立てこもり
二人はエルグランドを走らせて県境の土手へ。
利根川の縁のサッカーグラウンドに停車した。
金勘定をするつもりだった。
『すげー!!』
『改めてみるとすげーっすねぇ!?』
二人は金を数える手が震えた。
二人は10分ほど金を数えた。
一点の明かりが近づいていることに気付かずに。
コンコン
『!!』
まただ、もう嫌だよノックは。
二人は同じ気持ちだった。
『すみませーん。開けて頂けますかねえ?』
窓は曇っていたがシルエットでわかる。
警官だ。
『いや、ちょっと無理っすねえ。』
飯塚が適当に答える。
『え?何故ですか?なにかあるんですか?』
『どうしましょ?鵜飼さん。』
『どうしましょ…』
鵜飼はまたも狼狽える。
しかし犯罪の痕跡は既に残してしまっている。
上手くやり過ごす必要などないのだ。
『ちょっと車故障しちゃって、一緒に見て貰えます?』
ウインドウを下げた鵜飼は言った。
『故障?とりあえず免許証いいです?』
『あ、はいはい免許証ね。えーと。はい!』
鵜飼は免許証を渡す振りをして地面に落とした。
警官が拾おうとした隙を付いて急発進する。
飯塚はシートに後頭部を激突させた。
『うほう!!』
テンションは上がりきっていて痛くもなさそうだ。
『やりましたね鵜飼さん!でも免許証良かったんすか?』
『あー、あれね、ただのPontaカード。』
『うはー、鵜飼さんキレるわー。』
『だろう?』
鵜飼は満更でもなさそうである。
『何処いきます?』
『んー…とりあえずどっかで車乗り捨てないとね。多分盗難届出てるし。』
そして時は、立てこもり10分前まで進む。
『もう…ここに…逃げ込みましよう…はぁ…はぁっ。』
『飯塚くんよ!お前なんで寝ちゃうの!?』
鵜飼は激高した。
『だって…はぁ…寝てないから…はぁ、はぁ…』
『見張り交代でって言ったじゃん!!』
その後もエルグランドで逃げ続け夜が明けるころ、二人は開店前のショッピングモールの駐車場に停車した。
「1時間交代で休もう」と約束し、鵜飼が最初に仮眠を取った。
なんだかんだ、飯塚もその15分後には寝てしまったと言う。
そして気付けば警備員と警官に囲まれていた。
鵜飼はパニックになりまたも車を急発進させ、正面にいた警備員を撥ねてしまった。
そして今、寂れた飲み屋街に居り、飯塚に立てこもりを提案されたところだ。
『ここがいいです。窓もあるし、警察と交渉できるじゃないすか!』
呼吸が整ったらしく、飯塚は早口で言った。
『立てこもりって袋小路じゃねーか!?それこそ。』
『いやいや、何処へいっても袋小路です。』
言いだしっぺが何を言う、鵜飼は飯塚を殴り飛ばしたかった。
『もういい!!…入るぞ!金担げ!』
階段を上がる。2階。
二人は入り口前の踊り場で立ち止まった。
『どんな感じでいきます?』
『は?』
『いや、最初から元気よくウワッと行くのか、ある程度腹ごしらえしてからカマすのか…』
『………もういい!最初から元気いっぱいに行くぞ!』
二人は居酒屋に乗り込んだ。
『おいてめーら!……』
言う途中で、気が付いた。
(あれ?こいつら)
客はそのグループだけだった。
そのグループは、鵜飼の中学の同窓生達だった。
『あれ鵜飼じゃね!?』
ホームルーム 大豆 @kkkksksk
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