってる大学って……」
新聞の記事を確認し、それをキツネに見せる慶子。
「……うちの大学か……ちょっと色々調べるてみるわ……」
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みやこ大学。キツネと小町が通っている、京都市内に数ある大学の一つ。
二人が登校すると、構内は昨日の事件の話題で持ちきりであった。
「キツネ、あの狐面の怪人、また出たって……」
不安そうに言う小町。
「(よう考えたら小町は、ダクや伏見氏と面識はあってもシュレンのことは知らんのやったな)あ、ああ、そうやな……狐面の怪人もやけど、学生が重体とか、一緒におった他の学生のこととかも気になるな」
「……さっき小耳に挟んだんやけど、あの5人、インカレのサークルに入ってたらしいわ。なんやようわからん、スポーツ同好会みたいなやつなんやけど、話をしてた人らが言うにはそれ自体は隠れ蓑、らしい、ちゅうことやった」
「隠れ蓑? 」
「なんや時々合宿とか言うて集まっては夜遅うまで理想の社会の話をしてたらしい。
小町とともに学食へ向かうキツネ。
確かに、そこかしこでそのような話題を口にしている学生が多い。
「(思てた以上に、やっかいな話みたいやな)」
学食のお茶を飲みながら、キツネは学生たちの話を反芻していた。
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