第15話 仕組み

『ああ、びっくりした』


ダクは机の上でひれ伏していたが、顔を少し上げ、伏見氏の気配がなくなったことを感じてようやく体勢をもとに戻した。


『今回の件、段取りよういってよかったな』


「ダクの能力が管、じゃなくて筒に関連付けられるもの、ちゅうこととの皆さんを相手したときの話をよう考えてみたんやわ。監視カメラで特定の物を抜き取る、そういうことができたんやったら、例えば濁った水を通して濾過できるんやろか、パンチしてきたときの手を空間移動させることができる、いうことは入り口出口を指定してやれば遠いところにも行けるんやないか、って」


『あのを筒に入れて、筒から押し出すときに中に居る寄生体? を通さんようにして筒に残す、で、筒を高速回転させて唯一開けた穴の出口を太陽の紅炎、プロミネンス、か、あそこに一直線に行くような宇宙空間に持っていって一気に放出する』


「正直、相手が何モンかようわからんけど、太陽には勝てんやろ」


『ヨコハマファンが聞いたら泣くんちゃうか』


「そのタイヨウやない」


『つなげた空間からの干渉は逆方向には伝わらんようにすれば太陽の色んな力も防げる』


「相変わらず科学法則を一切無視しとるな」


『それで当座のお揚げさん代も稼げたし、ええんとちゃう? 』


「そうやな、あとはこれからのこと考えな。まぁ、いくつか考えとるんやけど」


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翌朝。

日課の早朝散歩。ダクをショルダーバッグに収め、ルートにある山上豆腐へと向かう。


「キツネ、おはようさん」


小町がキツネに気づき、店先まで出てくる。


「小町、おはようさん。伏見さんから頼まれてる100枚、何時頃とりにきたらええやろ? 」


「もうできてるよ、お父さんも喜んでた、うちの味を気に入ってそない買うてもろうてありがたいって」


「(伏見さんって、ホンマに何者やろう?伏見のお稲荷さんとは関係ない、とは言うてはったけど)」


大きめのフードコンテナに詰められたお揚げさん、100枚。


「キツネ、一人で持てる? 」


「おう、まかせとき」


「あと、納品書に受取のサインをお願い。で、架け払いの請求書は月末締めで翌月10日払でお願いしたいのと、振込先がここ、振込手数料は引いてもろて構いません、って伝えておいてくれる? 」


所定の用紙なのだろう、キツネは受取のサインをして控えと、振込先などの用紙を預かる。


キツネ亭に持ち帰り、25枚を大皿に盛り付け、神棚に捧げる。


75枚はダクが戴く。皿に盛り付けようか、というキツネの提案も


『こんなけ盛り付けるんは大変やし、フードコンテナから直接いただけるんは、ある意味最高の贅沢や』


とやんわり断られる。ダクなりの配慮なのだろう。


神棚に捧げられたお揚げさんも気づいたときにはすでになくなっており、伏見氏か、何者かが持ち帰っているのだろう。


そんな日が続く。そして、1週間後、山上豆腐店。


「そうや、祇園の話、聞いた? 」


「なんかあった? 」


「祇園に、狐面の怪人? が出てるって噂になってるんよ」


「へ、へぇ」


「でな、今朝早うに祇園通ってくるうちの従業員の人が、見たんやって! 」


「……え? 」


「狐面に、着流しの人。時間も時間やったしまだ暗いやんか?こわなってそのまま自転車で走ってうちに来たって」


「……そうか……、あ、怖い話やな、祇園の方行く機会はそうそうないけど、気ぃつけるわ」


「物騒やから、まぁ、お互い気ぃつけよな」


「おう、じゃ、また明日! 」


キツネ亭に戻る二人。


「ダク」


『誰やろうなぁ? ウチらの偽モン』

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