それでも町は
早稲田暴力会
一
どの街から紛れた桜の花びらかピンクの燃えるごみだと思う
吐瀉物の乾いた地面に鳥は群れやがて飛び立つそこがスタート
音のない無数のからだを詰めバスは知らない街を豊かにしにいく
職質をされなくなったら終わりだと話し合ってる今日の現場は
助六を高級和食と呼ぶ仲の斎藤さんの歳を知らない
海にいたことを知らない人といる軍手を外して点字ブロックを避けた
自慰をするためにネカフェの部屋につきついでにシャワーを浴びて帰ろう
猛暑日の通天閣の頂上で見ればどこでも同じ町かな
見切り品のシールを見ずにパンを買う余裕をください 今日は七夕
月水木金土日と働いて明日の仕事が見つかりません
保険金をかけるお金のない人とスマホで求人サイトを見ている
人らしい会話の少なくなった頃自殺を思う勇気も消えた
人足の仕事は一人に一つだけ指紋を変えるためのまち針
外国よりまだましだよと誰かが言う言葉は夜空に溶け込み朝へ
派遣先の街の神社の一角の犬が吠えてる晴天の先に
高校も出れない出てもここにいる人と廃棄のビールを飲んだ
道端で眠っていても肉体の疲れはとれる心を捨てれば
動物園公園前の静けさに混ざっていった欲、汗、人、俺
献血に行っても嫌な目をされる手取り十一万でも腐臭
炊き出しに来ていた男が道端に煙草を捨てる慣れた手つきで
夏と冬以外の季節がない街の正社員は明日祝日
サンタとして働き抜いた俺たちのからだの転がる三角公園
斎藤さんはもう動けない体ですコンクリートと彼とにみぞれは降るだけ
この町の喪服は作業着 焼香は無意味に日差しにひかる朝まで
オーバードーズして死んだのだと主張する男のまぶたの黒い静けさ
日本を飛ぶ旅客機はどこへ行く夜景の一つのスーパー玉手
雑巾じゃないです生きているのです国道は昨夜の雨の跡だけ残して
もらったら仲間たちとの関係はそれまでだろうか生活保護よ
道端がごみ箱代わりのこの町に ペニス 幼稚に描いても大人のものだ
死ぬまではそれでもここが故郷だ明け方の野犬の喧嘩を応援しながら
※第六十一回短歌研究新人賞最終選考通過作を改稿した作品になります。
それでも町は 早稲田暴力会 @wasebou
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