強盗 4

なんだかんだ、鵜飼は飯塚に押し切られた。


と言うよりも、飯塚の作戦を聞く途中から鵜飼は半分乗り気になっていた。


中学では虐められ、高校は中退。両親とは不仲。

住み家は県内の相場の半額程度の昭和風情漂うアパート。

三十路にさしかかり、貯金は無く、禿げ上がり、恋人もない。

非生産的と言う言葉を見事体現している。

酸素を生み出している分植物の方がまだ有意義である。


やりたい。やるしかない。


『銃、俺が持っててもいいなら、やる。』


さすがに飯塚に虎の子を携えさせるのは心許ない。

『いっすよ。使うか分かんないし。あくまで護身用ですよ。スタッフ全員帰ったと思ったら店長だけ隠れて残ってました、とかの時のために。』


そうか。それもありえる。

そうなると空き巣ではなく強盗になるのか。



『じゃあ、明日!』 飯塚が唐突に言う。


『あすぅ!?』


『善は急がないと!』

『完璧悪だろーがよ!』


『お兄ちゃんたちこれサービス。』

老婆のマスターは手作り感満載の、野菜と魚肉ソーセージ炒めを運んできた。


美味かった。


『ほら、ツイてんすよ俺等。』


飯塚は煙草に火を付けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る