第70話 征伐局



 家にたどり着いてもまずやらなければならないことがある。それは征伐局にリヴァ討伐の報告に行かないといけないということだ。なんだかんだでまだ報告を済ませていない。このままだと俺の魔術師としての資格が危うい。一応は公務員なのでやらないといけないことはきちんとしないといけない。とりあえず、アフーカの市長からもらった書類を片手に持ち俺はリラックスをしているピーチェ、レイ、アイリスの3人に少し出かけてくると言った。もちろん、3人はこのまま家でリラックスをしておいてくれた付け足しておいた。そうと言わないと絶対についていくとか言って争いそうだったからだ。



 「ええー」



 アイリスが不満そうにしたがそこにピーチェ、レイの2人が何かアイリスの耳元でこそこそ話をし始めた。俺には何にも聞こえなかったので何を話しているのだろうと思ったが3人は俺が近づくのに気が付くと3人はびっくりして。



 「「「わっ」」」



 と声を上げて後ろに跳んだ。そんなに驚かなくてもいいのにと若干のショックを覚えた。



 「何を話していたんだ」



 俺は単刀直入に尋ねてみる。3人はお互いの顔を見合わせたあと、ピーチェが代表して言う。



 「私達は家でおとなしく待っています」



 ピーチェの言葉にレイ、アイリスも頷く。


 ただ、このことが逆に俺を心配させたのは言わないでもない。どうしておとなしく引き下がったのかとても気になったがそれ以上は何も教えてくれなかった。



 「じゃあ、留守番は任せた」



 「「「いってらっしゃーい」」」



 3人が俺を見送ってくれた。何かとても笑顔だ。よからぬことを考えてはいないだろうかという余計な心配が増えた。とりあえずは俺は家から少し離れたところ(片道15分ぐらい)にある征伐局に向かって歩き出した。早く用を済ませよう。少し急ぎ足で向かった。


 しかし、少ししか離れていなかったエイジアの街並みも何だか懐かしく感じられた。



 「何か懐かしく感じるな」



 1人勝手に懐かしむ。しかしながらこの町は俺の生まれ故郷にして育った町。思い出がすべてここに詰まっている。楽しいことも悲しいことも……。


 いかんいかん。感傷に浸ってなどいられない。一刻も早く征伐局に向かわないと。



 ──征伐局



 結局征伐局には15分どころか20分もかけて辿り着いた。あまり感傷に浸っているわけにはいかなかったな。自分に反省をした。



 「すいません。二級魔術師ギン=ハバードです。討伐証明書を提出しに来ました」



 受付に行った俺は用件を伝える。受付のお姉さん(初めて見たから新入りだろう)はその豊満な胸を揺らして俺にでは向こうへ行ってくださいと案内をしてくれた。



 征伐局総務課


 俺はそこに行った。基本的に魔術師はこの課に行き任務を受け取り任務の報告をすることとなっている。



 「では、証明書を見せてください」



 係りの女性に言われて手に持っていた証明書を提出する。係りの女性はちゃんと記入漏れがないかを慎重に確認した後に笑顔で言う。



 「はい、大丈夫です。お疲れ様でした。それではギン様はしばらく休みとしてください。次の任務はまたこちらからお伝えします」



 係りの女性のマニュアル通りの説明の後俺は1つ質問をした。



 「次の魔術師試験はいつですか?」



 魔術師試験について聞いた。それはあの3人が受けるからだ。なので、一応いつ行われるかを聞いておかなければならない。



 「はい、少しお待ちください」



 係りの女性は少しお待ちくださいと言うと奥の方へ行ってしまった。しばらく、待っていると奥から資料を持ってきた。



 「ええ、次回の魔術師試験はエイジアの第3アリーナで来週の月曜日にあります。参加申し込みは明後日までなので今書いておきますか?」



 「はい……いえ、持ち帰ります」



 明後日なら明日までに書けばいいし、今日は火曜日。まだ6日もある。それに、あの3人の個人情報まで知らないから書類が書けないというのが一番の理由だ。個人情報なら直接本人に書いてもらうのが効率が良いからな。


 俺は、書類を3枚もらいそのまま征伐局を跡にした。



 「さて、急がないとな」



 俺は家に残してきた3人が気になっていたので一刻も早く帰ろうとやや急ぎ足で家へと向かっていた。征伐局を出てすぐにある女性を見るまでは……。



 「ラン!?」



 俺が征伐局を出てすぐに見かけたのはランだった。ランは建物の陰に隠れている態勢で俺を見てくる。何でランが、でもあれは。俺は相当動揺していた。だって、ランは生きているはずがないのだから。俺は夢だと思い1回目をそらしてからもう一度同じ場所を見る。


 しかし、そこには誰もいなかった。



 「気のせいか」



 俺は気のせいと言うことにした。そのままさっきあったことを忘れて家に向かって走り出した。気のせいではないということを直感的に悟っていたのに……。

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