第18話 お願い

、という南雲慶子の言葉にビクビクするキツネ。


「……」


「……」


ちゃぶ台をはさみ、無言の二人。


「……先程の、人間脱水機、ですか」


「!」


「いえ、全然気にしておりませんわ。ええ、全く気にしておりません」


「(絶対に気にしてるヤツやん! )」


「嫁入り前の娘にあんな酷いことをする人がこの世にいるなんて、ええ、全く」


「はは、ははは……」


声に少々殺気がこもっているのはキツネの気のせい、であろうか。


改めて南雲慶子を見るキツネ。


「……何か? 」


「……、あ、すみません」


「あの……私と戦ったシュレン様は、あなたではないですね? 」


「えっ、いや」


戸惑うキツネ、急に震えだすちゃぶ台の竹筒。キツネの肩に、背後からポンと手が置かれる。


「うわっ!って、伏見さん!! 」


「キツネ君、困っとるようやな」


「あ、あなたはどこから!? 」


「はじめまして、南雲慶子さん。ワシはアンタのお父さんに、シュレンを紹介した伏見っちゅうもんや」


「あ、あなた様が、あの、その節は大変お世話に」


「ワシがしたんはシュレンを紹介しただけや。ダク、姿を見せい。この場はワシが納める」


『ハッ』


ちゃぶ台の上の竹筒からちょこん、と顔を出すダク。それを見て言葉を失う慶子。


キツネとダクの出会いから伏見氏との遭遇、慶子を助けるに至った一連の流れを伏見氏が説明する。


「ダクがあんたにやったグルグル、っちゅうのはやりすぎかもしれんが、それだけダクは自分たちの秘密が知れんのを恐れたんや。あんたも調べんな、と言われたシュレンのことを追いかけた。それでおあいこ、ちゅうことで納めて」


「鷹来様、ダク様、私のワガママのせいで申し訳ございませんでした」


頭を下げる慶子。


「いや、頭を上げて」


『慶子ハン、伏見の方様に間入ってもらうようなことを仕出かしたウチも悪い、ごめんな』


「ふむ。これで手打ち、っちゅうことでええな。3人共。それで、や」


キツネに目をやる伏見氏。


キツネくんが思いついとることを、南雲恵子さんに相談してみよし。きっと、悪いようにはしはらへん。ここまで打ち明けたからには、シュレンの活動も協力してもらえるほうがありがたい」


『(シュレンの活動て……まだ働かせるおつもりか)』


「ダク、まだまだ働いてもらうや」


『!? 喜んで働かせてもらいます!! 』


机から飛び降り、平伏するダク。


「ははは……ええと、南雲さん、先程の件、ダクと二人、改めて謝らせてください。すんませんでした。それで、厚かましいんですが、お願い、というか、相談したいことがあります」


「私でできることでしたら、何なりと」


ニッコリ笑う慶子。


「え、ええと」


先程の殺気を放っていた慶子を思い浮かべ、女性は怖い、と内心思いつつ、説明を始めるキツネ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る