第2話 夏休み前、生徒会室
「熱いっす!」
軽薄そうな声が斜向かいから飛んで来る。
「クーラー使えないんだからしょうがないじゃない」
長い黒髪をポニーテールに結んだ女子生徒が答え、作業を促す。
「生徒会室なんだから扇風機くらい置いて欲しいっすよね〜」
(そこはほんとに同感…)
こんな熱い日に私たちだけ書類仕事なんてほんとに嫌になる。
でも、
「さっきから貴方の分の仕事が全然減ってないんだけど」
彼女は呆れ顔で彼の方を見る。
彼の横に積まれた書類は数こそ少ないが、作業を初めてからほとんど減っていない。
「だってやる気出ないんですもん!」
(あまりにも清々しい言い訳…言い訳にもなってないか…)
ハァっとため息をついて、
「半分こっちにちょうだい、手伝うから」
早く終わらせましょと言って手をだす。
「もうちょっと……に…………な」
彼が何か呟いたが声が小さくてほとんど聞き取れなかった。
「じゃあパパっと終わらせちゃいましょ!」
(急にやる気出したわね…)
まあ仕事が進むなら良いかと書類に手を伸ばす。
「終わったっすね〜」
「ほとんど私がやってたけどね…」
二人で伸びをしながら息をつく。
時計はもう16:00を回っている。
(結構かかっちゃったわね…)
(そういえば明日から夏休みね、まあ今年も特に予定も無いんだけど…)
「そろそろ帰りましょ」
「先輩!」
さっきまで机に伏せていた後輩君が勢いよく立ち上がる。
「今度の週末にある花火大会、一緒に行きませんか?」
彼はいつになく真面目な顔で私の顔を見つめている。
「私でいいの?」
(自分で言うのもあれだけど、私は地味な方だしクラスでも隅の方にいるタイプなのよ…)
「先輩が良いんです!」
後輩君は迷いなく言い切った。
そして、
「ずっと見てきたんです。確かに先輩に会ったのは今年の春ですけど…」
いつも真面目に頑張ってる姿が好きだと、
「だから先輩が良いんです」
今度は穏やかに、少し震えた声で言ってくれた。
「ありがとう。」
(今年の夏はちょっとだけ忙しくなりそうね)
「一緒に行きましょ、後輩君!」
さっきまで静かだった蝉の声が一際大きく聞こえてきて、これから始まる夏への期待は高まっていく。
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