第72話 その頃ギンの家において
ギンがリヴァ討伐の報告をしている頃。ギンの家にて。
ギンの家(ピーチェ視点)
「はぁ~」
私はため息をついていました。
「どうしたの、ピーチェ?」
レイが私があまりにも大きなため息をついたので不思議そうに尋ねてきました。
「いやね。ギンさんの家にせっかくいるんだし、ちょっと探索でもしてみない?」
私はレイに提案していました。私がため息をついていた理由とはギンさんにとりあえずこの大きな1階のリビングでおとなしく待っててと言われてことでした。確かに、約束は守らないといけません。でも、気になることはあるのです。ここはギンさんの家。ギンさんはお父さんが行方不明になりその行方を知るために日夜仕事をしているとこのエイジアの町に帰ってくるときに私達に語ってくれました。そのことから考えると、ギンさんはお父さんが行方不明になってから数年間はこの家に1人で過ごしていたということです。
ギンさんがどんな1人暮らしをしていたのか気になるところです。
「探検?」
レイが質問してきます。私が何を探検したいのか理解していないのでしょう。そこにアイリスが話に交じってきました。アイリスはソファーに横たわった状態で私達の会話を横から聞いていただけでしたが話の内容が面白くなってきたと感じたのか話に交わってきたのです。
「それって、ピーチェはギンさんの部屋の中でも入りたいとでもいうの?」
「ええ、そうよ。レイもアイリスも気になるでしょ?」
「……私は別に」
レイは興味なさそうに答えます。
「いやっほー、それってギンさんの部屋にある男の人なら持っているであろうあの本でも探すんだよね」
アイリスは興味がありすぎて異常なテンションと化していました。というよりもアイリスはそこに興味津々なの? と思いました。
でも、私としてもそのアイリスの意見に対しては同感でもあるので答えます。
「ええ、私もそう思っていたところよ。じゃあ、さっそくギンさんの部屋にでも行きましょう」
「いいね、行こう行こう!」
アイリスは私の意見にのって早速ギンさんの部屋へと向かうためにリビングを出ようとします。しかし、そこに邪魔者が現れます。いや、邪魔者と言うのは悪い言い方ですね。私達の行動を妨げる者が現れました。
「ちょっと、2人とも落ち着きなよ! ギンさんの部屋を勝手に見ちゃダメでしょ。ギンさんはおとなしく待っててと言っていたじゃない。だからここでおとなしく待っていようよ」
レイが私達の行動を止めようとリビングの入り口であり出口であるドアの前に立ちふさがります。レイは私達がギンさんに怒られないように最大限の配慮から止めようとしたのでしょう。しかし、それは今の私たちの好奇心に勝るものではありません。今の私達にとっては好奇心というものが心の半分以上、行動原理の半分以上を占めているのでした。だから、私達はレイに退くように言います。
「レイ。いい子ぶってもダメだよ。レイも気になるでしょ、ギンさんの部屋とか、部屋の中にあるいかにも男の人らしいいかがわしい本とか」
「うっ」
レイはその言葉で少し引きます。その態度を見た私はレイはやはり実はギンさんの部屋を見たいということを察したのでここかというように攻勢を強めます。
「ほらほら、我慢していたら健康に悪いよ。それにやっぱり自分の気持ちにはきちんと素直にならないとね」
私が最後にそう言います。すると、レイの方もその言葉に動かされたのかため息を一回ついてから諦めたかのように言います。
「……分かったよ。素直になればいいのでしょ、素直になれば」
その言葉はやけくそであった。でも、その表情は何かすがすがしさを感じた。やっぱり見たかったのね。私はレイがもっと素直になればいいのにと思ったのでした。
私はどうにかレイの説得に成功したのでさっそくレイ、アイリスの2人と共に階段を上ってギンさんの部屋の前に行きます。そして、ギンさんの部屋の前の扉で私達は立ち止まります。
「こ、この扉の先にギンさんの部屋が……」
