第66話 VSツウサン

 俺は一拍息を吸ってから声に出す。それは戦闘の合図であった。



 「さあ、3人とも行くぞ」



 「「「はいっ!」」」



 俺達はツウサンに憑りついているテナシテー・ゴーレムに向かって走り出したのだった。



 「ピーチェ!」



 俺はまずピーチェに指示を言う。



 「まずは奴、ツウサンの右の方へ走って行ってくれ」



 「はい」



 ピーチェは俺の指示通りに右側に向かって進む。俺はそれを確認した後続けて横を走っているレイに指示を出す。



 「レイは左側に向かって走って行ってくれ」



 「はい」



 レイは俺に言われた通りに奴の左側に向かって走っていく。となると今俺はアイリスと共に奴の真正面に向かって走って行っていることになる。俺は奴の動きを注意深い観察していた。この走っている中でだ。奴がピーチェとレイに警戒をするのであったら俺が直接攻撃をする。もし、警戒をしないのであったらピーチェとレイに攻撃をさせる。アイリスもいる。


 さあ、ツウサン。お前はどうくるのか。



 「があああああああ」



 もうツウサンには言葉というものは存在しないみたいだ。さっきから悲鳴に似た声しか出していない。これが奴の漆黒のモンスターに囚われた者なのかと思わされてしまう。



 「!」



 「ギン!」



 「わかっている! ピーチェ、レイ気をつけろ。この悲鳴には攻撃力がある。警戒をしろ」



 俺はさっきから悲鳴を上げているツウサンの声には攻撃能力があることをすっかり忘れていた。最初にあれで飛ばされていたというのにだ。アイリスに言われるまで忘れていた。



 「がああああああああああああああ」



 ツウサンであった者つまりは漆黒のモンスターテナシテー・ゴーレムはさらに声を上げる。しかし、いまだ動こうとはしない。攻撃をしてくる気配もない。俺はピーチェとレイの2人に対して攻撃をするように指示する。



 「ピーチェ、レイ。魔法を使え!」



 「「はい!」」



 俺に言われた2人はお互いに魔法を発動する。



 「ファイアーパンチ」



 ファイアーパンチ


 火属性 技ランク2


 能力 自分の手に炎纏いそのままパンチをする。



 ピーチェはファイアーパンチを発動した。それは最近習得した技ランクが少し上がったものであった。



 「バブル」



 バブル


 水属性 技ランク1


 能力 泡を発生させる。



 一方のレイはバブルと言う水属性の魔法を発動する。


 2人の魔法はピーチェは直接奴に向かってパンチをし、レイは間接的にバブルで遠距離から離れて攻撃をする。



 「ぐぎゃあああああ」



 2人の攻撃は攻撃力からしてみれば決して高くはない。しかし、左右から火と水お互いに相反するものの攻撃を受けているからダメージはでかくなったようだ。おかげで悲鳴を上げている。この悲鳴はダメージを負ったことによる悲鳴だ。



 「どう」



 「効いている?」



 ピーチェとレイの2人はすばやく奴から距離を取る。これは俺が以前に言っておいたことだ。無理して近づいていくのではなく攻撃をしたら1回は間合いをとれと。それを素直に実行してくれたのだ。



 「俺が行く」



 俺が2人に向かって言う。そして、アイリスにも続けて言う。



 「後ろからアイリスにはサポートを頼みたい。いいか?」



 俺は尋ねる。アイリスはすぐさま答えてくれる。



 「はい。断る理由がありません」



 「よし行くぞ」



 「はい」



 俺は奴に向かって真っすぐ走っていく俺のすぐ後ろにはアイリスがついてくる。そして、後ろにいるアイリスは俺に向かって魔法を発動する。



 「セコンドアーズパワー」



 セコンドアーズパワー


 保属性 技ランク3


 能力 魔法の対象者の発動する魔法の威力を2倍以上にする。



 セコンドアーズパワーは技ランクが3で魔法の中では難しい方の部類に入る。しかし、アイリスには補助系魔法つまりは保属性魔法の才能がありこうも簡単に使えるのだ。俺も教えたのはついこないだであったがすぐに自分のものとされてしまった。



 「ありがとうアイリス。いくぜ、ウインドウイニングパンチ」



 ウインドウイニングパンチ


 風属性 技ランク4


 能力 風を手に纏いパンチをするがそのときに発生する風は嵐と言ってもいいぐらい強いものである。



 技ランク4のウインドウイニングパンチを発動する。技ランク4はかなり上位の魔法だ。これは俺の使える魔法の中でも上位クラスの1つだ。しかも、その上位魔法にアイリスが使ってくれたセコンドアーズパワーが加わっているとなると、かなりのものだ。アイリスは俺に魔法をかけると俺の後ろを走るのをやめて止まる。ただ、俺は止まらない。俺にはやらなくてはいけないことがある。この手に纏っている風が周囲に嵐のような大きな風の流れを作り出している。この右手で奴を倒す。



 「いけえええええええ」



 俺は奴に向かって思いっ切り攻撃をする。右手を前に出した状況だ。俺は攻撃をしようとしているのに奴は未だにまったく動く気配がしない。むしろ、動かない。それはもう科学というものを諦めようとしているようにも見えた。わざと負けようとしているようにも俺には見えてしまった。



 「「「ギン(さん)!」」



 3人が俺の名前を呼ぶ。俺は応援してくれる3人のためにも奴に向かって、奴の頭に向かって思いっ切りパンチを叩きこんだ。



 「ぎゃあああああああああああ」



 俺のパンチは奴をツウサンをテナシテー・ゴーレムの頭を貫いた。貫かれた後悲鳴が聞こえた──。

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