第17話 決着

「お前が偽モンのシュレンか! 」


白い狐面、着流しの、キツネよりも少々小柄な存在を前に、キツネが叫ぶ。


「……私がシュレンでないことを知るのは本物のみ……やっと……見つけた」


「(しもたっ)」


『筒術、変化へんげ

光の筒がキツネを一瞬で包み、狐面の着流し-シュレンへと姿を変える。


「(すまん、ダク)」


「本物に間違いなかろうが……参る」


木刀を構え、シュレンに連続で打ち込む偽シュレン。

ダクがキツネの体を動かし、すべて手で払い、木刀を吹き飛ばす。

「ッ! 」


『アンタの……負けや。なんでこんなことしたんか教えてもらおか、南雲慶子ハン? 』


「(え!? こないだの南雲氏のお嬢さん!? )」


「……お父様から聞きました。最初は口止めされていると言われましたが私の命の恩人。なんとか聞き出したのがシュレンという名前と狐面の着流し。」


「(そうか、視覚阻害してなかったから南雲氏にはこの姿がそのまま見えてたんか)」


「あらゆる手を使い、祇園でのシュレンの噂に行き着きました。シュレンになりすませば本物が現れる。そう思ったのです」


『まんまと引っかかった、ちゅうわけやな』


「シュレン様、私は」


『残念やけど。アンタはウチの秘密を知った』


シュレンが手をかざすと光の筒が現れ、偽シュレンを包む。


「待てッ、ダク! 」


『キツネは黙っとき……ウチらのこと安易に他人に知れたら、それでウチラが不幸になる……伏見の方様に頼まれた南雲氏は仕方ないにしても、こないなことしでかしたこの娘は……』


「シュレン様、命をシュレン様に奪われるなら本望でございます。ただ、私の感謝の気持を、お伝えできれば、それで」


「(あかん、ダク、それだけは!! )」」


『喰らい』


回転を始める光の筒。


……1分ほどで回転が止まり、開放される偽シュレン。


「……うっ……」


近くにあったバケツに胃の内容物をリバースする偽シュレン、というか、狐面を外したので南雲慶子。黒アメーバに乗っ取られて恐ろしい顔つきになったりリバースさせられたり、この娘、踏んだり蹴ったりである。


『人間脱水機の刑や』


「嫁入り前の娘さんにそんなん、あかんゆうたのに……」


『さて、ウチは気ぃ済んだから、あとはキツネに任せるわ』


光の筒がシュレンを通過し、キツネが残される。


「えぇ・・・これ、俺があとの段取りせんならんの・・・?」


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


ようやく落ち着いた南雲慶子をキツネ亭に連れてくるキツネ。


「ええ、っと、まずはすんません。ほら、ダクも謝り」


懐からは出ないダク。


『(ウチが出るわけにはいかんやろ、それこそ秘密が知れてまう)』


「(それもそうか)」


「表札を拝見しました。鷹来さん、とおっしゃるのですね。改めて、今回の病気の件、ありがとうございました。お父様の話ではもうお医者様も見放したとのことでしたので、命があるだけありがたいと思っております。また、偽者になりおびき出すような真似をしたことに心より謝罪申し上げます」


、ということは。内心冷や汗が止まらないキツネであった。

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