恣意的な愛
おぽちょ
第1話 ことのはじまり
私は昔から物に対して執着が強かった。小さい頃のお気に入りのおもちゃはずっと捨てられないし、小学校の教科書なんかも思い出が強いものは取っておいてある。それは人に対しても同じで、友達でも特に仲良くなった子がいればずっとその人に付きまとっていた。
依存癖があって、なにより別れに弱いのだ。”出会いがあれば必ず別れが来る”、というが、私の興味が完全に失せるか、もしくは私が死ぬまで別れは来ないでほしいと思っている。
極端だが私の別れとは「死」に直結する。物との別れは、壊れたとき。人との別れは、その人が亡くなったとき。なので、これまで学校を卒業して今までの友人と会えなくなっても、寂しさはあれど別れという認識はなかった。生きているからだ。
でも、高校生になったとき、世の中には生きていても二度と会ってはいけない別れがあるということを知った。恋人に振られたときだ。
出会いは高校2年のとき、彼に告白されたことをきっかけに付き合い始めた。人生で初めての恋愛に私はどっぷり浸かった。毎日の連絡、いつも一緒に下校、休日のデート。学業と部活以外の時間をすべて彼に費やした。告白されて付き合ったが、明らかに私のほうが彼に依存していた。
そして卒業式の前日、私は彼に振られた。理由は価値観の違い。詳しいことは教えてもらえなかった。私は朝までメッセージと電話を繰り返し、寝ないで卒業式に出た。卒業式が終わったあと、彼は最後の思い出に写真を撮ろうと言ってきた。無神経だと思った。
その翌日、卒業式に撮った写真を送ってくると彼は私のあらゆるSNS、メールアドレス、電話番号をブロックした。私は完全に連絡する術をなくした。直接家に行く方法もあったが、はっきりと拒否されるのが怖かった。大学入学までの期間、私はまったく人と関わらず自室にこもっていた。私に間違いがあったのかもしれないが、相手のあまりの身勝手さに憤りと悲しみと、それでもまだ好きである気持ちと、あらゆる感情が私の中を駆け巡った。
その時から私は変わろうと思った。依存するのではなく、されるようにしようと。私なしでは生きれない人を作って、その人と一生を添い遂げようと。
恣意的な愛 おぽちょ @potyomuki
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