第22話 算段

「そういえば小町、ダクのこと店の人は……」


「ああ、竹の筒に入ったキツネのぬいぐるみ、いうて説明してるから、大丈夫。動くのもお父さんもお母さんも、最近のぬいぐるみはすごいなぁ、いうてたわ」


「そうか、それやったら助かるわ……変なことに巻き込む気はないんやけど、ちょっと奴やから何があるかわからん言う心配もちょっとあってなぁ」


キツネはダクを見ながら、複雑な表情で小町に告げる。


「妖怪好きのキツネと友達付き合いしてきて、変なことが全く無かったわけやないからなぁ」


そう言って、なにやら思い出し笑いをする小町。


「……まぁダクちゃんのことは誰にも言わへんし、伏見さんのことも、この集まりのことも胸に納めとくさかい、でも、ウチで役に立てることがあったら言うてな」


「ありがとう、小町」


「ところでキツネ君。銭儲けの方は、なんか算段ついたか? 」


指で輪っかを作り、お金を表現する伏見氏の問いかけに、難しい顔になるキツネ。


「色々おもてたことを調べてみたんですが、どうにも法律の壁が……」


「そやろうなぁ。ダクの力 使つこて物を持ってきても、前後の関係がはっきりせえへんかったら疑われるだけやしな」


「輸入も、輸出も、沈没船やら埋蔵金やら、色々考えたんですけどねぇ」


「楽をして金儲けはできない、というのがうちの家訓です、キツネさん」


何故かドヤ顔の慶子。


「やろうなぁ」


頭を掻くキツネ。


「で、ワシからの提案や。キツネ君がええ方法を考えてる間、いくつかの案件をそのウママチキツネコーポレーションへ南雲氏から回すよう、段取りするから、コンサルタント料をもらえばええやろ」


『この段で我々に働かせるおつもりですか』


ダクはこたつの上でだらっと半身を投げ出す。


「そういうこっちゃ」


ニコニコ顔の伏見氏。席を立ち、


「ほな、今日はごちそうさん」


と玄関に向かう。扉がぴしゃっと閉まると、また気配がなくなった。


「すまんなぁ、ダク。もうちょっとうまいこと考えつくかと思ったんやけど」


『ああ、これは伏見の方様へのポーズやから。なんでもホイホイ受ける安いもんとちゃいますえ、ゆう』


「お父様経由でお仕事をいただける、ということなら当座はなんとかなるでしょうね。私もちょっと考えてみますわ」


慶子と小町が湯豆腐の後片付けをしてくれる。


「あ、ええよ、俺やっとくさかい」


「ごちそうになったのに何もしないわけにはいきませんわ」


「うちらで片付けするさかい、キツネはまたコーヒー淹れて」


「ほーい、了解」


『ウチはなんもでけへんから、謝っとくわ、堪忍な』


「ええよ、ダクちゃん」


ダクを一旦こたつへ半分突っ込み、こたつの上を布巾で拭き、再びダクをこたつを乗せる。

台所からみかんの入ったかごを持ってきて、ダクの横に置く。


台所で作業する二人を見ながら、コーヒーを淹れる準備をするキツネ。


「(この家にこんなに人が居るなんて、随分久しぶりの気ぃするなぁ……)」


人の声、家の明かり。キツネ亭は数年前まで毎日のように繰り返していた賑やかさを、久しぶりに取り戻していた。

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