第24話 駐車場

「伏見様、キツネさんがさきほど言いかけた警察の仕事云々は私も思ったのですが」


キツネ亭内に場所を移し、キツネが淹れたコーヒーを飲む一同。


「警察の中はようわからんけどな。大学生の子を逮捕してそっからいろいろ調べてるらしいが、限界があるようや。人間の関わりもあるんやけど、人智の及ばんところにも何かしら要因があるというのが、の見立てや」


「はぁ」


ちんぷんかんぷん、という表情で伏見氏を見るキツネ。


「今晩の2時頃、お稲荷さんの駐車場に行ってみてもらえるか。シュレンが行けば、多分解決できると思う」


『情報がすくのおっせ……』


「こちらも掴んでる情報は殆どない。どちらかというと、的なもんや」


コーヒーを飲み終え、玄関に向かう伏見氏。


「ほな、頼んだで、シュレン」


ぴしゃっと閉まると気配が消える。


『うへぇ……』


こたつの上で体を伸ばすダク。


「うーん、確かに情報が少なすぎるなぁ……出たとこ勝負、でやるしかないか」


「私もご一緒しましょうか」


腕組して考え込むキツネに、慶子が心配そうに言う。


『うちらだけでいくわ、慶子ちゃん』


「いざとなれば転移を使えば脱出できるけど、ややこしいやつが相手やと逆にこちらサイドの人間は少ないほうがええかもしれへんな」


「わかりました、気をつけてくださいね、キツネさん、ダクさん」


深夜、伏見稲荷の駐車場。

シュレンの出で立ちで鳥居の影から現れたキツネとダク。

物陰を選んで駐車場に近づくと、5人の若者が10名ほどの警察官と思しき面々ともみ合っている。


出遅れたか、とキツネは思ったが様子がおかしい。


人数的に圧倒しているはずの警察官が、ただ一人の若者に投げ飛ばされている。

他の若者が加勢しないのか、とよく観察するとどうしていいのかわからずオロオロとしているのみである。


一人の警官が安全装置を外して発砲する。だが、出血して痛みを感じているはずの若者は何もなかったかのように、発砲した警官に近づく。


続けて発泡する警官。弾丸切れになるまで撃ち続けたのに平然と近づく若者に腰を抜かす。


「う、うわぁぁぁっ!! 」


「あかん、ダク、行くで」


高速で駆け抜け、若者と警官の間に立つシュレン。


『シュレン……参上……』


どこから取り出したのか、木刀を構え、振りかざす。


俊敏な動きで木刀を振るい、若者を警官から引き離す。


「ぐぁぁぁぁっ! 」


シュレンに掴みかかろうとする若者。

顔をよく見ると、尋常ではない表情を浮かべ、苦しんでいるようにも見える。


『キツネ、こいつおかしいで』


「薬物で痛みの感覚とか無い、ちゅうことか……あと、精神も蝕まれてる……? 」


若者の攻撃を木刀で捌き、間合いを取るシュレン。


「ダク、両手と両足、ついでに、胴体、頭、舌を光の筒でピッタリと包むことはできるか? 空気は通す感じで」


『拘束するんやな、やってみる』


両手で構えていた木刀を右手に持ち替え、左手を若者にかざすと数個の光の筒が現れ、若者に飛んでいくと各部を包んで拘束する。バランスが取れず、若者は地面に倒れるがまだもがいている。


『拘束完了』

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