第3章 シュレンの暗(?)躍

第20話 発覚

チームシュレン、という謎のチームが結成されて2週間が過ぎた。

キツネがダクと出会って約1ヶ月。年の瀬も迫って、京都の、冬。


『うう……前からおもとったけど……江戸時代より寒なっとるんちゃうか』


こたつから竹筒を半分出し、震えながら暖を取るダク。


「小氷期とかあったらしいけど、そうは変わらんやろ」


ズズっとコーヒーを飲むキツネ。


キツネが会社を興す話は、ほぼ南雲慶子に丸投げし、キツネはバタバタした11月を振り返り、大学で自分の研究などに精を出していた。


並行して、考えていたことを調べてみる。


 >公海 沈没船 所有権


ゴーグル先生によると、これは現在では諸々ややこしいことになりそうだ。


 >埋蔵金 所有権


これも諸々めんどくさそう。


ダクの食費を稼ぐためなので、ここはダクの能力を活用したいところではあるが、方法は色々ありそうなのに、現代社会を生きる上で法律が邪魔をする。


輸入雑貨の仕入れ、というものもキツネは考えた。

一部に有名な個人の輸入商が活躍するご時世。だが必要と思われるセンスがキツネにはない。ダクの能力を使えば、海外へ直接転移して、買い付けて持ってくればいいわけで、輸送コストが掛からない。倉庫も南雲慶子に手配してもらえばコストは掛かってもなんとかなるだろう、と思ったりもしたのだが。


さて、寒い寒いとは言いながらダクのお揚げさんを貰い受けに行かねばならない。

コートとマフラーで防寒をし、寒い寒いと震えるダクを懐に入れ、山上豆腐店を訪れるキツネ。


「おはようさん、キツネ、今日も寒いなぁ」


小町はキツネと同じ大学に通ってはいるが、空いた時間の殆どを実家の手伝いに当てている。朝早くから店を手伝い、学業に励んで、先程まで寒さに震えてこたつに埋もれていた二人とはエライ違いである。


「納品書のサイン終わったら、お揚げさんここにまたおいてあるから。フードコンテナ交換して持っていって。……ちっちゃいキツネちゃん、ホンマにかわいらしいなぁ」


「……え」


固まるキツネ。


「……ちっちゃいキツネ、とは」


懐に目をやると、ダクが身を乗り出してお揚げさんの匂いを嗅いでいる。


「だ、ダク!顔だしたらアカンやろ!」


『……はっ!? 』


「え、もしかして秘密やったん?ちゅうか、伏見さんが初めて来はったときかな?あの時から店来るたびに顔だしてたよ、ちっちゃいキツネちゃん」


「え、あ、あの」


キツネもダクも、パニックになっている。


「多分、内緒にしとかなアカンのやろ?そやから今回はじめて声掛けたんよ。顔、出てるえ、って」


小町は優しい笑顔でダクを見やる。


「キツネの研究のなんやろうなぁ、っておもてたんよ。ダクちゃん、っていうん?お揚げさん好きなんやね、これ、1枚サービスしたげるわ」


きつねうどん用の小さめのお揚げさんを紙にくるんでダクに渡す小町。


ダクの視線はお揚げさんに向かい、問題の解決に関してはさじを投げたらしい。


「ご、ごめん、小町。くれぐれも内緒で……」


「わかってるて。今晩暇ある?よかったらキツネ亭で湯豆腐せえへん?」


「おお、ええな!タレは作っとく、ポン酢もええの用意してあるから、あと、秘密の共有者を一人呼んで」


「秘密の共有者にはもう一人、ワシもいれてもらおか」


ダクが震える間もなく、伏見氏がキツネの肩を叩く。

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