強盗 2

『飯塚くんよ…何言ってんの!?』


『いやー、考えたんすよ。このまま車取りに行ったら多分捕まる。このまま金抱えて逃げても捕まる。となりゃ立て篭もって警察と交渉するしかないっしょ!』


飯塚は事も無げに言う。


鵜飼と飯塚は今日、強盗を働いた。


強盗と言うのは結果論だが。



二人は同じ警備会社に登録するフリーターである。


二人は同じパチンコ店に派遣された。


鵜飼としては「人とコミュニケーションを取らなくていい」と言う利点を期待して、パチンコ店の夜間警備のアルバイトを選んだが、登録して早々自分より5つもしたの25歳の若者と組まされた。


最初こそ納得がいかず飯塚を敬遠していたが、ひょんなことから意気投合した。


『ちょっと警備員さん。』

ある日飯塚がパチンコ店のスタッフに呼び止められた。

出勤するのは閉店一時間前なのでスタッフはまだ在籍している。


『字、読めないんですけど。日誌の意味なくないすか?』

そうスタッフに叱責されている飯塚を見かけた。


飯塚は文字が壊滅的に苦手だった。

覚え立ての少年より酷いかも知れない。


『俺、字下手すぎて「知的障害」って虐められてたんすよー。普通学科に通ってたのにひどいとおもいません?』

その日の閉店後、鵜飼からはなにも言っていないのに飯塚は自らの暗い経験を打ち明けた


とは言っても飯塚はそれを引きずっている風はなく、見た目は地味でこそあるが鵜飼よりは社会適合者に近く見えた。


飯塚は身長は185前後と長身だが、体重は恐らくは60キロもなさそうに見えた。

典型的な「いじられ体型」である。


髪型は、今日日死語となった「スポーツ刈り」と言う言葉がピタリ当てはまる。


実年齢25だが、こいつは店で酒を買えないだろうな。

鵜飼がそう思うほど童顔である。



対して鵜飼は165センチの身長で75キロの体重。

デブだなあと言われる程ではないが間違ってもスタイリッシュではない。


髪は中学の頃から自分で切っていたが、20代中盤で徐々に禿げ始め28の時からは隠せなくなりとうとうスキンヘッドにした。

 

一見すると元虐められっ子と言うよりは、ただの危険人物である。



二人は被虐め体験と言う共通点を持っていた。



鵜飼は多くを語りたがらなかったが、飯塚は『俺ウンコ食わされたことありますよ!』

と笑って打ち明ける。


闇を引きずっていない分こいつには負けてるかもな、と時折鵜飼は思った。


鵜飼は飯塚をよく飲みに誘った。奢ることはなかったが飯塚は毎回誘いに乗った。


『いやー、中学のいじめっ子に会ったら刺しちゃうかもっすよ!あっはっはっはっは!』


飯塚との酒は楽しかった。いつもこんなダークな話題で盛り上がれたからだ。


そしてある日持ち掛けられた。


『今度店の売り上げ攫っちゃいません!?』




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