第74話 汽車で②
ランの問いかけを無視した俺が行った先は普通に面白みもなく売店であった。
俺の考えは話が出ないならご飯でも食って話せない状況にしちゃえばいいじゃんかと考えつき昼飯を買うこととした。まだ、俺達は昼に何も食っていなかったのでちょうどいいと思っていた。
特に売店で語るようなことは起こらなかった。そりゃ、売店で何か起きたらそれはそれは問題である。
とりあえず、おにぎりを2個買ってランの元に帰ろうとした。
ゴツン
俺は見知らぬおじさんと肩と肩がぶつかってしまった。
「すいません」
俺はとっさに謝ったがおじさんの方はこちらを振り向くことなどせずそのまま車両の向こうへと歩いて行ってしまった。
何か言えよと思ったが特に気にすることなくそのまま歩き始めようとする。そう言えば、今のおじさんの恰好黒いコートにサングラス、マスク見るからに怪しいような……まぁ、気のせいか。
俺はやはり気にすることなくランの元へと歩いて行った。
「ラン」
俺はランの元へ来ると声をかけた。後ろから声をかけたのでビクンと体が震えたのがわかった。
「誰ってギンか」
誰が声をかけてきたのかわからなかったみたいで警戒したみたいだったが俺の顔を見るとすぐに警戒心を解いてくれた。そりゃ、解くよなと思ったのは言わない。
「昼食買ってきたよ」
「あ、ありがと」
俺はランが顔を赤めてお礼を言うのに照れて乱暴におにぎりを渡す。ランはおにぎりをすぐに食べ始める。俺もそれに続いておにぎりを食べる。2人しておにぎりを食べ始めたため無言の、沈黙の時間が生まれた。
「ごちそうさま」
ランがおにぎりを食べ終えると同時に俺も食べ終わった。
この後、さすがに沈黙になるのは俺には辛いので特に面白みも中身もない話をランにし始めた。
「で、今回の討伐は実際どうなんだ」
討伐。これが今回の任務である。俺はあまり遠出をしたくはなかったので別の任務を受けようとしたらランの奴が勝手に任務を受けてしまいそれだけならまだ良いとしてもその任務が2人1組という条件があった。完全に俺の許可を取らずに受けたよね。やるなら一言声をかけてくれよと本当に思う。
「はい、紙」
俺は任務の概要が書かれた紙を渡された。すでにその紙は一度見たのだがと言おうとしたがまあ、とりあえずはもう一度確認をしておくかと思い紙を受け取った。
征伐
ケルベス
場所 サウメリ
賞金 245万
任務条件 2人1組
「っていうか思ったことがあるんだがいいか?」
俺はランに質問する。
「何ギン?」
ランは何の質問かわからないようだ。首をかしげている。そのしぐさにドキッとしたが無理やり意識をしないように話を続けた。
「サウメリって俺達の管轄外じゃないのか?」
管轄外。やはり俺達魔術師も公務員でありこの国ユニバール魔法王国を支えているものだ。魔術師はこの国の中に多くいて支部が勿論存在している。そして、その支部を中心に管轄というものが決められている。要は縄張り争いが起こらないようにするためだ。エイジア支部はユニバールの東部地域を担当しているがサウメリは西部に近い場所に位置しておりもしかするとアメール支部の管轄とかぶってしまうのではないかと俺は思ったのだ。
「いやね、管轄だよ」
答えは即答であり管轄という答えだった。まあ、よくよく考えてみればエイジアの支部に任務の紙が掲示板に張られている時点で管轄だということがわかる。無駄な質問であった。
「悪い。それもそのはずだよな」
「まったく、ギンは何を言っているの」
ランは俺の真意が読めなくて不思議がっていた。だが、大丈夫だ。俺もどうしてこんな質問をしたのかわからないから。
「ところでさラ」
ドッガーン
突然爆発音が発生した。車両も爆発音の影響で大きく揺れて周りの客は「キャー」とか悲鳴を上げている。しかし、幸いなことに脱線をするということはなかった。
「何だ!」
「後ろの方の車両からよ」
ランは声を荒げた俺の対して冷静に音が発生した場所を答えてくれた。俺はランの顔を見てアイコンタクトをするとお互いに後方車両に向かって走っていった。
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