第8話 種明かし

キツネ亭に戻るシュレン、というか、体のコントロールを取り戻したキツネ。


着物を脱ぎ、部屋着に着替えている。

懐に収まっていたダクは、机の上に置かれていた。


「あの、ダク、説明を」


『まず、シュレン、ってええ名前やろ』


「手練手管(しゅれんてくだ)から、やろ? 」


『さすがキツネ、ようわかったな』


「いや、名前やのうて」


『目の前で男たちが倒れたんわな。うちの能力の一つなんや』


「能力? 」


『うちの能力は管に関連付けられるもんなんや』


「くだ? 」


『キツネの顔に拳がヒットする数ミリ直前で異空間に管をつなぐ。

でその管の出口を殴りかかる男のこめかみにワープさせんの』


「痛っ! 」


想像しただけで痛い。


『当たる先もコントロールできるんよ。どんな格闘技の達人でも、警戒してへんへのピンポイントヒットは気ぃ失う、鍛えようがないさかいな』


「あの鉄砲の弾も同じ理屈……? 」


『そうそう、あんたやっぱり理解早いなぁ』


「途中と最後に男の目の前に出した木の棒は……? 」


『コピーして、時間をずらしてペースト、1回の突きをコピーして10回ペーストすれば』


「質量保存の法則とかなんかもうぐちゃぐちゃやな」


そうか、とキツネは思考を巡らせる。


この能力で人の財産を盗んだりすることで、管狐の飼い主連中は裕福になったのか。


『アンタの考えてる通り。お揚げさんの為やぁ、言うて言われるままに犯罪まがいのことに手ぇ出して。最後は封印される』


「ただ……今回のこれは大丈夫なんやろうか? 」


『周囲の監視カメラはシュレンの姿を映せてない。レンズ内部でをつないでシュレンだけを映さんようにした。今回の連中も目のまん前にをおいて、視覚阻害をしたった。シュレンの背格好は見たモン全員が違う証言をする。視覚の入口と出口を屈折させたり、色変換したりしたさかい』


「なかなかエゲツない……」


『あと2回だけ、これをやる。悪いけど、手伝って』


「え?2回? 」


『ウチがなんの考えもなしにこんなことやってる思たら大間違い。ちゃんと、考えがあるんよ』


「うーん……確かに、何かの意図は感じるけど……」


『全てはウチのお揚げさんのために! 』


「うーん、了解。確かに、バイトとかこれ以上出来ひんさかいな」


今日の募金活動、2万円。このお金は恵まれない人、キツネのために……というか、ダクのために使われるのである。


シャワーを浴び、布団に潜り込むキツネ。それをみてダクは


『これもひいてはキツネのためや。ま、見とき』


そうつぶやいて自分も筒の中に収まった。

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