レイが声を漏らします。
確かにそうです。このたった1枚の木で作られた扉の先には私達がとても気になっているギンさんの部屋があるのです。たった1枚でしか隔てられていないのにその扉はものすごく高く分厚く私達の侵入を防ぐかのように立ちふさがっています。
「じゃあ、さっそく開けましょう」
私はそう言い、ゆっくりとギンさんの部屋のドアのドアノブを握りそして、回す。ドアは開くことはなかった───ということはなくドアは開いた。
「あ、開いた」
アイリスは開いたことを確認すると早くしてよと私を急かして部屋の中に入ることとする。
私達はギンさんの部屋に無事入れた。
まずは私が最初にギンさんの部屋に入る。その後にレイ、そしてアイリスの順でギンさんの部屋に入る。ギンさんの部屋の扉にはよく見ると鍵が付いていたが運よく今は鍵がかかっていなかった。本当に運が良かったと思う。
さて、私達が入ったギンさんの部屋の感想は何というか、普通でありました。男の人の部屋というのは何ていうか散らかっていたりしていると想像していましたが床には荷物は置いておらず、ほとんどのものが棚や物置にしまってあるようでした。机の上も散らかっておらず道具がきちんと整理整頓してありギンさんが意外ときれい好きというのを垣間見る出来事に思えました。
「意外とギンさんの部屋きれいだね」
レイも私と同じことを考えていたようでした。
「ギンさんに似合わないなあ~」
アイリスは笑いながらその辺のものを物色し始めています。て、物色しちゃダメでしょ。私はアイリスのその違和感ない行動に驚きあきれました。
「……アイリス」
私はアイリスを睨みつけました。じっとです。アイリスの方はあははと苦笑いをして私の視線をかわしそして、素直に物色するのをやめる──何てことをせずさらに物色を始めました。その行動を横で見ている私としてはやはり驚きあきれることしかできないのでした。
私はアイリスに注意を取られていましたが少し離れた場所で壁に掛けられた写真を見つめているレイを発見しました。
「レイ、どうかしたの?」
私はレイが何を見ているのか気になり声をかけてみました。レイの方は私が声をかけるとびくんと体が震えました。
「あ、ピーチェ。えぇーとね。この写真見てくれない?」
レイにそう言われると私は壁にかけてあった数枚の写真を見ることにします。
「えっ! この写真は何っ!」
私はその写真を見ると驚きのあまり声を上げてしまいました。そして、私の声に少し離れた場所でギンさんの部屋をあさっていたアイリスも気が付いたみたいで近寄ってきました。
「どうかしたの、ピーチェ、レイ?」
「いやね。この写真を見て驚いちゃってね」
「この写真? って何この写真!? この女誰?」
私達が見た写真にはギンさんが映っていました。それともう1人全く知らない女の人も映っていました。年はギンさんと同じぐらいで赤色の髪に小柄な体型の方でした。ギンさんとその女の人は万年の笑みでした。特にギンさんの方は私達が知っているギンさんとは全く違うほどの笑顔であり、写真からでも楽しそうにしているのが分かるほどのものでした。
「「「……」」」
私達3人はしばらくその写真をじっくり黙って見ていました。私を含めレイも、アイリスも何も言葉にしません。
ピンポーン
そこに私達の沈黙を妨害する甲高いチャイムの音がしました。それは、玄関のチャイムの音でしょう。
「ど、どうする?」
私は2人に聞きます。チャイムが鳴った以上出ないとまずいです。
「出るしかないと思うよ」
「出るべき」
レイ、アイリスも出るべきだと言ったので私達はまだ気になることがあるギンさんの部屋から仕方なく出て玄関の方へと向かいました。
その後、チャイムを鳴らしたのは先ほどの女のお母さんである人だということもありギンさんのことを話してくれたのはまた別の話。そして、なぜかメイド服をもらったのもまた別の話です。
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