第14話 名コンビ

突然、ちゃぶ台の向かいに現れる伏見氏。


「ふ、伏見さん!びっくりさせんといてくださいよ!じょ、冗談ですから! 」


『ふ、伏見の方様におかれましてはご機嫌麗しゅう……』


「ダク、心にもないこと言うな。ぜんぶわかっとんのやぞ」


『そ、そのようなことは』


へへー、と、ちゃぶ台の上でひれ伏すダク。


「南雲氏の件、ほんまにようやってくれた。キツネ君、ダク。おおきにな」


頭を下げる伏見氏。


「や、やめてください!頭上げてください! 」


『そうです、あとがこわいです』


「ダク、余計なこと言うなて……」


『つい本心が』


「きみら、ほんまおもろいなぁ」


伏見氏は二人のやり取りを見て笑い出す。


「もう、勘弁してくださいよ」


「今回の……黒アメーバとでもしとこうか、アイツはいわゆる神仏の領域のものではなく、また医術の領域のものでない、ホンマに厄介な奴やったんや」


「そうやったんですね」


「それをシュレンが見事に片付けた、ちゅうのは、伏見界隈でも、ちょっとした話題になっとる。狐面つけてふざけたことやっとったし、最初は消そ、ちゅう話も出とったんやけど」


消すとは穏やかではない。腹の底が冷たくなったような感覚を覚えるキツネ。


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「キツネ君、キミ、コーヒー淹れるんうまいなぁ」


「親父の影響ですかね、いつかは自分で焙煎とかしてみたいんですけど」


「ご両親は? 」


「2年前、交通事故で……」


「ああ、これはすまんことを聞いた」


「あ、いえ、もう気持ちの整理はついてますから」


「……そうか、いや、美味しいコーヒーやった。また来させてもらうわ」


「今度は前もってゆうといてもらうと心の準備が出来て助かります」


チラッとダクを見やると、未だブルブル震えて平伏している。


「そや、キツネ君。これは今回のお礼や」


伏見氏が懐から分厚い封筒をキツネに差し出す。


「え、これは」


「南雲氏にシュレンについて探らんよう、念押しで伝えたら、それはもう強引に渡された。こういうもんを受け取ると諸々面倒事になるからホンマは受け取らへんのやけどな」


「はぁ」


『恵まれへん人への寄付ゆうことで、一束だけもろときます』


『伏見の方様、うちの声色でしゃべんのはご勘弁ください』


「ちゅうことで、とりあえずこれは受け取っとき。100万でも食費、一ヶ月かそこらしか持たへんやろ」


「うーん、伏見さんがそういわはるんやったら……これはありがたく頂戴します。ただ食費に関しては……ちょっと考えてることがいくつかあるんで、これがなくなるまでになんとかしたいと思います」


「そうか、それは感心な心がけや。ほな、な」


キツネ亭を出る伏見氏。ピシャっと扉が閉まると、姿は消えていた。

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